ケトーシスとケトアシドーシスの違いは何か? その1
糖質制限たたきをする先生方がしばしば懸念される、「糖質制限するとケトーシスが起こるから危険である!」というその「ケトーシス」について。
そして「ケトーシス」ではない、よく似たもうひとつの言葉、「ケトアシドーシス」について。
それぞれに説明してみたいと思います。
「ケトーシス」と「ケトアシドーシス」とは、言葉は似ていますが、まったく異なる状態です。
前者が食物内容に対する生理的な変化、後者は命に関わる病的な変化です。
わかりやすい喩えで言えば、
「適量のお酒飲んで、血液中にある程度のアルコールが入った状態できもちいい。」状態と
「その人の限界を超えて飲みすぎて急性アルコール中毒で命が危ない。」状態、
その二つの状態の違いみたいなものです。
後者を恐れるあまりに、前者を避けろと言うのが、ケトーシスを危険視する先生方のスタンスです。
「急性アルコール中毒は命に関わる危険な状態です。それを引き起こす可能性のある飲酒をすべて禁止するべきです!」
と、叫んでいらっしゃるようなものですな。。。(ー ー;)
ケトーシスとは血液中にケトン体が正常範囲とされる数値を超えて存在する状態です。
(この「正常値」というのは現代の通常食(糖質45%~70%)を食べている、何も体に変調のない人たちで規定した値であることをまず念頭に置いておいてください。)
ケトーシスはどういう状況で発生するのでしょうか?
いくつもの原因がありますが、わかりやすいものとしては断食、絶食状態、それも糖質摂取が非常に少ない状態で発生します。
宗教的な理由による断食中の方々や、つわりで食事が取れない期間の妊婦さんに普通に起こりうる状態です。
断食でなぜこれが起こるかというと、断食により、栄養分が入ってこなくなると体は自分の身体に蓄えられた栄養分をエネルギーとして消費し始めるからです。
このときに消費されるものは、最初はグリコーゲンという糖質ですが、これは一日もたたないうちに枯渇します。
次に使うのが筋肉などに蓄えたタンパク質、これを分解して糖質の原料とします(糖新生)。
そしてその糖新生に必要なエネルギー源とするために体脂肪を分解し、具体的には脂肪酸をβ酸化することによりアセチルCoAを取り出し、TCAサイクルを回すことでエネルギーを調達します。
しかし、これにより過剰のアセチルCoAが産生されると、肝臓のミトコンドリア中でアセチルCoAは3-ヒドロキシ酪酸あるいはアセト酢酸に変換されます。
3-ヒドロキシ酪酸は酵素的にアセト酢酸に変換され、βケト酸であるアセト酢酸は不安定な物質で容易に非酵素的に脱炭酸してアセトンへと変化します。
これらの三種の物質がケトン体で、これが体内で増え、血中濃度が上昇した状態がケトーシスです。
そして我々の身体は、この時に非常事態モードになり、普段、糖質しか使っていない細胞が、脂肪を分解して得たケトン体を使えるように変わっていくのです。
たとえば脳細胞は現代人の通常食モード(糖質45%~70%)ではブドウ糖だけを栄養素として使っていますが、絶食時、ケトーシスの状態では総エネルギーの30~40%をケトン体を利用してまかなうことができます。
これは常に安定して食料が手に入るとは限らない状況で生き延びてきた我々の祖先が獲得した生き延びるための機能と言ってもいいでしょう。
実際、現代でも人間や家畜以外の野生動物の生活や、狩猟採集生活時代の人間を考えてみればよくわかります。
何日もまともに食べるものがない状態があることは野生生活では当たり前です。
その度に生物の体はケトーシスになって生き延びていたはずです。
頻繁に発生するケトーシス、体に害はなかったのでしょうか?
