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ネアンデルタール人と現生人類の分岐点に糖質摂取は関係するのか?


人類の祖先がチンパンジーの祖先と分離し、森を出て、草原に出て生きるようになった。

そして肉食獣の食べ残しの死肉や骨髄を漁ることで、肉食への道を踏み出していった。

肉食は人類の脳を急激に発達させ、二足歩行しながら道具を使って生きている草食獣を狩るという肉食中心の生物になった。


前の記事ではここまでのお話をしました。

現生人類の進化と食餌 肉食と糖質食のどちらが初期設定に近いのか?




今から300万年以上前には死肉漁りという肉食への道を踏み出した人類。

220万年ほど前の原人の出現の時代から、60万年ほど前の旧人の出現、そして数万年前の旧人の絶滅。

その200万年ほどの期間、人類は肉食であったことに異論をはさむ人は少ないかと思います。

(宗教の教えは抜きにして、科学的に議論した場合です。)



では、現生人類はどうなのでしょうか?



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現生人類は、実はここまで話してきた人類の流れ、旧人の中から20万年ほど前に出現した新しい人類だと考えられています。

ヨーロッパで言うところのクロマニョン人ですね。

アフリカ南部に出現したこの「新人」たちは、次第にその勢力を拡大し、北へ北へとその勢力範囲を広げていきます。

851px-Spreading_homo_sapiens_la.svg.png
人類移動の図
https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3ASpreading_homo_sapiens_la.svg


6万年ほど前には、新人たちはアフリカを出てユーラシア大陸へと広がっていきます。

そして4万年ほど前には日本を含めたアジアにまで南から到達した。

寒いシベリアや中国北部には少し遅れて、1万5千年ほど前に到達します、そして同時に、ベーリング海峡をわたってアメリカ大陸へも渡ります。


さて、高い知能を有したおかげか、ほんの20万年で地球上に散らばり続けた新人たち。

しかし彼らが広がっていった先の大部分には、すでに旧人たちが住んでいました。

一時期は共存していたようですが、やがて、旧人の勢力は減っていき、3~4万年ほど前に滅びます。


ネアンデルタール人に代表される旧人たちは、クロマニョン人に代表される新人に(新人の文明に?)殺されてしまいます。

何が旧人と新人を分けたのでしょうか?


1024px-Skeleton_and_restoration_model_of_Neanderthal_La_Ferrassie_1.jpg
ネアンデルタール人
Skeleton and restoration model of Neanderthal La Ferrassie 1
Wikimedia Commons

800px-CroMagnon.jpg
クロマニョン人

CroMagnon by Original uploader was Elapied Wikimedia Commons



新人と旧人を比較すると、個人個人の身体能力は旧人の方が明らかに優っていたようです。

ネアンデルタール人の方が体格は大きかったし、脳の体積も10%ほど多かった。

それなのに、旧人は新人の集団に滅ぼされたのです。


これはなぜか?


最近、NHKスペシャルでやってる生命大躍進という番組があります。

ここでもその理由に関する推測をやっていましたね。

新人の方が賢くて、集団で知恵積み上げていく、そして高度な武器を発明していく、「文明を築く」というすべを知っていたものと思われる。

そのため、飛び道具を用いた集団での戦闘に優れていた。


ここで提示された意見の一つはFoxp2という転写調節分子の変化です。

この遺伝子の発現調節領域に、遺伝子配列1個の違いがあり、これが旧人と新人の能力を大きく分けていると。


Foxp2というのは言語機能を研究する学者たちの間でものすごく注目を集め、研究され続けている転写調節分子です。

生まれつき、言葉をうまく話せない、理解できない家系があって、その一族の遺伝子を調べるとFoxp2の遺伝子が変異していることがわかりました。

Foxp2の配列は種を超えて保存されてネズミの実験でもこの遺伝子、が言語機能(鳴き声の長短)を左右することが確認されています。

しかし、種によって少しずつ違っていて、たとえばチンパンジーと現生人類はアミノ酸が二つ異なります。


ネアンデルタール人の化石から遺伝子配列を調べたところ、現代人とアミノ酸配列は同じでした。

ところが、よく調べるとイントロンという、アミノ酸をコードしない部分の遺伝子配列に一つの変異があって、その変異から推定するに、ネアンデルタール人は現生人類に比べると言語理解能力が少し低かったのではないかというのです。

Mol Biol Evol. 2013 Apr;30(4):844-52. doi: 10.1093/molbev/mss271. Epub 2012 Nov 28.
A recent evolutionary change affects a regulatory element in the human FOXP2 gene.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23197593


現生人類なら共有できるような「言語による複雑なアイデアの共有」という能力が低かったのではないか?

