現生人類の進化と食餌 肉食と糖質食のどちらが初期設定に近いのか?
我々現生人類はもともと、 肉食だと思いますか?
草食だと思いますか?
それとも、初期のころからどっちでもいける雑食だったのでしょうか?
そのことに関する、少し詳しいお話です。
人類の進化と合わせて書いてみようと思います。
進化の話や考古学の話に興味がなければスルーしてくださいね。
スポンサードリンク700万年ほど前にチンパンジーと別れた我々の祖先
20世紀末にヒトの全ゲノム遺伝子配列が明らかにされて、その後、21世紀に入ってからは遺伝子シークエンス技術自体が全く新しいものに変わったので、遺伝子解析で様々なことがわかるようになりました。
その成果の一つが、化石や古い骨の中のDNAを抽出してその個体の持つ遺伝子配列の多くを推定できるようになったということです。
5300年前に氷漬けになったアイスマンの遺伝子配列が現代のドイツに住む現代人の一部と酷似している(つまり彼らはアイスマン一族の子孫である)
ということが分かったのもそれです。
その方法で、ここ数年で改めて確認されたのは、
われわれ人類の祖先は700万年少し前までさかのぼると、チンパンジーと同じ仲間であったということです。
現代のチンパンジーと同様に、森の辺縁で、主に木の上に住み、果実や新芽や樹皮といった植物由来の糖質を毎日摂取していて。
でも、昆虫やリスや小さなサルを捕まえることができたらそれも食べていた、という生活です。
450万年ほど前になると、チンパンジーとは明らかに異なる骨格をしています。
アルディピテクス・ラミダス
https://en.wikipedia.org/wiki/File:Ardipithecus_ramidus.jpg
二足歩行はできる体になっていますが(骨盤の構造から)、森の辺縁に住んでいて、木にもよく登っていた(足などは親指が離れていて木やつたをつかめる構造)と思われます。
食べているものもチンパンジーと似ていて、果実や新芽を主に食べていたと考えられています。
そのうち、彼らの一部は地上の行動範囲を森の外に広げ始めました。
森の奥にはゴリラがいて、辺縁部にはチンパンジーがいる。
人類の祖先の猿人たちはゴリラやチンパンジーに比べれば小柄で、森の食べ物が少ないときには競争に負けていたものと思われます。
勢い、草原へとその食料確保の道を求めていきます。
370万年ほど前の猿人と呼ばれる人類の化石(アウストラロピテクス・アファレンシス)を見ると、
けっこうな頻度で二足歩行をするようなサル(猿人)であったことが推測されます。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:A.afarensis.jpg
これは骨盤の形などから力学的な推測の元に導きされた答えです。
(でも、この時点でも、住んでいたのは主に林に近い草原であり、二足歩行しても長距離は走れず、いつでも森の中に逃げられる生活をしていたとも考えられています。)
300万年から400万年ほど前の草原で、彼ら、猿人が新たな食料として確保したのは何でしょうか?
二つの可能性が示されています。
一つは、木や草の根っこ、そこに豊富に蓄えられた糖質です。
以前の記事で書きましたが、 でんぷんを口の中で噛んで
「あ、これは甘い、美味しい食べ物だ!」
と理解するためには 唾液腺でのアミラーゼ分泌が重要です。
多くの動物ではアミラーゼは膵臓で発現して消化管内に分泌されます。
しかし、ユーラシア大陸のサルでは、たまたま唾液腺でもアミラーゼが発現するようになったのです。
これにより、サルたちは、地下茎や山芋のムカゴなどがよく噛めば甘い栄養である(でんぷん)と理解できるようになっていたのです。
つまり、チンパンジーやゴリラに負けて草原にさまよい出た人類の祖先の猿人たちは、草の根っこのでんぷん質をエネルギーとして利用していた可能性があります。
でも、それって、あまり効率の良いエネルギー採取方法ではありません。
だって、地下茎が太るのって秋に向けての話で、一年中、芋が手に入るわけじゃないですよね。
手に入れば食べていたものの、頼れる主食ではなかったはずです。
では、草原に進むしかなかった人類の祖先の猿人たちが食料としたものは何だったのか?
それはおそらく、肉食獣が食べ残した草食動物の死体、
骨にこびりついた肉や、骨の中の骨髄であったと考えられます。
このことについて緻密な展開で論理的に書いている本が
「親指はなぜ太いのか?」
親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る (中公新書) です、
こちらを読んでいただければ腑に落ちると思います。
詳細は本に譲るとして、概説に戻ります。
実際に、300万年ほど前の地層から猿人たちが使ったと思われる原始的な石器が見つかっていて、
それと同時に、石器で肉を削り取ったと思われる傷のついた草食獣の骨の化石も出ています。
ということで、草原に出た猿人たちは、 森の果実主体のチンパンジーのような食生活から、
ライオンの食べ残しの肉を食べる肉食主体の生活へと変わっていきます。
このころに同期して、身体は二足歩行に適したものに変わっています。
脳の容積も大幅に増えてきます。
脳が発達し、二足歩行になったのは、石器を使ってライオンの食べ残しの肉や骨髄を食べるために重要なことです。
脳を発達させたのが同時にまた、肉食や骨髄食であったと考えられます。
肉、特に骨髄から得られた脂質は我々の祖先の脳神経系に豊かな栄養をもたらします。
これにより、人類の本当の脳の進化が始まったと考えられています。
そう、高度な知能を持つようになった人類の初期設定は肉食、骨髄職だったのです。
もちろん、そうやって発達した脳と器用な手先は、草原の草の根っこのでんぷん質を手に入れることにも活躍した可能性があります。
ですが、おまけでしかなかったと私は思います。(先で大事になります)
さて、草原を走り回り、石器を使って死肉をあさる猿人たち。
脳の容積もどんどん増えて、足も長くなって運動能力が上がると、 そのうち、自らで獲物の草食獣を狩るという行動を始めます。
これがおよそ250万年から180万年ほど前に出現したと考えられる原人です。
ホモ・エレクトゥス、ホモ・ハイデルベルゲンシスなどが有名ですね。
日本語でよく知られているものには、北京原人とか、ジャワ原人とかですね。
アフリカから出現した猿人がユーラシア大陸の各地に広がり、それぞれの地でそれぞれに原人として発達します。
この時代が100万年以上続きます。
彼らは草原を走り、獲物を追った狩人であり、肉食の人類そのものです。
つまり、猿人から原人の時代に、人類の祖先たちは肉食として生きる200万年を過ごしたことになります。
参考文献にこれをどうぞ
週刊 地球46億年の旅 2014年 12/7号 [分冊百科]
そしてやがて、その原人たちの中から、旧人と呼ばれる、現代の人類によく似た体格の人類が出現します。
知能が高く、身体も大きな旧人たちの前に、原人たちは駆逐されていきます。
旧人として有名なのは、たとえばヨーロッパに多く住んでいたネアンデルタール人です。
彼らはかなり高度に加工された石器を用いて、集団で狩りを行い、大型獣も仕留めて食べていたようです。
狩猟採集生活が基本、つまり主に肉食の人類であったと考えられています。
と、ここまでで、いったん、記事を切りますね。 あまりにも長いので。
2015年7月10日 23:30 スポンサードリンク
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