レッド・ミート(赤い肉)で心血管系疾患が増える理由
糖質制限の食事内容として牛肉と羊肉、そして豚肉などの赤い肉が増えすぎるのはよくなのではないか?
そう言う議論を以前にここでもしてみましたね。
⇒ レッドミートは食べすぎない方がいい?
確かに、統計で見ると赤い肉を食べる人では心血管系のイベントが多く発生している、ただ、理屈がわからない。
何かわからんけど心配な人だけ地中海式で食べる鶏肉や魚介類、野菜タンパク中心の食生活の方がいいんじゃないの?
そんな結論にしちゃいましたけど(笑)。
その理屈を説明してくれそうな研究報告が出ました。
Nature Medicineの2013年4月7日号に出ています。
その記事を紹介する編集スタッフ作成のニュースがこちらです。
Red meat + wrong bacteria = bad news for hearts
Microbes turn nutrient in beef into an artery-clogging menace.
Chris Woolston
07 April 2013
Lean steak is low in fat and cholesterol and high in protein ? qualities normally considered healthy. But eating a lot of it can still cause heart disease. Researchers have now laid the blame on bacteria in the human gut that convert a common nutrient found in beef into a compound that may speed up the build-up of plaques in the arteries.
http://www.nature.com/news/red-meat-wrong-bacteria-bad-news-for-hearts-1.12746
レッド・ミートの中に多く含まれるL-カルニチンを摂取させたときに、何かがそれをTMAOという、動脈硬化を勧める原因となる物質に作り変えている可能性がある。
L-カルニチンやTMAOの血中濃度と心血管系イベントの発生頻度の間にも相関がみられる、ということです。
そしてその傾向は、ベジタリアンなどの野菜中心の人達に比べて、肉をがんがん食べている人で強く出ている。
抗生剤を飲ませるとそれが消えること、それら二つの人達では腸管細菌叢が全く違うことから、腸管の中のバクテリアの比率がTMAO産生に大きく関わっていると考えられるというわけです。
どの菌がいけないかは同定されないまでも、肉食中心の人ではTMAOを作りやすいバクテリアが腸の中にたくさんいるのだと。
今回の研究結果から、どうしてレッド・ミートを食べすぎることが身体によくないかに、一つの可能性が提示されました。
こういうの示されると、糖質制限だからと焼き肉三昧を続けることは、ちょっと、考えちゃいますね。
あくまでも可能性であり、「レッド・ミートは食べるな危険!」というレベルのエビデンスではないのですけれども。
元論文はこちら
Intestinal microbiota metabolism of l-carnitine, a nutrient in red meat, promotes atherosclerosis
Robert A Koeth, et al.
Nature Medicine (2013) doi:10.1038/nm.3145
Received 07 December 2012, Accepted 27 February 2013, Published online 07 April 2013
Intestinal microbiota metabolism of choline and phosphatidylcholine produces trimethylamine (TMA), which is further metabolized to a proatherogenic species, trimethylamine-N-oxide (TMAO). We demonstrate here that metabolism by intestinal microbiota of dietary l-carnitine, a trimethylamine abundant in red meat, also produces TMAO and accelerates atherosclerosis in mice. Omnivorous human subjects produced more TMAO than did vegans or vegetarians following ingestion of l-carnitine through a microbiota-dependent mechanism.
