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喫煙率が下がっているのに肺がんが増えているという詭弁の仕組み


数日前のヤフーニュースで知ったのですが、麻生太郎氏が

「喫煙率が下がっているのに肺がんが増えているのはどういうわけだ、喫煙と肺がんは無関係じゃないか。」

といって回ってるらしいという話が掲載されていました。

 麻生太郎財務相は21日の衆院財務金融委員会で、喫煙者が減っていることについて触れるなかで、「肺がん(の患者数)は間違いなく増えた。たばこってそんな関係あんのって色んな人に聞くんです」と述べた。日本維新の会の丸山穂高衆院議員の質問に答えた。

 麻生氏は愛煙家として知られ、喫煙と肺がんの因果関係に疑問を示した形だ。さらに電子たばこについて「国会で吸えるよう提案してみてはどうか。イライラがずいぶん収まって、激論もちょっとは減るんじゃないか」とも語った。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170222-00000004-asahi-pol


・・・ん?

なんだそれ?

喫煙と肺がんの発生の間に相関関係があるのはずっと前から有名な話。

複数の大規模の前向きコホート研究で検証されている事実です。

今更それが覆るわけないだろう、そう思って調べたら、

グラフで提示しながら肺がんと喫煙は関係ないとする本やサイトがありました。


ちょっと見てみたのですが、

「いやいや、違うでしょそれ。事実の一部分だけを切り取った詭弁でしょ。」

と、思いまして、調べてみたらきちんとそのこと(事実の一部の切り取りであること)を指摘したサイトも複数ありました。


そちらを紹介して見ていただくのがわかりやすいのですが、

気になることがあったので、ここでも言及しておきます。




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喫煙率が下がっているのに肺がんの死亡者数が増えているとするグラフと主張


喫煙率が下がっているのに肺がんは増えているとするグラフは以下のページに書いてあります。

有名な武田邦彦さんのサイトですね。

タバコの話 図1.jpg

健康シリーズ: タバコと自殺
http://takedanet.com/archives/1013802844.html


これを見ると、

「あれ、ほんとだあ!タバコと肺がんって関係ないじゃん。」

そう思っちゃいますよね。


で、喫煙率はJTからの情報、肺がん死亡率は厚生労働省の人口動態統計からとっているそうです。


武田氏はこのように書いています。

「なにしろこの40年間、喫煙率は2分の1になって、肺がんは約10倍になっているのですから.タバコを吸ってもすぐには肺がんにならないという期間をいろいろ考慮しても到底、説明できません.」

ふむふむ、このグラフを見せられるとそうおっしゃるのも納得です。


ですが、このグラフにはごまかしがあります。

日本は着実に高齢化していますよね、そして高齢化すると癌で死ぬ人は増えます。

集団の中に高齢者がどのぐらいいるのか、その人口構成比を考えてグラフを作らなければなりません。


そのグラフがこちらになります。

タバコの話 図2.jpg

国民と政府にウソをついて喫煙対策を妨害するJTに抗議する
NPO法人 日本禁煙学会 理事長 作田 学
http://www.nosmoke55.jp/action/1203liar_jt.html


先ほどのグラフと形が違うことに気が付きますよね。

年齢構成比で調整すれば、肺がんの死亡率は1996年をピークに減少に転じているのです。


武田氏も本文中で書いていますが、

タバコを吸ったら即、肺がんが発生するわけではありません。

喫煙開始から肺がんの発生までには20年から30年のタイムラグがあるとされています。


Wikipediaに記載されている以下のグラフが有名です。

タバコの話 図3.jpg

肺癌 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%82%BA%E7%99%8C

「肺癌の発生率は喫煙率と高い相関がある。左の縦軸(緑色のグラフ)が男性1人が1年間に煙草を喫煙する本数の推移、右の縦軸(赤色のグラフ)が男性10万人当たりの肺癌での死亡者数の推移。」

と、あります。

アメリカ人のデータに基づく紙巻きたばこの喫煙本数と肺がんでの死亡者数の推移、見ての通りにそっくりな形をしていますね。

紙巻きたばこが発売され、流通し始めてからおよそ20~30年後に肺がんが発生しています。



さてさて、改めて、人口構成比別に修正されたグラフを見ると、少し疑問が湧きます。

グラフに書かれている喫煙率はピークのプラトーから下がってる時代のデータしかありませんよね。

日本の場合の喫煙率のピークはいつからプラトーに達していたのでしょうか?

