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すべての人に共通する健康な食事法というのは存在しない


私は糖質制限する食事方法をこのブログでも実世界でも勧めています。

私自身、糖質制限して5年以上になりますが、健康は改善こそすれ、悪化していません。

あ、正確な表現ではないですね。


人付き合いで波風を立てることを好まないので、たまにお付き合いの糖質摂取が続くことがあり、そこにストレスが加わると、え~い!食ってやれ!

と、糖質を普通に摂取することがあります(;^ω^)。

するとてきめんに内臓脂肪が増えて血液検査の数値も悪くなり、血圧が上がります。

反省して糖質制限生活に戻ると改善しますが・・・


ということで糖質制限は健康を保つ上で非常に良い食事方法だと思います。

ですが、すべての人にとってこれが有効な方法かといえば、そうでない人は確実に存在します。



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糖質制限ができない人、糖質を摂取しないと命の危険にさらされるという人が世の中にはごく少数ながら存在します。

先天的に脂質代謝ができない人がそれで、長鎖脂肪酸代謝異常症という先天性疾患にくくられる人たちです。

この人たちは脂肪酸をうまく代謝できないので普通の食事で食べるような肉、魚や乳製品から栄養を十分に摂取することができません。

基本的には糖質中心の食生活が必要になります。


長鎖脂肪酸代謝異常症の人は、日本では年間25人から40人ほど見つかっています。

難病情報センター 長鎖脂肪酸代謝異常症 http://www.nanbyou.or.jp/entry/790



年間の出生数が100万ちょっとであることを考えると、2万5千人から4万人に1人の割合でこの病気の方が見つかっていると考えることができます。

仮に、ですが、

この病気の方の発症が4万人に1人であると計算して、その方々が同一遺伝子のホモ変異、つまり常染色体劣性遺伝形式で発症すると仮定します。

すると、その遺伝子変異をヘテロで持っている人の割合はどのぐらいになるか?


ヘテロの両親からホモ変異の子供が生まれてくる確率は1/4です。

すると、ヘテロの変異を持つ両親の組み合わせは1万分の1で起こると考えることができます。

となると、ヘテロの変異を持つ人は100分の1の割合で存在することになります。


つまり、長鎖脂肪酸の代謝に必要な酵素をヘテロで欠損する人は100人に1人存在するという計算が成り立ちます。


ここで仮説を考えてみましょう。

もしも長鎖脂肪酸の代謝に必要な酵素をヘテロで欠損する人が、脂肪酸をエネルギーとして利用する能力がいささか低いけど、現代社会の糖質60%生活ではそれが見逃されているとしたら?

その仮説が正しければ

「現代社会の糖質60%生活では何事も起きなくても、糖質を20%以下にするようなスーパー糖質制限をしたときには、十分なエネルギーを得ることができなくなる。」

そう言うことがあるかもしれないということになります。


人数の話で言えば、

「100人に1人の割合で、スーパー糖質制限したときに体の不調が起こる」

この可能性、理論的にはあるわけです。



もちろんこの可能性、逆もまたありです。

糖質ほぼゼロのケトン食を食べないと難治性癲癇が連発するような先天性疾患にGLUT1欠損症というのがあります。

難病情報センター GLUT1欠損症


この病気の人では現代社会の糖質60%生活では癲癇が起こりまくりです。

この場合のGLUT1遺伝子の方側の欠損、つまりヘテロ欠損で発症します。


ところが、常染色体性劣性変位のホモの遺伝形式で発症する人もいて、

こういう方の場合、少しだけ機能の落ちたGLUT1遺伝子を持っていたり、発現量が少しだけ落ちるような転写調節領域の変異を持っていたりします。

で、この両親はヘテロなんですが、現代社会の糖質60%生活では症状が出ません。

でも、もしもこういう方が朝から晩まで菓子パン、スナック菓子、カップ麺のような糖質摂取率が90%を超えるような食生活をしていたとすると?

ヘビーな糖質負荷により、なんらかの精神神経系の問題が出現する可能性も否定できません。


長鎖脂肪酸代謝異常症に比べればGLUT1欠損症の患者さんの数は少ないのですが、難治性癲癇の患者さんの数はもっと多くなります。

そのことを考えてみると、長鎖脂肪酸代謝異常症の遺伝子変異をヘテロで持つ人の頻度と大して変わらない可能性もあるかなと思います。

もしかしたら、

「100人に1人ぐらいは朝から晩まで糖質ばっかり食べる生活を続けたら精神神経系の体の不調(場合によっては癲癇のような)が起こる」

のかもしれません。(仮説です)



