糖質制限と性ホルモン・卵巣機能と毛包・皮脂腺の機能について
この話は以前に書いた記事につながるものです、カテゴリで言えば「低糖質ダイエットと髪の毛」の記事群ですね。難しい話なので、このカテゴリに興味がなくて低糖質ダイエットの方法を探している方はスルーしてください。
さて、この記事のタイトル、本当は以下のようにしたかったのです。
「セックスホルモン(性ホルモン)結合グロブリン(sex hormone binding globulin; SHBG)とインスリン抵抗性と多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome; PCOS)と男性型脱毛症(andorogenetic alopecia; AGA)での毛包発育低下や皮脂腺分泌亢進との関係」
・・・長すぎるし専門的すぎるので書き換えました(笑)。
私は糖質制限して半年過ぎたあたりから髪の毛が太くなり、ふさふさしてきました、なじみの美容院で、髪の毛をかなりすきばさみで減らしてもらっている状態です。
糖質制限でどうして髪の毛がふさふさになってくるのかという理屈について考察したときに、「インスリン抵抗性と男性型脱毛症が連動する」という文献をいくつか発見しました。
そのときに同時に発見したのが、女性の男性型脱毛症(更年期が過ぎてから起こる薄毛)、あるいは多嚢胞性卵巣症候群のニキビや男性型脱毛、体毛の男性化もやはりインスリン抵抗性の亢進と連動しているらしいというものでした。
それを治療の面から証明するような、メトホルミン(糖尿病の治療薬で、インスリン抵抗性を下げる薬)を服用するとPCOS患者における高血糖と併せてニキビも改善するという話もありました。
これは逆に見れば
「糖質制限によりダイエットが成功して内臓脂肪が減り、インスリン抵抗性が下がれば、多嚢胞性卵巣症候群の女性において、合併症である男性型体毛発育と男性型脱毛症の症状も軽減する可能性」
を想起させます。
さらに、
「糖質制限により多嚢胞性卵巣症候群そのものが改善する可能性」
をも想起させます。
というのも、以前の記事でも書きましたが、インスリン抵抗性上昇による性ホルモン結合グロブリン(SHBG)の肝臓での発現低下が、以下の複数の疾患に関わっている可能性があるからです。
1. 男性型脱毛症(AGA、壮年性脱毛症)
2. ニキビ・脂漏性湿疹などの皮脂腺の分泌増加
性ホルモン結合グロブリン(SHBG)はテストステロンなどの性ホルモンが標的臓器に作用するときにちゃんとホルモンをそこまで届けるデリバリー役として、あるいはそれ自体も標的臓器や生殖巣(卵巣や精巣)になんらかの刺激を入れる作用を持っていると考えられています。
そして、肝臓で作られるだけでなく、生殖層の間質細胞によっても作られて、これらの複数の臓器におけるSHBGの適切な生産調節が、生殖巣での性ホルモンの働きのバランスを取っていると考えられています。
つまり、「肝臓で作られるSHBG」と「生殖巣の間質細胞で作られるSHBG」の総和が、毛包、皮脂腺、生殖巣での性ホルモンの作用を程よく制御している可能性があり、そのバランスが乱れて発症する病気の一つが多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)である可能性があります。
そして少なくとも「肝臓で作られるSHBG」の生産には「インスリン抵抗性の上昇」が大きな負の要素になります。
とすれば、もしも多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の患者さんの病気の本体が「SHBG量の低下」にあるとすれば、インスリン抵抗性を下げてやることでPCOSの卵巣での病状そのものが改善する可能性があるのではないか?
仮定の話の積み重ねになりますが、ひょっとしたら糖質制限がPCOSの患者さんに適切な卵胞発育と正常に成熟した卵胞からの排卵を促す助けになるのではないか?
「不妊症の治療に糖質制限が有効かもしれない」という面白い話です。
もしも、何らかの理由でSHBG生産量が低いことがPCOS至っているという方であれば、食生活を糖質制限型に変えるだけでPCOSの程度が軽くなったり、排卵誘発治療でもなりにくくなることがあるのではないか?