あるいは、ほんとうに喫煙率のグラフとの比較でいいのでしょうか?

個人別の喫煙本数とかのグラフは存在しないのでしょうか?


この疑問に対する答えはこちらに詳しく提示されていました。

タバコの話 図4.jpg

1. 喫煙率が下がっているのに肺がんが増えているのは、なぜ?
https://www.kinen-sensei.com/%E3%82%BF%E3%83%90%E3%82%B3%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%82%E3%81%82%E8%A8%80%E3%81%88%E3%81%B0%E3%81%93%E3%81%86%E8%A8%80%E3%81%86/%E5%96%AB%E7%85%99%E7%8E%87%E3%81%A8%E8%82%BA%E3%81%8C%E3%82%93/

喫煙率だけでなく、1人当たり消費本数が示されています。


見たら明快ですね。

1人当たりのタバコ消費本数のピークがあるのは1977年です。

その年を境に消費本数は減少に転じています。

その20年後の1996年ごろから肺がんの死亡者数は減少に転じています。

(喫煙率のピークは1966年なので、そこから計算すると30年後です。)


つまり、

「タバコの消費本数」と「肺がん死亡率」は20年のタイムラグを経て同じようなカーブを描きます。

Wikipediaに描かれているアメリカ人のデータとよく似ていますね。


で、こちらのサイトでは以下のようなグラフも参考のために提示されていました。

日本よりも先に喫煙への害が注目され始めたアメリカでは

すでに喫煙本数の低下(青線)のみならず、肺がん死者数の低下(赤線)も始まっています。


タバコの話 図5.1.jpg


みごとですよね、喫煙本数の増加と減少のグラフを20~30年ずらすと肺がん死亡者数のグラフとよく似た形になります。

で、このグラフ、よ~く見てみてください。

人口構成比で修正されているこのグラフでさえも、詭弁を弄しようと思えば、ここだけ切り抜いてくればこうなります。


タバコの話 図6.1.jpg

タバコの話 図7.jpg
なんだか、この記事の最初のグラフに似ているような気がしますねえ。

「肺がんとタバコは関係がない!」

と叫ぶ方々がどのようなトリックを使ってそれを主張してきたのかがよくわかりますよね。

なお、今回の記事を記載するにあたり、

こちらのNATROMさんのブログも参考にさせていただきました。


2012-03-17 「喫煙率が下がると肺がん死が増える」のはなぜか?
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20120317

2012年にすでにこの問題について指摘されていました。





糖質制限に関しても気を付けなければならない。


さて、糖質制限のことを書いているこのブログでどうしてタバコの話を持ちだしてきたのか?

それは、糖質制限に関してもそう言うフェイクトリックに騙されないように気を付けるべきだと考えたからです。


たとえば、(まだこのブログでは詳しく触れていませんが、)糖質制限のメリットに、

「将来的ながんの発生率が下がる可能性が高い」

「厳しい糖質制限(ケトン体が高くなるようなケース)は、発生したがんの進行を抑える可能性が高い」

という部分があります。

(後半に関しては糖質制限だけではなくて、ビタミンCの大量点滴などとの組み合わせが大事になってきます。)


この分野に関して、これからエビデンスが積み重なってくると、

継続的な糖質摂取ががん発生と関連し、糖質制限はがん発生を抑制する

という話がコンセンサスをもって認められてくると思います。


そのときに、糖質制限に反対したくてたまらない方々は

今回の肺がんと喫煙率に関するような詭弁、トリックを持ちだしてきて

糖質摂取ががんを引き起こす要因の一つであること

を必死になって否定しにかかってくるかもしれません。

我々は、そのことを十分に心して準備しておく必要があるでしょう。



長々と書きましたが、いちばん言いたかったのはこの最後の段落です。

客観的な観察眼を失わないようにしましょう。



2017年2月26日 18:46

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コメント(8)

おそらく、相関関係と因果関係の違いが理解されていないのではないかと思います。

人の体のことを、完璧に因果関係で解き明かすのは現時点では無理だと思いますが(ゲノム解析ができれば別かな???)、一般の人やマスコミは、まるで数学の方程式を解くかのような先入観で見てしまうのではないでしょうか?