ケトンは酸性の物質ですから、過剰に存在すると血液が酸性に傾く可能性があり、危険であると思われます。
しかし、短期間の飢餓で生じるケトーシスに対して我々の身体は代償機能を持っています。
血液の中には炭酸イオンがあり、それによるバッファー機能が働いて、酸性のケトンがたくさんあってもそれにより血液のpHが大きく動くのをセーブできるのです。
厳しい糖質制限食では、食後血糖値がほとんど変動しません。
食事から摂取できる糖質はごくわずかで、そのために、体は必要な糖分を自分で作り出さなければなりません(糖新生)。
このときにタンパク質を分解してアミノ酸から糖を作るのですが、これ、食事中にアミノ酸がたっぷりあればそちらを優先して使いますので(筋肉のアミノ酸も使いますが、割合が減ります)、筋肉が落ちるようなことはほとんどありません。
脂肪に関しても食べ物から摂取した分が使えるならば使いますが、肝臓などでは蓄えてある脂肪を使う方が手っ取り早いので、肝臓の脂肪からどんどんなくなっていきます。
(これが低糖質ダイエットで速やかに脂肪肝が改善する理由の一つと考えられています。)
そして食事中の脂肪ももちろん使います。
この状況は、農耕文明が発達する前の狩猟採集生活を送っていた石器時代の人類にとっては当たり前のことです。
農耕文明が発達したのは古く見積もっても一万年前、開闢以来米を食べてきたのであると言われる日本人に至っては稲作が普及したのは2300年ぐらい前からと考えられています。
その前の10万年ほど続いた狩猟採集生活では糖質を食べる機会は少なかったでしょうし、摂取できる糖質の量も限られていたでしょう。
ですから、石器時代の人類の血液検査をすれば、現代人の基準で言えば「ケトーシス」と判定される人がほとんどだったのではないかと思われます。
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と、ここまでが「ケトーシス」の説明です。
では次に、ケトアシドーシスについて説明します。
・・・やっぱり長くなったので次の記事に(^_^;)。 スポンサードリンク 2013年2月 2日 20:23 スポンサードリンク
「ケトンは酸性の物質ですから」と書かれていますが、ケトン自体は中性物質だと思います。
3種のケトン体のうちアセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸のカルボキシ基のみが酸性を示すのであり、純粋なケトンである(ケトン基以外の化学的性質を持つ官能基を持たない)アセトンはカルボキシ基を持たないので遊離するプロトンが存在しない、つまり中性のはずです。
ゆうきさん
そうなんですか、失礼いたしました(^_^;)。
おかげさまで、アミノ酸やケトン体の研究を、そろそろ本格的に始められそうです。(半年後)ごくごくささやかなモノですが。
ケトーシスは、牛に起きるようですね。乳牛の症状で、ネットにて
検索したら、とても面白かったです。
>しましまさん
>アミノ酸やケトン体の研究を、そろそろ本格的に始められそうです。(半年後)
おお、楽しみです。
>ケトーシスは、牛に起きるようですね。乳牛の症状で、ネットにて 検索したら、とても面白かった
しらない。
検索してみよう。
あ、でも今日はまだお仕事が。うう(^^;)
2度目の投稿です、よろしくお願いします、
スーパー糖質制限でケトン体をできるだけ出るような食事《バターやココナッツオイル卵肉全般でケトスティク紙で三カ月くらいずっと陽性でしたが食事内容は変わらないのに最近は陰性になってしまいました、ケトン体
はもう出てないのでしようか?ただ尿に出てないのだけでしょうか?かかりつけの医者はケトン体は悪者との立場で聞毛ません、ケトン体はどこで正確にはかってもらえますか?よろしくお願いします。わ
>菊池由和さん
順調に継続されているようですね。
>ケトスティク紙で三カ月くらいずっと陽性でしたが食事内容は変わらないのに最近は陰性になってしまいました
・・・体が脂質代謝に慣れてきたということだと思われます。
江部先生も書かれていますが、スーパー糖質制限をすると最初は尿ケトン陽性になることがあるものの、多くの方で3か月から半年すると尿ケトン体が出なくなるということが観察されています。
尿に出なくなっても血中のケトン値は高いと思いますよ。
>ケトン体はどこで正確にはかってもらえますか?