と、こう考えていきますと、

「日本人全員が安全に健康に生活できる黄金の栄養摂取パターン」

というものは存在しないのではないかと思うのです。


このこと、われわれは考えておかなくてはならないのではないかと思います。


自分でうまくいった食事の仕方をほかの人にも勧めたい、

自分はこんなによくなったんだし、自分の身近の数十人を見てもみんなそう言ってる。

だから嫌がる隣人に押し付けてもその人のためだ。



そう思うかもしれないけど、ちょっと待ってください、ということです。

あなたにはできる食事方法でも、その食事方法をとったがために体調がおかしくなる人はある程度の確率で存在する可能性がある。

そのことをみなさん、忘れないでいただきたいのです。


人はみんな別々の遺伝子配列を持ち、別々の環境で育ってきています。

押し付けないで、個人個人の体質をリスペクトして考え、行動していこうではありませんか。



2017年2月 5日 23:48

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コメント(12)

更新ありがとうございます。
江部先生のブログで糖質制限を知り、スーパー糖質制限を初めて2年半。
耳鳴りが和らぐ、耳閉感が解消、逆流性食道炎の解消、5kgぐらい体重が減るなど、さまざまな変化が起こりました。
BMI19・5ぐらいなので、「なんで糖質制限してるの?」とよく聞かれます。そういう時に、「逆流性食道炎があって……うんぬん」と説明すると、多くの方は興味を持つようです。
50歳超えると、多かれ少なかれ、胃腸に不快感を抱える方が増えている気がします。私も50代半ばぐらいから、食後に胸焼け、エヘン虫などが頻発するようになりました。
逆流性食道炎は、今では症状は収まってますが治ったわけではなく、缶ビール350mlぐらい飲むとエヘン虫が出ますし、ご飯茶碗一杯ぐらい食べると不快感が出ます。
少なくとも私には健康な食事法ですね。

長鎖脂肪酸代謝異常症
これって不幸(?)にも人類の糖質摂取過多の食生活に順応しちゃったってことなのかな~って思いました。

糖質さえ食べていればエネルギーは足りる訳でしょうし・・・

いろんなタイプの人がいるっていうことで、自分が信じる糖質制限は他人に押し付けないっていうことを肝に銘じて生活していかなきゃいけないと思いました。
いつも良かれと思って説明してもちょっと引かれるので(^^;

どうしても自分の信じてる事を人にも勧めたくなるっていう気持ちはちょっと置いといて、まずは自分の健康が第一であり人それぞれなんだと頭の片隅に置いて生きていこうとw

そしてもし興味を持ってくれた人がいたらガーっと・・・w

ちょっと酔っ払いなので的外れなこと書いてたらすいません(^^;

先日はコメントに解答いただき、本当にありがとうございました。スーパー糖質制限を実践中で、血糖値の測定器で早朝空腹時、食後1時間後、2時間後と測定を続けています。わかったことは、糖質を摂取しなければ食後1時間後でも血糖値が120台で、ちょっと食べると(20グラム程度で)180㎎以上になってしまうということです。でもいろいろな情報の中から、血糖値の測定器の誤差もあるということがわかり、特に食後血糖値の誤差は空腹時よりも大きいと書いてあるサイトもありました。ちょっと食べただけで大きく血糖値が上がった時は誤差だといいなぁと一人で思った次第です。しかし、誤差でなければ明らかに上がり過ぎのようですよね。江部先生のブログに糖尿人で糖質1gにつき血糖値を3㎎上昇させると書いてありました。私のブドウ糖負荷検査の結果で計算すると、75gのブドウ糖が私の血糖値を最高で203㎎まで上げたので、203÷75で2,7㎎ということで、私は1gの糖質で2,7㎎血糖値が上昇するということになるのですよね?この計算であっていますでしょうか。それとも検査前の血糖値が108㎎だったので最高の203㎎から108㎎を引いて95㎎ですが、この95㎎を75gのブドウ糖が上昇させたということで95÷75の計算の方がいいのでしょうか。
すると1gの糖質で1,2㎎の上昇しかしないということになるので、わずか20gの糖質を食べただけで血糖値が180を超えるようなことにはならないはずです。どちらの計算の仕方が正しいのか教えていただけると嬉しいです。
あと、先生がご指導下さったSPIDDMの可能性も含めて、私が主治医に検査をお願いするものとしてグルカゴンの分泌、インスリン機能、抗GAD抗体、Cペプチドでしょうか。インスリン機能はブドウ糖負荷検査の時に分かっていますよね。それは尋ねてみればわかりますね。単純に糖尿の境界型ならいいのですが、その他の病気の可能性があるのではと思うので心配で先生にご質問をしたところでした。肝機能の数値が悪かったのも今どうなっているかわかりませんし、スーパー糖質制限を始めてから自己測定ばかりで病院に行っていないので、そろそろ行ってみようと思います。先生、アドバイスありがとうございました!
まだまだ寒い日が続きますがご自愛くださいませ^^
あ!どちらの計算方法が正しいのか、それを教えて下さると嬉しいです!