したがって、患者の立場である私のようなものからは、患者側がリテラシーを高く持つのと同時に、医療の立場の人も(管理人さんとは言っていませんが)、自分の研究結果や病院等の経営の目的で都合よくデータを読ませるようなことをマスコミに吹聴するのを控えてほしいものです。

マスコミもわかってて記事をクローズアップしている側面もあるでしょうけど。

カルピンチョ先生

本題とはズレた話で恐縮です。

私は(法律どおり)20歳からたばこを吸い始めました(真面目だから)。
チェーンスモーカーでした。吸いかけがあるのに次のタバコに火を付けたりして・・・。
当時は大学の研究室で喫煙しても大丈夫で、ジュースの空き缶を灰皿にしていましたが、その空き缶にジュースがあると勘違いして口にして吐き出すというおバカなことをしておりました・・・繰り返し繰り返し(愚)。
26歳のある時、友人等と禁煙を計画し「最初にタバコを吸ったヤツはみんなに焼き肉をおごる」という賭をしました。それ以来禁煙です(笑)。
今では、タバコの臭いに敏感で、嫌悪感を催し吸おうという気にすらなりません。変わるもんですねぇ。

糖質制限を行い2年経った今では、甘いものに敏感になってしまって、これもなかなかですねぇ。こんなんなるんですねぇ。
この2月、帰省しまして。故郷(鹿児島)の味も甘いんですよね。ご存じかと思いますが、そもそも(南九州の)醤油が甘い!ベースが甘いから全部あまい・・・。

でも、ラーメンは食べて帰ります。ラーメンは帰省時のみ、うまい(苦笑)。

ひっ跳べ

こんばんは。先生の仰りたい事よくわかります。
私のような素人でもよーくわかります。

同じような事が糖尿病でも、というか糖尿病と糖質制限に関しても言えますよね。
まだまだ初心者の私ですが、先日ジャヌビアが中止になったときに先生が仰いました。

「お薬代の負担もだいぶ楽になると思いますよ」と。

‼なるほどー。

そういうのわかってるんだー、と。


認知症の有名なお薬は薬価が高いため、うちでは出せません、と何度言われた事か。

そんな、経験もあり、お薬にしろ、タバコにしろ、なんやら複雑な(いや、単純か)事情があるのでしょうね。
本来の趣旨や目的が見失われている状況が医療現場にしろ、政治にしろあるのでしょうなあ…

先生に言われてから、確認したらジャヌビアの薬価にびっくり‼

でも糖質制限を実施する事で使わなくてよい医療費を削減できたらいいなあと思っております。

メトホルミンもやめられたら、次は禁煙外来かしら(笑)


こんばんは。

先日、糖質の化け物(今川焼)に命を狙われましたが、素早いマッチポンプにより命のメーターが200台から80
台に落ち着き、事なきを得ました(*_*)

ふー( ̄~ ̄;)皆様も刺客にはご注意ください。


「しがらみ」それが許せなくて今の会社仲間で独立をした経緯があるんです。

真摯に誠実に職務を全うするためにはしがらみは百害あって……です。

他人がどうかは関係なく、自分達が信念に基づき、状況を見極めてその時点でベストな事をしていく。

まだ血の気の多いアラフォーです。所詮食事、されど食事。
文句があるなら関わらなきゃいいのに、何なんだろ⁉

理解不能です。

そんなこんなで、先生をはじめ、輩と戦う方たちを尊敬しております。

はい、酔っ払いです(>_

不快な思いをされた方にはお詫び申し上げます(-""-;)

明日、朝一で受診し、ここ4ヶ月の結果が出ますのでテンションが上がってます。

体調はすこぶるいいです(^_^)v


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