産婦人科の友人に話ししてみよう。
(ってここで公開して新規性がなくなったら臨床研究やってもらえなくなるか(^_^;))
と、ここまで公開した後で、多嚢胞性卵巣症候群についてWikipediaを見直してみましたが、PCOSの治療法として肥満を是正するというのは昔から実践されていたことでしたね。
治療
- 必ずしも抗インスリン性自体が見られない場合でも、症状が改善するケースがある。
- 多毛などの男性化症状の改善にも有効。
妊娠を希望する場合の不妊治療
- hMG-hCG療法では、卵巣内の卵胞が一気に成長して卵巣が腫大する卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こす可能性もあり、注意が必要。
と、ありました。
わたしの浅学が露呈して申し訳ありません。。。(^_^;)
でも、肥満を伴うPCOSの人がダイエットするなら糖質制限を選ばない理由はないと思います。
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スポンサードリンク 2012年6月20日 11:47 スポンサードリンク
何度やっても糖質制限に挫折してしまう、30代女性です。はじめまして。
脱毛がひどく、皮膚科を受診したら脂漏性皮膚炎の治療を勧められた、という経緯があります。
脂漏性皮膚炎の改善を目指して糖質制限を実践されておられる方のブログより、はじめて「糖質制限」なるものを知り、実践と挫折を繰り返しております。
なかなか続きません。
最長半年くらい続けていたことがあったのですが、糖質制限で脂漏が改善。劇的に効果がありました。
脱毛も改善傾向かな…というあたりで挫折。今年のGW頃のことです。
涼しくなり、猛暑のストレスがなくなってきたところで「またやろうかな」というモードになってきました。
またがんばります。
今度こそ脱毛改善したいです。
ところでなぜ糖質を制限すると脂漏がなくなるのでしょうか。
タンパク質とともに脂質の摂取も増やし、ナッツなども相当量摂取していましたが、全く脂漏しませんでした。
不思議です、なぜでしょうか。
ぐりさん
はじめまして、コメントありがとうございます。
なるほど、糖質制限の効果はよくわかっていても継続が難しいものなのですね、もともと女性では皮下脂肪を男性よりもたくさんつける必要があるために、糖質を摂取した時に脳で出る脳内麻薬(βエンドルフィン)の分泌量は男性よりも高いようです。
だから糖質を食べた後に感じる至福感が忘れられなくて糖質制限が続きにくいのだと考えられますね。
体脂肪を付ける必要性は「子供を産む」という生物学的な要求に応えてのことなので、30代だと糖質制限も難しいのでしょう。
更年期が見えてくると克服しやすくなるようですが。。。
ということで、休み休みでもいいので、挫折してもまた始めてください。
糖質控えめで脂質たっぷりの方が身体にいいのは間違いないですからね。
さて、どうして糖質を控えて脂質をたっぷりとったら脂漏性湿疹が改善するかということですが、
シンプルです。
糖質を摂取すると我々の身体はそれを積極的に脂質に交換して体脂肪として蓄えようとします。糖質は非常に効率の良いエネルギーだからそれが容易なのです。
しかし、脂質を摂取してもそれを分解して吸収するのにエネルギーを消費するので、それを体脂肪に変える効率はあまり高くないのです。
だから、脂質を食べても体脂肪は増えにくいけれども、糖質は体脂肪をどんどん増やすのです。
あるいは、このことを考えてみてください。
赤い鳥♪小鳥♪
なぜなぜ赤い♪
赤い実を食べた♪
「脂質を摂取すれば体脂肪が増えたり、脂漏性湿疹が悪化する。」、という考え方は、
「赤い果実を食べたら皮膚の色が赤くなる。」、という考え方と同レベルの発想です。
体脂肪が増えるのは脂質の食べ過ぎである、とまことしやかにおっしゃる医師や栄養士の方々の頭の中は、実はその程度だったということです。
・・・私もかつてそうでしたが。
たしかアメリカの学会で糖質を減らしてタンパク質を増やした患者が体外受精において成功率が高くなるという論文があったはずです。
糖質制限が不妊に良いと言うブログなどはたまに見かけますが、みなさん、糖質制限でPCOSが改善するという内容ばかりなのが気になります。
不妊で悩む患者はPCOSよりも逆の症状の方が多いと感じます。
というのはPCOSは卵胞が数珠つなぎのようにたくさんできる症状ですが、卵子ができなくて悩んでいる不妊の方のほうがより深刻であると思います。
糖質制限は卵子ができない方にも効果があるのか?
気になります。
>あたさん
>たしかアメリカの学会で糖質を減らしてタンパク質を増やした患者が体外受精において成功率が高くなるという論文があったはずです。
・・・論文があったとまでおっしゃるのであれば、何年ごろのどんなタイトルの論文かぜひ教えてください。
> 糖質制限が不妊に良いと言うブログなどはたまに見かけますが、みなさん、糖質制限でPCOSが改善するという内容ばかりなのが気になります。
・・・気になる?具体的にはどういう意味でしょう?何がどう気になるのですか?
> 不妊で悩む患者はPCOSよりも逆の症状の方が多いと感じます。というのはPCOSは卵胞が数珠つなぎのようにたくさんできる症状ですが、卵子ができなくて悩んでいる不妊の方のほうがより深刻であると思います。
・・・根本的にお間違いですよ。卵胞発育は通常、数十個の卵胞が一斉に大きくなり、その中からもっとも成長の良い卵胞だけが主席卵胞として成長を続け、ほかは委縮して、主席卵胞の一個だけが排卵されます。PCOSというのはその卵胞発育が途中で止まるために、未熟な卵胞がたくさん途中で止まった状態が認められるという状態です。つまり、主席卵胞が形成されずに成熟卵子が得られない病気です。
あなたがおっしゃる「卵子が得られない不妊症」の代表格です。
>糖質制限は卵子ができない方にも効果があるのか? 気になります。
・・・その代表格であるPCOSには効果あるということですよ(笑)。
<追記>
もしも卵胞発育がエコー検査でまったく認められない不妊症の方の治療に糖質制限が効果があるかという意味のご質問でしたら、私は症例を知りません。
理論上で言えば、有効ではない可能性と有効である可能性の二つがあると思います。
有効ではない可能性は、卵胞の中のなんらかの卵胞発育にかかわるシグナルがうまく働かない可能性です。SCF/c-kitやAMHの分泌不足があれば、あるいは卵子でのGDF9の発現が低ければ卵胞発育は初期段階からうまくいきません。これはそれらの要因を何とかするしかないので、糖質制限は関係してきません。
有効であるかもしれない可能性は、卵胞発育にかかわる何らかの要因の正常な発動が自己免疫機序で阻害されていて、その自己免疫反応が糖質制限で改善するというケースです。(あくまでも理論上の推察であり、私は症例を存じておりません。)
お聞きになりたかったことはこういうことだったでしょうか?