クローズアップ現代の「糖尿病を手術で治す」の番組の問題と対策
NHKのクローズアップ現代に関して、全文のテキストが掲載されていました。
それを読んでみました。
糖尿病を手術で治す
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3272_1.html
糖尿病の外科的治療について
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3272_2.html
ゲスト門脇孝さん(日本糖尿病学会理事長)
手術で治す糖尿病 術後に何が
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3272_3.html
外科医と内科医の連携はどうあるべきか?
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3272_4.html
このテキストを読んだ私の印象ですが、
そこに掲載されている「テキストの内容」からすれば、放送コンテンツ自体はニュートラルな立ち位置にあるように感じられました。
確かに、糖尿病の外科手術を積極的に勧める外科の先生が前面に出てくるところに私も個人的には違和感を禁じ得ません。
糖質制限すれば治せる2型糖尿病を、「食事中から糖質を除去する」のではなくて、「自分の身体から胃腸を切り取る」ことで治療しようとするその発想。
根本的におかしいと思います。
ですが、放送全体を見渡せば、手術療法を一方的に肯定しているわけではないという印象の作りです。
術後の問題点も提示されていますし、NHKの放送内容そのものはニュートラルだな。
と、私は思います。
もちろん、そう判断する前提として、以下の条件が付きます。
「糖質制限という概念が存在しない世界での糖尿病治療の話」として見る。
そうすれば、NHKさんの番組はニュートラルなつくりです(笑)。
さて、個別の内容に少し踏み込みます。
具体的には以下のような部分に、この番組が「糖質制限という概念が存在しない世界」の製作スタッフによって作成された感を感じさせます。
最初に登場してきた患者さんのMさんですが、このように描写されています。
*****
糖尿病を手術で治す
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3272_1.html
Mさん
8年前に糖尿病と診断されました。
今年、3月の時点で血糖値の指標となるヘモグロビンA1cの値は11.9%。
正常値のおよそ2倍と、高い値です。
Mさんの場合、トラックの運転で座っている時間が長く、体をあまり動かさないことが日常となりました。
昼食は仕事の合間を見て30分程度。
どうしても高カロリーの食事をとることが多く、体重は110キロ。
治療の基本である運動療法も食事療法も思うように進められませんでした
~中略~
主治医の指示で最新の治療薬を含む3種類の薬を1日3回、のむようになりました。
さらに、インスリンの量も増えました。
効果の速度が異なる2種類を使い分け、1日5回、注射を打ちます。
できる治療は、すべて受けました。
Mさんは重症の睡眠時無呼吸症候群にも悩まされています。
糖尿病をさらに悪化させるおそれのある病気で治療は一層、難しくなりました。
Mさん
「この調子でいったら、本当にもう還暦迎える前までに、何らかの障害が出るよ。
腎障害や壊疽(えそ)とか、失明とか、いろいろ合併症が出てくるとも言われているから。」
危機感を持ったMさんは新しい治療法に期待をかけて東京にあるクリニックを訪れました。
ここは糖尿病を手術で治す治療を始めた医療機関です。
*****
この記述を見て、われわれ糖質制限実践者が不思議に思うのは
「できる治療は、すべて受けました。」
というところですよね。
その上、この方は「治療の基本である運動療法も食事療法も思うように勧められませんでした。」とあるのですが、
・・・どう考えてもこの方、糖質制限してないですよね?