このために、新人(現生人類)が展開できる投擲道具を使って遠距離から相手を攻撃するという集団戦にはかなわなかったのではないか?

ということが考えられるというのです。



非常に面白いのですが、新人と旧人の運命を分けた遺伝子の違いはFoxp2だけで考えていいのでしょうか?


ここからは私の勝手な妄想です(出ました^^;)


以前にも書きましたが、糖質摂取にかかわる遺伝子がここで大きな意味を持ってくるのではないかと思うのです。


新人がアフリカを出て世界各地に広がり始めた6万年前

そして旧人たちが滅んだ3万年前

その3万年の間はどういう時代であったかというと、氷河期の一部で、地球上がとても寒い時代でした。


この時代に生き延びるためは、長い冬をどのように過ごすか、それがとても大事な問題でした。

この点での生き残る知恵の差が新人と旧人の運命を大きく分けた要因の一つだったのではないかと思うのです。


肉食のための獲物を狩る能力においては、旧人と新人でそれほど変わらなかった、むしろ個人の身体能力は旧人の方が高かった。

でも、長い冬の時代は獲物の数も減らします。

大型の獣を仕留めることができなくて、狩猟がうまくいかない、そうなると、食べれるものを何でもかき集めてくる採集生活の方が重要になる来ます。


このときに、もしも唾液腺のアミラーゼの発現量の多い人類と少ない人類がいたら、どちらの人類の方が効率よく糖質含有率の高い食物を採集してくることができるでしょうか?

唾液腺アミラーゼの発現量が高い方が有利ですよね。

木の皮とか、昆虫とかをかんでみた時に、どの食物がより甘いのかを判別する能力に優れます。


そして、現代人が悩んでいる糖質摂取による肥満。

これは、氷河期にあってはとても望ましい現象ですよね、冬を乗り切ることができます。

温かいうちにできるだけ糖質を食べて、脂肪を蓄えておくことが重要だったはずです。


糖質含有量が多い食材を探し出す能力が高ければ、

そしてその種類などを共有する知恵、原始的な文明を持っていたとすれば、

生き延びるうえでものすごく有利なことですよね。


寒い冬に、獲物が取れない時期を耐え抜くことができた新人たち。

ただただ獲物を探し続けて、獲れなかったら、空腹を耐えるしかなかった旧人たち。


ここにも大きな違いがあったのではないかと私は妄想します。

人類の文明の礎を築いた遺伝子変異は、Foxp2の点変異だけでなくて、糖質摂取にかかわる複数の遺伝子群の変異やコピー数の変動にあったのではないか。

特にその大きな差となったのは唾液腺のアミラーゼのコピー数の違いにあったのではないか、なんてね。

⇒日本人はでんぷんを食べるのに適した遺伝子を持っている?


これはネアンデルタール人のゲノムや、同時代に生きたクロマニョン人たちのゲノムをもっと詳細に解析できないと分からないことですが、ちょっと楽しい妄想であります。

2015年7月12日 12:33

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コメント(1)

カルビンチョ先生、はじめまして。

スーパー糖質制限を始めて1ケ月の初心者です。この記事からふと思った事について質問させて下さい。

よくアスリートが試合や競技の前にカーボローディングをするといわれていますが、先生方の記事を読むと筋肉のグリコーゲン貯蔵量は大した量ではないのであまり意味がないと勉強しました。

そこで質問なのですが、スーパー糖質制限をした者が、競技前に例えばマラソンランナーがカーボローディングならぬ糖質ローディング、果糖ローディング?をしたらマラソンの距離どころかそれ以上の距離を中性脂肪を利用して貯蔵した分、食わずに走れるということでしょうか?

アホな質問ですみません。宜しくお願いします。

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