・・・かかりつけの先生がはかってくれないのなら、別の病院でお願いするしかないですね。
ケトン食は小児科や神経内科の医者からしたら、患者さん(癲癇)に指導する常識的な食事のひとつですから、ケトン食、あるいは修正アトキンス食を食べているのでケトン値を定期的に確認したい、といえば検査してくれると思います。
神経内科あるいは小児科を探して訪ねていていただければ手っ取り早いと思います。
もちろん、目的は糖尿病の治療であること、かかりつけの主治医は糖質制限に反対だからと言って血液検査すらしてくれないことをきちんと伝えてください。
早速返信ありがとうございました、先生のブログいつも読んで励みになります、糖質制限食のおかげでhba1cはずっと4.8から5.2をこの三年間キープしてますが先生の言われている暁現象と思いますが朝の空腹時血糖値が120前後で少し気になりますが糖質制限する前のかなりの期間10年間くらい糖尿病だったと思われますのでインスリンの基礎分泌が低下していると思いますのでまだまだ正常になるのは時間かかるかもう正常人のようには下がらないかもですが1日くらい絶食すると空腹時血糖値も100を切ることがあります、糖質制限のおかげで食後血糖値は高くても140以下です、新井圭介先生の動画では高血糖よりむしろ高インスリンが悪いとありますのでじぶんでなぐさめています、インスリン量は糖質制限のおかげで少ないと思います、先生の指摘の通り病院かえてケトン体はかりに行きます、ケトン食のすごさを教えて頂いて本当に感謝しています、これからもよろしくお願いします、再拝。
>菊池さん
インスリン量が高いことは大腸がんなどの悪性腫瘍の危険因子としても認識されていますので、食後のインスリン追加分泌を避けることはとても大事だと考えています。
ぜひ、続けてくださいね。
ケトンの数値はある程度測ってつかめたらあとは気にせずに、半年に一度から年に一度くらいでいいと思います。
楽しみにしてるのならお金と静脈の痛みの許される範囲でどうぞです。(^^)/
かるぴんちょ先生、あれからあちこち病院を探しやっとケトン体はかってもらえました、自分ではかなり厳格にケトン食してたつもりでしたのでもう少し高く期待してましたが総ケトン体2834アセト酢酸4103ヒドロキシ酪酸2414グリコアルブミン13.8でこの病院でもga値以外すべて異常ですと言われました、何も反論せず帰りました。せっかくケトン体回路になっていると思いますので今さらグルコース回路に戻るのはもったいないのでカラダの調子はいいですし、このままケトン食続けていいでしょうか?そろからもう一つ質問させてください、腎機能で糖質制限して以来ずっと尿素窒素が高く今回も25.3でした、今まではクレアチンが低いので気にせんでいいと言われてましたが今回はクレアチンも上限地いっぱいまで上がってましたがこれもケトン食が厳格すぎるせいでしょうか?最近ケトン食をさらに進めて飢餓療法とオートファジーの本を読んで面白くて人体実験みたいな事したのが原因かもです、とにかくケトン食は素晴らしいです、かるぴんちょ先生のブログいつも見て勉強になります、いつもありがとうございます、手すきのときご教授下さい、よろしくお願いします、感謝。
>菊池さん
厳格なケトン食をしてらっしゃるということは
カロリーの大部分は脂肪から摂取しているということですよね、
たんぱく質摂取もミニマムに抑えていると判断させていただきます。
たんぱく質摂取量を極力低く抑えている状態でBUNが25.3というと、やはり高いのではないかと思ってしまいます。
(たんぱく質をたくさん食べていればBUN値が5㎎程度までの上昇は許容範囲かと思います)
ただ、成人の厳格なケトン食の基準値とすべきBUNの数値やクレアチンの値を私、知らないので、断定的なことは言えません、すみません。
腎機能が気になるのであれば尿中アルブミン定量、eGFR検査などを行うべきかと思います。
あと、腎結石があってもBUNは上がりますので、それにはご注意を
かるぴんちょ先生、さっそくご返答ありがとうございます、腎機能検査すぐうけてみます。先生のご指摘のとうり過去何度か尿管結石罹患しています、そしてできるだけタンパク質も控えるようにしてました、ほとんど主食はココナッツオイルとmctオイルとナッツ類と卵チーズ類たまの肉でmec食になると思います、説明不足ですみませんでした、しかし今までわからなかったケトン値が具体的にわかってよかったです。挙げ出せばきりがないですが花粉症が突然よくなり今までいくら歯みがきしてもよきならなかった歯周病が良くなり肌の痒みがなくなりまさにケトン食はミラクルです、わたしは今65歳になってしまいましたがもっと早くケトン食に 出会えてればと残念でなりません、これからも先生のブログ楽しみに勉強していきます、ありがとうございました、感謝。