以下略
http://www.nature.com/nm/journal/vaop/ncurrent/full/nm.3145.html
家畜の肉を毎日食べるということと、穀物を毎日食べるということ。
実はどちらも人間本来の生活からするとごく最近に起こった不自然な食生活習慣なんですよね。
家畜が「食肉家畜として飼育できるようになった」のは、人間が「農耕生活を営んで安定した食料生産体制が整って」からのことです。
もちろん、放牧しながら牧草を求めて移動を繰り返す人々は農耕文明開始以前からいたと思われます。
マーサイ族(マサイ族)の伝統的なライフスタイルなど、それが受け継がれていますね。
基本的に、彼らは放牧している家畜の肉を毎日食べることはしませんでした。
放牧している牛の乳と血液を主食としていたのです。
(客人が来た時にだけ、もてなしとして家畜を殺して肉をふるまいますが、めったにそれはしません。)
人間が、家畜をその肉を食べる目的で育て始めたのは、
「穀物による農耕文明が発達して糖質エネルギーという確実に食べることのできる安定した生産物の恩恵にあずかれるようになってから」
のことです。
その意味では、レッド・ミートを毎日食べるというのは、米や小麦を毎日食べるというのと同じぐらいに、人間にとっては新しい食習慣であった可能性があります。
だから腸内細菌がそれに対応しきれていない可能性はありますよね。
(元論文で実験に使われているのは「本来、穀物を主食としている」マウスですから、そのまま信じるには今一つですが、代替手段は難しいです。
おそらく肉食のヒヒあたりで実験するしかないと思います(^_^;)。)
「肉を食べると血が汚れる、だから動脈硬化になるんです!」
そういって玄米と野菜と少しの白身魚しか食べないような人達っていますよね。
あの方たちの言ってること、意味のある部分もあったのですね。
⇒ これに関してはまた別の記事でもっと面白い論文(2008年)について触れます 準備中
とはいうものの、「穀物というでんぷん質を毎日食べる」ということに比べたらまだ、「家畜の肉を毎日食べる」ことの方が我々本来の食生活には近かった。
牛や羊のような大型で足の速い草食獣の肉ではないにしろ、ネズミ、リス、鳥、イノシシ、そして昆虫や魚介類などの動物性タンパク質が旧石器時代の人類の主食だったはずですから。
⇒ 親指はなぜ太いのか? 準備中(準備中ばっかですみません)
レッド・ミートを毎日爆食している人はそれ以外のタンパク質を中心に食事を送っている人よりは心筋梗塞などになりやすい。
それでも、糖質60%の伝統的和食を食べて2型糖尿病を発症してしまうような人よりもはるかに健康。
というのが真実のように、私には思えます。
私の結論、
中年以降の現代人が食べるべきは糖質制限食です。
ただし、タンパク質や脂質はレッド・ミート中心ではなくて、鶏肉、魚介類、乳製品、植物(大豆やオリーブなど)から摂るようにするのがさらにベスト。
一言で言えば、
「糖質制限地中海食」
というのが一番安全で健康的なのだろうなと思います。
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この記事の大きな流れの中では触れませんでしたけれども、腸管で悪いものに変貌する物質に目を疑った人たちもいるんじゃないでしょうか。
L-カルニチン。
L-カルニチンが実は体に悪いなんて話、そのサプリメントを飲んでいる人たちはけっこうひきつる話じゃないかと思います。
一時期、ジンギスカン料理が流行った時にも、「羊肉にはL-カルニチンが多く含まれているからミトコンドリアが活性化されて脂肪が燃えやすいのだ!」という理屈で流行った部分もありましたからね。
その物質が実は摂りすぎると動脈硬化を引き起こしやすい可能性があるだなんて。
もちろん、今のところ、L-カルニチンのサプリメントをがんがん飲んでいる人が心筋梗塞を起こしやすいというエビデンスはありません。
逆に動脈硬化などを改善するという話もあるようですが、インパクトはあまり高くない。
少なくとも、肉を普通に食べている人が、さらに積極的に飲むべきだという理由は特に見つかりませんね。
スポンサードリンク 2013年4月11日 09:36 スポンサードリンク
カルピンチョ先生
私もこの記事、日本語版(短く簡略化されておりましたが)で読みました。
要はベジタリアンに対しての警鐘かな?程度の解釈をしておりました。
原文をサラリとお読みになれる先生には敬服いたします。
たかがL-カルニチン・されどL-カルニチン・・・
糖質セイゲニアンにとっては重要な意味がある、といままで認識しておりました。
私のようなほぼ高齢者は、自前のカルニチン産生能が低下していますので、レッドミートからの摂取が必要かと・・
まして糖質制限によって脂肪の代謝が亢進されているはずで、長鎖脂肪酸のミトコンドリアへの取り込みに必須の物質です。
