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家族のだんらんの中心にはいつもあの店の料理があった


とあるフレンチレストランのシェフのお話です。



・・・その方々が初めていらした時はご夫婦でのご来店でした。

40代前半の仲の良さそうなご夫婦で、ご主人はワインのお好みが決まってきて、おくさまはそれを聴きながら今からいろいろ食の幅を広げるのだと。

楽しそうに会話して、食事をして帰っていかれました。

二人のテーブル.png



次にいらした時は、中学生のお嬢さんお二人とご一緒でした。

行儀の良いお姉さんとほがらかな妹さん。

お姉さんの高校進学が決まったとのことで、お祝いでした。

家族四人でメニューをあれこれ選んで、仲良くシェアして食べていかれました。


それから、年に数回。

松島さんの店内.png



誕生日だったり、何かのお祝いだったり、節目節目にうちのレストランをご利用いただきました。

やがて娘さんが大学進学で東京に引っ越されたり、留学や短期出張や

いろんなことを経ながら、その家族は記念の食事にうちのレストランをご利用くださいました。



・・・ところが最近、いらっしゃるのは娘さんとお母さんだけで、お父さんの姿は見えなくなりました。




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妹さんの結婚式の話をされているときにも、ご主人の姿はありません。

どうしたのかな、と気にしていたら、お父さんの服装をどうしてもらうかという話をされていました。

お元気なのだな、どうしていらっしゃらないのだろう?

ぶしつけだと思いますが、尋ねてみました。


「それが2型糖尿病なんですよ、主人は。血糖を下げる薬を飲んでいる上に、カロリー制限とか栄養比率制限とか、食事をいろいろ制限しているのです。

 もともとよく食べる人だったから、レストランの美味しい料理を目の前にしてカロリーや脂肪の比率を気にして食べるのは辛いからいやだ。

 おまえたちに気を使われて外食してもちっとも楽しくないって。

・・・あら、すみません。」

申し訳なさそうに奥様、でも、その先を続けられます。


「主人もあれで気を使う方なので、お店でほかの人がおいしそうに食べている目の前で料理を残してしまうのも気が引けるし、

 お店の人においしく無かったんじゃないかといろいろと気を使われたりするのも申し訳ないからと、すっかり外で食事をすることがなくなったんです。

 こちらにうかがうときには誘ってみるのですが、留守番してるって、ちょっと意地になってるみたい。。」

娘さんたちも申し訳ないような困ったような笑顔でお母さんの話に相槌を打っていました。



・・・これ、なんとかしたいと思いました。

またご主人も一緒に楽しく、家族みんなでここで食事していただけるような、糖尿病の人が安心して食べれて、いっしょに来た人もおいしく食べれるようにしたい!

どうすればいいのだろう?

あるいは、食が細くなった年配の人なんかでも、気にせず楽しくおいしいフランス料理を家族みんなで楽しんでいただくにはどうしたらいいのだろう?

---------------


以上、私がとあるレストランで伺ったお話を、

勝手に脚色してみました(架空の家族です)。

では、そのレストランで2型糖尿病のご主人でも安心して食べることができるようにと提供されているお料理をご覧ください。


低糖質のフレンチフルコース、

すべて食べても糖質摂取量は30gから35g程度です。

アミューズメント.png


まずはアミューズメント

春巻きの皮を揚げたバスケットにいれたブロッコリーのサラダの上にに飛びっ子を盛ってありいます

子羊の肉のリエット

ハムに春キャベツ

ホタルイカはホタルイカのペーストを使ったソースの上に乗っかってます。

カツオのサラダ 漁師風.png


最初のオードブルはカツオの漁師風は醤油とマヨネーズ仕立て、カツオ漁師さんが広めたというあの食べ方を洗練したもので。

何種類もの野菜のスライスがアクセントで魚の風味が引き立ちます。

筍とひともじと桜エビ.png


オードブルの二皿目はひともじのフライ、焼き竹の子、桜エビのアヒージョを温泉卵とともに散らして、香味野菜のソースとトッピング

海の幸には山の幸、この取り合わせが素敵ですねえ。


タケノコは筍農家で育てている孟宗の本当に若いものです。

まだ真っ暗な夜中から準備して、そして明け方、日が昇る前に掘り終える、決して太陽の光にあてない。

まったく日焼けしていない白タケノコと呼ばれる、そんな収穫の仕方ならタケノコのアクが全く生じないそうです。


今回料理に供されたものもそんな白タケノコをアク抜きしないで焼いたものでした。

タケノコの本当の味はこれだというのですね。

ふつうに重曹や米のとぎ汁でアク抜きをした竹の子は、アクが抜けるのと同時に本来の味も薄れてしまうから本当の味はわからないと。


タケノコ、どんな味だったかといわれると説明するのに困りますが、(;^ω^)