ラーメン大盛りみたいなのをがっつり食ってるし(^_^;)。
食事療法に関して言えば、思うように進められなかったんじゃなくて、進める気がまったくなかったんでしょうね。
運動しなくても、糖質制限は簡単にできます。
糖質制限すれば、運動しなくても簡単に体重も減るし、血糖値も改善することを我々「糖質セイゲニスト(夏井先生お借りします)」は知っています。
それなのに、NHKのこの描写、知らない人が視れば「やっぱり糖尿病は食事療法では治せないんだ。そして薬がダメな人もいるのか。」と思いかねません。
どうしてこの番組に対してあっちこっちの糖質制限ブログで非難ごうごう湧き起っているのか、簡単に言えば、
「糖質制限というすばらしい食事療法があるのに、この放送でそれに一切触れないままで、最終手段である外科手術への突入と成功を描いたこと」
に対して、われわれは腹が立ってしょうがない、ということです。
番組全体の構成の中で、「糖質制限療法を完全無視」している点が「われわれ糖質セイゲニスト」をムカつかせるんですね。
「愛情の反対は憎悪ではない、無視である」
ということばがNHKによって実践されて、それが糖質セイゲニストの心をざわつかせているわけです。
・・・でも、けっきょくのところ、それだけですね、冷静に見ると。
番組全体の造りとしては、外科手術を一方的にほめそやしたり、持ち上げているわけではないようです。
「糖尿病の手術療法ってあるんだよ。」という、単なる問題提起ですね。
「すばらしいことです」というリップサービスはちょっといただけないにしても、
門脇先生も手術療法は「最後の一手として」とコメントされています。
ですので、外科治療に対しては、ニュートラルな立ち位置で論じられているのだと思います。
ということで、この番組に対しては糖質セイゲニストとしては、あまり興奮しない方がいいかなと考えました。
一歩引いて冷静に観察するのが良いです。
NHKのスタッフが糖質制限を無視したように、憎悪するのではなくて、「無視」しましょう。
まともに向かいあって腹を立ててみてもしょうがない番組の作りなのです。
(って、冷静なふりしてムカついてるのがまるわかり(笑)。)
我々は2型糖尿病の食事療法としてどうすればいいのかを、実践者としてものすごくよくわかっているのです。
冷静に、以下の事実の拡散を進めましょう。
1.肥満を伴う中高年の2型糖尿病は糖質摂取過剰による内臓肥満とインスリン抵抗性の増大が主な原因である。
2.糖質摂取量を制限すれば内臓脂肪肥満はすみやかに改善し、糖尿病の症状も消えるし合併症も改善するので多くの場合、投薬は不要となる。
3.糖質摂取制限すれば、インスリン注射が必要な重症の糖尿病患者でもインスリン投与量を減らせるし、合併症の発生の危険性も抑えることができる。
注1.日本糖尿病学会推薦の「高糖質食でカロリー制限」は理論的に破綻しているし、実践者も徐々に糖尿病が悪化していくケースが多い。
注2.糖尿病治療の手術療法は過食行動がコントロールできない患者さんへの最後の手段としての選択肢である。
⇒鉄砲は最後の手段だ!
(笑)。
スポンサードリンク 2012年11月14日 18:38 スポンサードリンク
肥満手術について、少し調べてみました。
1年間に、欧米で40万人以上(内アメリカ20万人)。
多いですね。一部の病的肥満の人はやむを得ないとして。
BMI35以上で、内科的に改善できず命の危険がある人が対象のようです。
170cmで100㌔以上の人ですね。
私は一年半前に100㌔あったのですが、胃を切除するのは考えられませんでした。
「クローズアップ現代」の運転手さんは、110㌔でしたが
おそらく、『糖質制限』を知らなかったか興味がなかったんでしょうね。
11/6のNHK「きょうの健康」では、渥美先生が糖質制限食について説明していました。
「クローズアップ現代」は 「できる治療は、すべて受けました」ということですが、前回8/30の放送では、
①糖質制限食 ②早期の強化インスリン療法 ③手術 について取り上げていました。
私は、①と②で、HbA1c 14.0 → 5.3に改善したのですが、NHKスタッフおよび門脇医師は、『糖質制限』について全く触れていませんでした。
「クローズアップ現代」もっときちんと勉強せんか!