こんにちは。ここの所立て続けにブログがアップされていてうれしい限りです。忘れられないうちに近況報告させてください。

11月A1c 12%が発覚。発覚後すぐに糖質制限開始。
1W後、内服開始。

12月A1c、8%でメトホルミン3回/日から2回/日へ。

1月A1c 6.2%!!

昨日から減薬してもらいました。ジャヌビア中止でメトホルミンのみです。良かった―。先生も普通の人になりましたね、と。

また薬だけでここまで改善はしないから相当食事に気を付けましたね、と仰って頂きました。

2ヵ月後でも、という先生の言葉に油断してしまうといけないし、薬は早く辞めたいのでまた来月受診する事にしました、

今月は採血している暇がなくて次回受診前に採血して診察時にはその結果を元にまた評価してもらえればと思っています。

初回には (先)入院しましょう⇒無理です。
     (先)インスリン打ちましょう⇒嫌です。
     (先)内服・・・・⇒もう少し待ちたい。
     (先)内服が譲歩です!!

というやり取りがありました。でもお若い先生で私の意向も尊重して下さいます。ガンの可能性もありますよ、などサラッと
厳しい事も仰って下さり自分と向き合うよい機会となりました。あ、これは今後も可能性としてはありますけどね。

最近は血糖値測定もあまりしていません。
コストの問題もあり、同じような食事をしていれば大丈夫と思っています。一番はほろ酔いで図るのがめんどくさい(笑)

ワイン好きな私としてはチーズ・ナッツ・アボカドがOK食材で
ストレスフリーです。糖質の少ないチョコも毎日つまみとして食べています。あ、昨日は調子にのってチョコレート効○86%を1箱食べてしまいました(>_

恐ろしくて血糖値なんて測れませんです、ハイ。

コレステロールの問題を指摘されていますが、こちらのお薬は丁重にお断りして経過を見て行きます。前回158今回180

あまり細かい事仰らない先生なのですが、肝機能・腎機能の事が気になっていたのでお聞きしたら、抗GAD抗体の事は聞くのを忘れてしまいました。
やはり確認しておいた方がいいですよね。

もうひと頑張りしてみます。お薬は、、、自己責任で対応していきます(笑)お忙しい所長文失礼致しましたm(__)m

先生のブログを楽しみに拝見しております.
又、更新されて 嬉しいです

初めてコメントさせていただいています。
糖質制限に共感し、先生のブログを最初から読ませていただいている途中です。難しいことは解りませんけれど、先生のお言葉にひとつひとつ納得が出来てとても影響されてきています。
なんだかコメントしたかったのに、いざ書いてみると緊張してしまい言葉が出ません(汗)
ファンのひとりとして応援しています。

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糖質制限と病気

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carpincho3

50代の男性医師です。低糖質ダイエットを実践してその効果に驚き、このサイトを作りました。

連絡先はこちら↓
carpincho3blanco3@gmail.com 
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私のブログをまったく読まずに一方的に質問を投げかけるのはおやめください。 いただく質問の答えは、ブログ内の記事、あるいはコメントでのやり取りに記載されている場合が多いと思います。 量が多くて読むの大変だから、ということであれば、知恵袋などの質問サイトをご利用なさってはいかがでしょうか。 また、コメントへの返信やメールへの返信は「無償の善意の第三者」としてやり取りさせていただいているつもりです。 自分の家臣に問いただす殿様みたいな非常識な投げかけは、ときに無視しますので、あしからずです。 コメントやメールには医学的に間違いないようにお答えしたいと思いますし、急に忙しくなって対応できないこともありますので時間がかかる場合があります、ご了承ください。


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しかし一方で、記事一つ一つは、異なる人へ向けての異なるメッセージです。
すなわち、個別記事というものは、どういう人々に何を伝えるか、ターゲットを明快にして書くものだと私は考えています。
そういうところでいちいち、しかし、例外はあります、とか言って全ての人に配慮した注釈を付けると、読む側もメッセージがなんなのかわからなくなります。

したがって、読まれた方の立場次第では、その記事では自分の存在を無視されているように感じる、配慮が足りないと感じられる記載内容があり得ます。
その場合、その記事はほかの人に向けられた記事であると、スルーしていただけたらありがたいです。

よろしくお願いします。

ぽっちゃりも糖質も菊芋におまかせ ↑宣伝ヽ(´▽`)/
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