それと、ヒストンの脱アセチル化を阻害しているのもカルニチンだとか・・・
糖質摂りながら、このサプリメントを使用しても全く意味がないのでは・・・
私、フレンチでは必ず羊ですねぇ。山羊の方がいいのですが、どこの店舗でも見たことがないです。
長寿時代の沖縄ではよく食べられていたそうですが(過去形-笑-)。
主治医を替えることにしました。
ガチンコ糖尿病学会派の専門医で、先日血液採取で伺ったついでに、メトホルミンの処方をお願いしたのですが、
「血糖値関係は正常値であり、極端な食習慣をしており、まして重大な副作用(乳酸アシドーシス-国内ではほとんど見られていないというのに-)があるので出さない!!」と叱られてしまいました(笑)。
タイムリーなお話ありがとうございます。
納得のいくものであればきちんと軌道修正してくださる、なんて優良ブログなんでしょう。出版社の方も見る目がない、、、、。
面白い記事がありました。
http://www.scienceplus2ch.com/archives/4431349.html#more
既に一万年以上前から火を使った調理で魚を食べていたようですね。一方で大型哺乳類は仕留めるのに苦労すると現代のハンターを描いた漫画「山賊ダイアリー」(目茶苦茶面白いです)にもあります。余談ですがヒグマになると火縄銃ではどうにもならず村田式ライフルが普及するまではトリカブト毒を塗った弓矢に頼っていたとか。
羊肉は客人に振舞うのと言うのはモンゴルでもそうらしいですね、美という字に羊が含まれるのはそのためだとも言います。
ただ日本人の場合どう考えても肉食不足の懸念が先に来るべきでしょうね。早くTPPで安い乳製品が来て欲しいものです。オージーやチリワインもw
Yamamoto_maさん
L-カルニチン食べ過ぎると心筋梗塞になりやすいかも、ってのは困った話ですね。
もちろん食後高血糖による血管障害の方がはるかに危険なはずで、糖質60%食べるか羊肉や牛肉60%食べるかの選択を迫られたら私は躊躇なく肉を選びます。
でも、魚と鶏と豆腐がメインになりそうです、これからもずっと。
山羊さんは、沖縄料理屋の山羊汁、あれはちょっと最初は臭いがショッキングでした。
まあ、我慢して食べてるうちに美味しいと感じるようになる私ですから問題ないんですけどね、山羊のチーズもけっこう好きだしな。
乳酸アシドーシスは別の薬剤では重大な問題になり、そのとばっちりでメトホルミンも長らく日の目を見なかっただけで、メトホルミン自体ではめったに起こらないというのは糖尿病学会専門医なら理解していると思うのですけどね。
とはいうものの、血糖値関係が正常な患者さんにメトホルミンを二つ返事で出してくれる医者はほとんどいないんじゃないかと思います、レセプトではねられそうですし。
関西で地震が!?
ルバーブさん
ありがとうございます。
でも、出版社の方のお話では、いくら詳しくても読むために知識の蓄積と理解力が必要な本は商業ベースに乗りにくいそうです。(あっさり言えば、売れないから赤字になる)
たとえて言うのはおこがましい話ですが、バーンスタイン博士の糖尿病の解決は素晴らしい本ですが、理解するのが大変だからなかなか売れません、そんなところでしょう。
そのうち、PDFファイルにして電子書籍としてマニア向けに売ろうと思ってますのでそのときはよろしく(笑)。
SLEEPさん
そうですよねえ。魚が主食で納得。
子どものころに石器時代の人々が大勢でマンモスに立ち向かっている絵を図鑑で読んだような記憶があって、それが記憶に刷り込まれていますが、石器時代の人が大型草食獣を簡単に捕食できていた、あるいはそうしようとしていたとは考えにくいです。
弓矢を作る技術が高くなったのは石器時代の終わりの方でしょうし、捕れたのは目いっぱいのサイズで日本にいる鹿ぐらいですよね。
TPPで安い肉が入るのは大歓迎ですが、動物性たんぱくは鳥と魚を多めに、レッド・ミートは意識して食べ過ぎないようにしていこうと思っています。←日和見カルピンチョ
カルピンチョ先生。お久しぶりです。
江部先生のところほかでは、このような議論にはならないようですが
ここへ来ると、ちょっと考えますね(笑)。
わたしは、牛肉はそんなにないのですが、豚肉には偏りがちなので
鶏肉の比率と魚の比率を高めようかと思いました。
えっと・・
一週間前に 遅まきながら自己血糖測定器を手に入れまして
今、やたらと、食事の前後で測りまくっています。
それでだいたい、自分のレンジがつかめて
食前 70~90mg/dL
今やってるスーパー糖質制限食では
食後1時間がだいたいピークで 110~130mg/dL
ときに2時間にピークが行くことが希にありますが
食後2時間では 80~100 mg/dL に落ち着きます。
で、昨日の昼、意識的に 糖質制限後はじめて
とんこつラーメン1杯、餃子3個
(おおよそ 糖質 85gか?)