という事で、今度の土日に丁寧な手紙を書いて、『糖質制限について取りあげて』と、しつこくNHKに送ろうとしている、わんわん でした。 巳年生まれなのだ。
追記
減量手術には、胃のバンディング(しばる)と、バルーン留置手術があるそうです。これだと復元可能。いきなりちょん切ってはいけない・・・。
わんわんさん
いろいろと有益な情報をありがとうございます。
アメリカだけで20万人ですか・・・。
ニクソン政権下で進められた政策が現在のアメリカの肥満大国化を招いたと考えられ、その中心が低価格な果糖シロップ利用推進策でしたからね。
その付けを国民がまさしく「身を削って」支払わされているのでしょうね。。。
クローズアップ現代、そうそう、そうなんです。
どうして今回は①と②に全く触れないのか、そりゃあ、ニッチを絞り込んだ番組作りの方がインパクトは高くなりますけど、公益性を考えると問題ありですよね。
特に健康や病気に関わる情報に関してはよく考えて配信しないと。
という考え方からすると私のこのブログも、有益なサイトへのリンクをもっとわかりやすく配した方がいいのかもしれませんね。。。
今話題?のクローズアップ現代。残念ながらオンエアーは見てないのですが^^;治療のひとつとしての紹介でリスクについての言及もあったようでその点については良しとしますが・・。
ただ無料で見ることのできる動画は手術の良いところばかりが取り上げられているのでちょっと怖い気がします。
しかし・・ほんとに見事なほど「糖質制限」をスルーしての治療紹介でしたね。
仮に手術が成功したとしても食生活の改善、もちろん糖質の制限なしで今までと同じ食事ではインスリンが枯渇してしまい元の木阿弥ってことになるのではと思います。
手術を行った先生がその患者さんに「1か月の経過としても非常に順調なので、今までの経験からいえば、インスリンも一生使わないでしょうし、薬も一生飲まないでコントロールできると考えています」と言われてたのには驚きました。
この自信はどこから来るのか疑問です。
カルピンチョ先生の解説のおかげで、怒りの源がどこにあるかわかりました。
>「糖質制限というすばらしい食事療法があるのに、この放送でそれに一切触れないままで、最終手段である外科手術への突入と成功を描いたこと」
ほんとうにそうですね。ありがとうございました。
naoさん
コメントありがとうございます。
そうなんですよ、見事なまでの「糖質制限はずし」には、してやられた感じがしますね。
この放送だけを見た人や、このアーカイブだけを見た人はとても効果的な食事療法のことを何も知らないままに手術を受けることを考えてしまうようになるのではないかと思うと怖いです。
あの外科の先生に訊いてみたいですよね、もしも自分の息子が将来、30代で糖尿病になった時にもやはり、糖質制限を一切教えることなく、胃と小腸を切り取る治療方法を勧めて、実施できるのかどうか。
自分の家族だと思って考えれば、患者さんに対してどういう順番で治療を勧めていくべきか、おのずと明らかになると思うのですけれども。
「とうぜんじゃ、胃と小腸を切り取るんじゃ!」
と言われてしまっては返す言葉はありませんけどね(^_^;)。
かんなさん
コメントありがとうございます。
糖質制限のことを非難しているわけでもないのになんで腹が立つのだろう、突っかかりたくなるのだろうと思ったら、たどりつきました。
人間の心理って面白いですよね。
糖質制限している人はその効果が優れていること、それなのに理不尽に非難されていることにふだんから過敏になっているから、ちょっと興奮しすぎるところがあります。
冷静にいかないと「糖質制限教」なんて揶揄されますから、私もいろいろとリマインドさせられたイベントとなりました。
江部先生からコメントいただきました。
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長谷川 さん。
その患者さん
「できる治療は、すべて受けました」ということではないですね。
この手術(胃切除+小腸切除)で、糖尿病が良くなる人は、自分自身のインスリン分泌能が残っていることが前提です。
自分自身のインスリン分泌能が残っているなら、糖質制限食で改善することは間違いないので手術の必要はないですね。
2012/11/15(Thu) 22:56 | ドクター江部 |
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さすが江部先生。鋭いですね。
ということは、手術を検討するのは、メンタルで病的な肥満があり、命の危険がある患者ということですね・・・。
カルビンチョ先生が、はじめに言ってましたね。
で、脳外科医の田中佳先生のブログを見つけました。
http://ameblo.jp/emkanayoshi/
手術で糖尿病は治りません。
「まずやるべきは、一にも二にも生活習慣の改善であり、この前提が無い限り糖尿病克服への扉は開きません。腹腔鏡でいかにも安全確実に糖尿病が治るような錯覚を視聴者に与えてはいけません」
「胃にバンドを締めて膨らませなくする方法もテレビでは見たことが有りますが、胃の1/10切除は過激と思います。取ってしまえば取り返しが付かないからです」
「この手術は 糖尿病を治すのでは無く、強制的ダイエットです」
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さくらの紅葉がきれいになってきました。
明日は、神宮外苑のイチョウを見に行こうかな・・・。
歩かなくっちゃ。目指せ、HDL アップ!
