ポッカリ月が出ましたら、舟を浮べて出掛けましょう
インスリンというホルモンは、分泌されすぎると困るホルモンです。
糖質を食べて、食後高血糖になると、それを感知した膵臓のランゲハンス島のβ細胞は、あわててインスリンを分泌します。
分泌されたインスリンは、肝臓や脂肪や筋肉に働きかけて、糖を取り込ませます。
でも、このインスリンの分泌、食後の高血糖の時だけに出ているわけではありません。
常時、ある程度の量が分泌され続けています。
糖質を食べようが、食べるまいが、常時、分泌され続けています。
糖質、血液をはじめとする体液中のブドウ糖は、体中の多くの細胞にとってとても大事な栄養素です。
例えば赤血球は、細い血管をすり抜けるために、哺乳類では核を失いました。
それにより、体の末梢にまで酸素を送り届けることができます。
でも、その代わりに、核を失うときに、ミトコンドリアなどの細胞内小器官も失いました。
ケトン体を利用するためには細胞内のミトコンドリアが必須、だから赤血球は脂肪を代謝できません。
ブドウ糖しか使えないのです。
糖質を食べようが食べまいが、インスリンは一定量、分泌されています。
これを基礎インスリン分泌といいます。
この基礎インスリン分泌は、あなたの体の中の血糖値を一定に保つために分泌され続けます。
糖質を食べないのにどうして私たちの血液の中に一定量のブドウ糖があるのでしょうか?
それは、私たちの体が、自分の体の中でブドウ糖を作り続けているからです。
アミノ酸を材料に、脂肪をエネルギーにして、肝臓と腎臓で糖を作り続けているのです。
そう、私たちの体に酸素を巡らせる赤血球のために
私たちのすべてを律する脳細胞にエネルギーを与えるために
私たちの肝臓や腎臓は、毎日、ブドウ糖を作り出して、全身に送り出しているのです。
糖質なんか食べなくても、毎日ブドウ糖は作り出されます。
膵臓のランゲルハンス島のβ細胞は、作り出された血糖を感知して、適度なインスリンを分泌し、糖が過剰になるのをゆるりと防ぎ、血糖が足りないのを感知すると、適度なグルカゴンを分泌して、貯めておいたグリコーゲンを分解し、同時に肝臓や腎臓に伝えて糖新生を促します。
それらの会話は静かに静かに、山間の小さな湖の上を、静かな夜の間吹き渡る風のように
音もなく、だけど毎日確実にふき続けているのです。
糖新生が活発に行われるのは、夜、あなたが寝ているときです。
糖質なんか食べなくても
あなたの体の中では、糖質が作られ、その濃度と会話しながら、インスリンが分泌され、グルカゴンが分泌され。
そのたもろもろのホルモンバランスが、静かに静かに、血糖と会話しながら、それを一定に保ってくれるのです。
それは本当に静かな会話で、そして親密な会話。
月夜の湖面に浮かぶボートの上で静かに交し合う恋人たちの会話のような。
湖上
ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けましょう。
波はヒタヒタ打つでしょう、
風も少しはあるでしょう。
沖に出たらば暗いでしょう、
櫂(かい)から滴垂(したた)る水の音(ね)は
昵懇(ちか)しいものに聞こえましょう、
――あなたの言葉の杜切(とぎ)れ間を。
月は聴き耳立てるでしょう、
すこしは降りても来るでしょう、
われら接唇(くちづけ)する時に
月は頭上にあるでしょう。
あなたはなおも、語るでしょう、
よしないことや拗言(すねごと)や、
洩(も)らさず私は聴くでしょう、
――けれど漕(こ)ぐ手はやめないで。
ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けましょう、
波はヒタヒタ打つでしょう、
風も少しはあるでしょう。
中原中也
糖質をがっつり食べて、追加インスリンを分泌させるということは
静かな山間のこの小さな湖に、嵐を吹き荒れさせるようなものです。
一日三回、猛烈な嵐を吹き荒れさせる。
恋人たちの乗ったボートはやがて転覆して、二度と浮かんでこなくなることもあるのです。
カルピンチョ先生
山口百恵ちゃんのファンだったんですね。
先生と中也って、少しイメージが合わなかったのですが・・
久しぶりに中也の詩、読みました。
私は、若い頃は、アルチュール・ランボーやベルレーヌ・ボードレール・マラルメが好きでした。
日本人だと、堀辰雄・梶井基次郎・原口統三・・・
先生は、絵描きは誰が好きなんでしょう?
ルノアールとかゴッホかな ?
先生、ロマンチストですね・・・(微笑)
>長谷川さん
>先生と中也って、少しイメージが合わなかったのですが・・
・・・なんででしょう? けっこうロマンチストなつもりですが。
>私は、若い頃は、アルチュール・ランボーやベルレーヌ・ボードレール・マラルメが好きでした。 日本人だと、堀辰雄・梶井基次郎・原口統三
・・・正統派な昭和の高度成長時代に青春を過ごされてますね。
私も梶井基次郎は好きで、「桜の樹の下には・・・」を使って記事を書いてあるのですが、冒涜な気がしてアップしていません。
河原町通りの丸善がゲームセンターなんぞに成り果てた時には泣きそうな気持でした。
>絵描きは誰が好きなんでしょう?
・・・絵画は、全く正統派ではないので、Boschとか若冲とかリアルで不気味なのがけっこう好きだったりします。フェルメールとかドラクロアとか、ピカソの若い頃とかの光と影の明瞭な油絵も好きです。
Boschに行っちゃったのは、大学の時に担当教官だった教授がファンで画集を貸してもらったのが最初のようであり、いえいえ、永井豪さんのデビルマンを読んで、自然にダンテの神曲に行きついて、ヨーロッパの宗教画はルネッサンスのころのものがいろいろ面白くて。
いや、それ以前に地元のお寺さんが地蔵盆の時に公開する地獄絵図の強烈な印象が残ってるんでしょうかね。
あとね、図鑑の生き物や恐竜の絵も大好きでした。
わけわかんないですねww