どうして糖質の味を人は好むのか?
生まれたばかりの赤ちゃんでは、特に低出生体重児、あるいは逆にお母さんが妊娠糖尿病の傾向があって、かつ体格の良い赤ちゃんの場合には低血糖を起こすことがあるので、生まれてすぐにブドウ糖溶液を飲ませることがあります。
(お母さんはインスリン抵抗性となって膵臓が盛んにインスリンを作り、赤ちゃんのインスリン反応性は普通であった場合には赤ちゃんは肥満します)
こういうときにその赤ちゃんに甘いブドウ糖液を口に入れてあげると、すごく熱心にちゅうちゅう吸います。
それだけでなく、離乳食をあげるときにもお母さんは気が付くはずです、ミルクしか飲んでいなかった赤ちゃんが甘い液体に示す嗜好性、そして執着の強さ。
それほど、人は甘いものを好むのです。
これはなぜでしょうか?
人間に限らず、我々動物にとって、三大栄養素というのは糖質、タンパク質と脂質です。
でも、この中で最も効率の良い、すぐにエネルギーとして利用できる栄養素は糖質なのです。
後の二つの栄養素は糖質ほど効率よくすぐに栄養として活用できないのです。
ずっと以前に、第二次大戦前に日本人がマラソンで好成績を残した時に、日本人はレース前におにぎりを食べて、欧米人はステーキを食べて、スタミナは日本人の方が長く続いたという話がありました。
それ以来、欧米人も長距離走の前の栄養補給は炭水化物にするようになったという話、本当かどうかわかりませんが子供のころに母から聞かされたことがあります。
その時は、それほどお米というのは優れた食べ物なんだよ、残さないでしっかり食べなさいと言われたわけでしたが。
ちょっと脱線しましたがつまり、糖質というのはエネルギー源として優れているので、自然環境の中で活きているのであれば優先的に摂取すべき栄養素であると、我々の体はセットされているのです。
血液中の糖質が上がることが満幅のサインともなっています。
だから我々は甘いものが好きですし、お米や小麦粉のように食べたらすぐに血糖が上がって満足感が得られる食べ物を好むようにできているのです。
栄養がなかなか手に入らなかった時代にはそれが生き残るために重要なことだったのですね。
今は飽食の時代ゆえ、それが過剰になって困っているわけです。
『「炭水化物が食べたい」に関係する神経細胞を特定』
https://www.asahi.com/articles/ASL1D6W7QL1DOBJB00M.html
~CRHニューロンの活動を高めたところ、脂肪食の摂食が通常の3分の1ほどに減り、炭水化物の摂食量が9・5倍になった。逆に抑制すると、炭水化物の摂食量は増えず、脂肪食を多く食べた。~
将来こういう薬で糖尿病コントロールができたりするんでしょうか。
(炭水化物嗜好を増やす方向のが内緒で食物に混入されたりして…)
>カイゴロンさん
文献情報ありがとうございました、目に止めていませんでした。
こちらの先生の勤める生理研からのプレスリリースがこちらです。
http://www.nips.ac.jp/release/2018/01/17.html
原文の論文も無料で公開されています。
http://www.cell.com/cell-reports/pdf/S2211-1247(17)31786-2.pdf
ここから抜粋した文章をつなげて読みますと
「動物はストレスを感じると視床下部室傍核に存在するCRH産生ニューロンからCRHを分泌します。分泌されたCRHは、下垂体門脈を通って下垂体前葉に到達し、副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) の分泌を促進し、副腎皮質刺激ホルモンは副腎から副腎皮質ホルモンを分泌させます。」
とある、そのニューロンは、マウスに一日絶食させることでも刺激されて、CRHを分泌した。
絶食していないときには脂質を好むのが、絶食ストレスがかかると糖質を好むようになった。
ということのようですね。
「ストレスによって甘い物を食べる原因の解明につながると期待されます」
と結んでありますので、そこは賛成です。
現代社会でストレスに耐えながら働いている人が甘いもの中毒になってぶくぶく太るメカニズムの説明になります。
・・・ただ、それはおかしいんじゃないの?という記述が何か所かあります。
「ケトン体は絶食している際の栄養源になりますが、ケトン体が上昇するということは、体内でグルコース(糖)がうまく利用出来ない状況にあることを意味しています。これは、いつ脂肪が枯渇してしまうか分からない、非常に危険な状況と言えます。そこでマウスは、再摂食する時にできるだけ炭水化物食を選んで摂食し、代謝を元に戻します。」
「高度肥満者は、脂肪食を好んで摂取することが知られています(特に甘い脂肪食)。これまでは、「美味しい」食物をより好むことが原因であると考えられてきました。今回、炭水化物と脂肪の食べ分けを決定する神経細胞が発見されたことによって食物の嗜好性を決定する神経回路が明らかになり、高度肥満者が脂肪食を好む原因も明らかになると期待されます。」
???
絶食したら空腹になりますから食欲に歯止めがかかりにくくて暴食しますよね。
その状態では炭水化物を好むようになるという実験結果が出ているのに、なんで
「肥満者は脂肪食を好む」って決めつけるのかが意味不明です。
マツコさんなんか「あたしの体は炭水化物でできてるのよ!」って豪語してるのに(笑)。
私、勤務先の外来で食事メモをたくさんの方に書いてもらっているのですが、言うまでもなく肥満している人ってほぼ炭水化物をたくさん食べていて、脂肪はあまり好きじゃない人が多いです。
脂肪を摂取する場合はほぼ必ず炭水化物をセットで摂取されてます。
(揚げ物のころも、ポテチ、砂糖たっぷりのクリーム)
それが一応このプレスリリースでも「(特に甘い脂肪食)」ってなってるんでしょうけど、これ、なんで「糖質で甘くした脂肪」ってことをごまかすような表現にしているのでしょうか?不思議です。