長谷川さん
この手術でよくなる人は自分自身のインスリン分泌能が残っていることが前提。
なるほど、そういう切り返しをすればいいわけですね、勉強になります。
φ(..)メモメモ
ああ、そうですね、神宮外苑の銀杏並木、そろそろ綺麗なころなんだろうな。
雨が無情ですねえ。
あ、でも、雨の中で傘をさして舞い落ちる銀杏の中を好きな人と二人で歩くなんてのも楽しいでしょうね。
あの日の君は傘さして♪ 青山通り歩いてた♪
かぐや姫のなんて曲だったかな?雨の日曜日?
すばやい返事ありがとうございます。
「アビーロードの街」ですね。
僕だと、「雨の中の二人」 雨が小粒の真珠なら・・
南こうせつは、アマチュアの時、読売テレビの勝ち抜き歌合戦に出ていたんですが、5週目くらいで音楽事務所にスカウトされましたね。
たま、も衝撃的でしたね。
何といっても、森田童子かな。
で、やっぱりビートルズと、サイモンとガーファンクルかな。
江部先生ではないですが、ボーカルをもう40年やってます。クラシック・フォーク・演歌なんでも歌います。楽器は出来ません。
話がそれた??
ああ、そうでした、アビーロードの街!
「ビートルズの歌が♪聞こえてきそうと♪二人で渡った♪交差点♪」
って、そういうことでした。
南こうせつさんのそれ、知りませんでした。
存在に気が付いたのは「海のトリトン」のテーマ曲の「海の音楽会(?)」からです。
たま、さんも森田童子さんもそうなんですか。
長谷川さんバンドやってるんですね、いいなあ、音楽センスのある人は人生が楽しめるから。
たま、は「いかすバンド天国」(略称いか天)という番組ですね。夜中にやってました。Beginもいました。
森田童子、超マイナーで、テレヒ゛に出ることはなかったのですが、いきなりドラマ「高校教師」のテーマ曲になりました。
今は音楽番組、少なくなりましたね。テレビの時代じゃないのかな。
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先日、早稲田大学の学生さんが、「教育格差」について聞きたいといって来たので、「教育格差」は『貧困問題』であることを話し、ついでに貧困層での糖尿病の増加が、ジャンクフードと清涼飲料の飲みすぎが原因なことを話しました。
糖尿病の世界的増加は、貧困問題だと考えています。
山田悟先生も世界糖尿病dayにあたって、そう言っていましたね。
“貧乏暇なし”を救え! 糖尿病対策とは貧困対策である/世界糖尿病デーに社会が考えるべき課題(2012/11/14)
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr121102.html
と、突然真面目な話でした。
長谷川さん
いか天は80年代ですね、うん、夜中でした、いろんなユニークなバンドが出てましたよねえ♪
山田先生の話、私も読みました。
食費を削ろうとするとどうしても米と小麦粉と砂糖と安い油脂類でカロリーを充たす方向に向かってしまいますよね。
学生時代の食事がそれだったなあ。
安いタンパク源を確保するには・・・究極は昆虫なんでしょうけどね(^_^;)。