旨味がしっかりあるのです。

冷凍のタケノコを料理に使うときには旨味も何も、歯ごたえだけで味付けが必要なのですが、この竹の子はそのまま食べても薄くなにやらアミノ酸系の味がついている。

昆布とかかつお節ではない独特の味のアミノ酸の味が焼いただけの竹の子なのに感じられる、そんな感じなのです。

詳しくはぜひ食べてみてください(;^ω^)。

ソースがついてきていますが、ソースなしで味わって、ソースを少しつけて味わって、そしてソースに浸して絡めて味わってみてください。

何重にも楽しめるのは素材そのものがその存在感をしっかり主張しているからなのでしょう。


フォアグラとブロッコリ.png


三皿目はフォアグラにブロッコリー、下にしいてあるソースはゴボウのソースのトリュフ入りです。

そして香味にトリュフオイルがかかっています。

ドジョウの柳川鍋を評してドジョウの強烈な個性を茫洋としたごぼうがうまく和らげるからあれは美味しいのだと聞いたことがあります。

このゴボウソースはフォアグラの脂肪の旨味を引き立てる良いサポーターですね、和らげるのでははなくて、旨味を増幅してくれます。

山の幸ですねえ。

ヒラメのソテー.png


四皿目はヒラメのソテーにネギとフキノトウのソース、その横にはホタルイカのソース添え(忘れていて松島さんに教えていただきました(;^ω^))

濃厚なフォアグラの味の後にさっぱりのヒラメで、このヒラメがかなり肉厚の大きなヒラメで、しかもよい落ち方で美味しかったです。

海の幸です。


そしてメインディッシュは子羊のローストです。

サウスダウン種の子羊.png


サウスダウン種の子羊で、こちらは小型で飼育が難しいので日本では飼育している酪農家さんが極めて少ないということでした。

松島さんがわざわざ農場まで行って交渉して手に入れてきたという代物です。


この子羊の肉、驚きのおいしさですよ。

脂身の甘みと味わいが、もう、今までに食べた獣の脂の中で最高においしいです。

3月に初めて食べに行って、今回、4月にまた食べに伺ったのですが、二回ともに同じこの子羊肉料理をいただいてしまいました。


かかっているごま油のソースが羊の脂と織りなすハーモーニーの美しさといったら。

このステーキの5分の1ぐらいを脂と肉とを含むように切り取って、口にほおばります。

ゆっくり噛みしめます。

噛みしめます。

噛みしめます。


口の中で広がる脂の甘みと肉汁の香りがもう♪

ずっと噛んでいたい、でもずっと噛んでいるとおいしさが薄まってきてなんかもったいない、飲みこもう、でも飲みこむのが何かまだもったいない、ああ、どうしよう、ともかく美味しい。

そういうお肉です。


そしてそのお肉の味わいを最高に引き出しているのが絶妙な火の通し加減。

素材も技法も味付けも すべてが最高なのです。



イチゴのゼリー寄せ.png


デザートの一皿目はシンプルに複数のベリーのゼリー寄せ。

シンプルというけど、何種類もの酸味と甘みと香りによく合う添え物のゼリーがプルプルと味蕾を心地よくふるわせてくれます。

アイスクリームにイチゴソース.png


デザートの二皿目はアイスクリームとチョコレートケーキにイチゴのソースとクルミのクラッシュ


アイスクリームもケーキも、甘みは極めて控えめでそれぞれクリームとカカオの味がはっきりとしています。

イチゴソースも酸味が際立つので、クルミの脂の甘みがはっきりわかるほどでした。

〆のデザートとしてものすごく満足できる一皿です。


コーヒーとお茶.png


そして最後の飲み物はいくつもの選択肢の中からコーヒー、ティー、ハーブティーなど

今回はコーヒーをいただきました。



以上の料理をゆっくりとゆっくりと

会話を楽しみながら18時から20時過ぎまでゆっくりといただきました。

ともかくナチュラルに美味しい料理(素材の味が最高に引き出されている)と、

そして物静かにいろいろ話してくださる店員さんがいいのです。

アミューズを開く.png

静かで丁寧なおもてなしが最高のお店です。

しょっちゅう行ける価格帯ではありませんが、年に数回は訪れて食事させていただきたい、そんな素敵なお店がフレンチ松島なのでした。





食事の後で、松島さんにお願いして少し低糖質のフレンチフルコースについてお話させていただきました。

松島さんのおっしゃったことの抜粋になります。


「今回の低糖質のコース料理を作製するにあたり、北里大学の糖尿病センターの山田先生に監修をお願いしました。

山田先生の提唱されるロカボのアイデア(一食当たり20gから40gで糖質摂取量を抑える)を教えてもらい、それであれば糖尿病の人でも気にせずにコース料理を楽しんでいただけるとのことだったので。

デザートもたっぷり二皿楽しんでいただけて、それでいて30gから35g程度に抑える料理を提供させていただいています。」


低糖質料理を提供されるにあたって気にされたのは、いかにして

"病気でない人も美味しく一緒に楽しんでいただくか。"

ということだったそうです。


松島さん自身が低糖質な食事をされていて、ふだんは砂糖をあまり食べなくなっているそうですが、久しぶりに食べるとよくわかるのが、砂糖の甘みには実にコクがあるということだそうです。


「砂糖は砂糖の味なんです、ほかの甘味料では代替できない風味が豊かで、エリスリトールやラカントではこの同じ味を引き出すことはできない。

しかし逆に、エリスリトールの清涼感のある甘みはそれはそれで砂糖にはない独特の風味であり、それをおいしいと感じるような調理の仕方、素材の組み合わせ方がまた面白い部分でもあるのです。

全く異なる調味料としてその価値を新しく引き出していく、創造していく楽しみがある。

おかげさまで糖質制限は自由な発想を私に与えてくれて、食のバリエーションが広がりました。」


と、実に前向きな楽し気なご意見でした。

こんなシェフが、しかも経験豊富なシェフが作るコース料理が美味しくないはずがありません。

ぜひ一度、Matsushimaさん、あなたも食べに行かれてみてください。

松島 入り口.png

キュイジーヌ フランコ ジャポネーズ マツシマ

http://www.restaurant-matsushima.com/


旬の素材のお話が楽しい松島さんのアメブロはこちら

A Table!!
http://ameblo.jp/restaurant-matsushima/



で、私はというと、松島さんのこのお話を聴きながら、こんなことを考えていました。


・・・コクがあるというのは科学的には何を指すのだろうか?

砂糖が動かす味覚レセプターのうち、特定のもの(あるいは特定の複数の組み合わせ)からのシグナルが「コクがある」という感覚を生み出すのだろう。

美味しい脂肪の甘み、あれもすごくコクがある感じがするのだけれども(シェフの言うコクと自分の感じるコクは全く別の感覚かもしれないけど)。


もしかして、特定の脂肪酸で刺激を受ける味覚レセプターを介して入るシグナルの信号伝達経路が砂糖のそれと重なっているのではないだろうか。

それならばそこに共通する経路が同定できれば、その経路を動かす様々な栄養素が甘味におけるコクを出す隠し味として、使えるのではないか?

子羊の脂の味を思い浮かべながらいろいろ想像してしまいました(笑)。



ということで、科学研究の想像力の翼をもどんどん広げてくださる松島さんの料理とお話。

ぜひ一度、触れて味わってみてくださいね。



2017年4月19日 16:56

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コメント(6)

先生 いつも学習させていただいております。

先ほどのは、糖質制限仲間が名古屋でシェフをやっており、先生が名古屋に行かれた際お勧めです♪
とお伝えしたく途中でクリックしてしまいました。宣伝になるので非公開で。彼女はOKと言うでしょうけど。
予め言っておくと糖質制限メニュー作ってくれます。

ありがとうございます。
シェフに確認したら喜んでいました^^
予め糖質制限でとご予約おねがいします、お待ちしております♪とのこと。
宝石箱みたいな綺麗で美味しいお料理です。

名古屋国際ホテルキャンドルの、糖質制限メニューを作る友人が、退職しましたのでお知らせします。

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したがって、読まれた方の立場次第では、その記事では自分の存在を無視されているように感じる、配慮が足りないと感じられる記載内容があり得ます。
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