食べて測定してみました。
驚きの変化でした。
食前 81
30分 177
1時間 224
1時30分 228
2時間 230
2時間30分 182
3時間 177
3時間30分 189
4時間 169
4時間30分 144
5時間 124
5時間30分 103
6時間 80
この様子はfacebookで公開してます(山口透)。
それでやっと血糖値下がったの確認して
家族と今度は居酒屋へ(笑)
ほとんどこの6時間後に次のもの食べました。
芋焼酎水割り一杯
アボガドとエビのサラダ
チーズしそベーコン巻き串1本
砂ずり串2本
豚バラ串2本
ねぎま串2本
それで
その食事中 78
食後30分 84
1時間 90
1時間30分 97
ここで約4km(50分)のウォーキング開始
2時間 67 (ウォーキング途中)
ウォーキング終了
2時間30分 86
3時間 101
そして 今朝おきて 92
これで考察するんですが
ラーメン餃子で 最高230mg/dLまで上昇したのはまあ
予想にたがわなかったのですが(ちょっとショックは隠せませんが(笑))
それより驚いたのは 6時間でやっと下降したあと
すぐにまた、今度は糖質制限の教科書的なメニューではあるのですが
それガッツリ食べたのに・・・
食後の血糖値がとても抑えられているということです。
これは、いつもの日常、糖質制限で分泌が抑えられているインスリンが
お昼のラーメン餃子で、遅れてどっと追加分泌されて
その後6時間過ぎて、機能性低血糖になっているのを
夕食の10~15g程度の糖質で少し上げて
このくらいの値になっているのでしょうか?
ウォーキング途中の 67 というのが・・・
測定誤差もあるとは思いますが・・・よくわかりません。
これが、機能性低血糖の底ということですか?
そのあとまた上昇して 86、3時間後に101に上昇しているのがまた・・・?
これで論文は書けませんが、
話題の一つにはなればいいと思って書きました笑)
今度は ビアガーデンの季節になったら
立場上避けられない会がくるので
その時は生ビール含む大量飲酒で
実践報告できるかもしれません(笑)。
それと、診療室でこれまだ秘密ですが
ちょっとデータ貯めていってます。
長々と失礼しました。
続けてで申し訳ありませんが・・・
またいつもの糖質制限な日々を続けといて
こんなことを、また半年後したら
どうなっているか?
耐糖能が推し量れませんかね?
同じような血糖値の推移なのか?
はたまた もっと悲惨なことになるのか?
逆に 血糖値の上昇幅が小さくなるのか?
toさん
詳細な観察記録ありがとうございます。
みごとですね、ほんとに見事です、糖質食と糖質制限食の劇的な差。
日本人なら糖質食べなきゃだめだと言い続ける方々に見せてやりたいけど、見たら、「この人には何らかの投薬治療が必要です。」とかいうんでしょうねえ(笑)。
糖質摂取後に食後高血糖が比較的長時間続いているように見える、特に3~4時間後の低血糖がないこと、糖質制限後にも3時間付近に血糖値が高いこと。
この二つを見ると、食事中のタンパク質由来の糖原性アミノ酸を素材にした糖新生がデータに反映されているように考えられますね、食事中のアミノ酸からの糖新生は、ピークが食後3~4時間付近に来る方が多いようですから。
糖質を食べない生活を続けているので、積極的に糖新生する肝臓になっているのではないでしょうか。
この推測が本当かどうかは素材別に放射性同位元素でラベルした食べ物を食べて追跡するしかないんでしょうけれども。
ウォーキング中の67はちょっと低いですね、筋肉でのGLUT4の発現ってそんなに効果が高いものなのかな?
そうすると私が先日prnさんに応えたコメントには問題ありかもですね。
糖質中心の食事の摂取後はできるだけ早く運動を始めた方がいいけれども、スーパー糖質制限の場合、運動は3~4時間後がいいのかもしれないですね、toさんの場合。
スーパー糖質制限食後、何時間からウォーキングを始めるのが一番血糖値をフラットに保てるのかという観察もやってみるといいかもですね。
私もやってみたいと思います。
toさん
それはぜひ、今後も検証されることをお勧めします。
バーンスタイン博士をはじめとする数多くの先達の観察したデータからすると、糖質制限を続けていれば、2型糖尿病の人の耐糖能(糖質負荷後の血糖降下能力)は徐々に改善してくるケースが多いようです。
「食後のインスリンサージがほとんどないから膵臓休憩できて、インスリンサージの機能が回復する。」
「減量により肥満をベースとした慢性炎症が改善するのでインスリン抵抗性が下がる。」
そう言うことから考えてので当然と言えば当然かと思いますが、でも、個人個人で結果は差が大きいでしょうからね、よかったら今度計測されたときにもぜひ教えてください。
(他人任せですみません、私もやらなきゃですね(^_^;)。)
ほぼ毎日、夕食後に50分程度のウォーキングをやってますから
すぐはじめるか?
1時間後はじめるか?(今はこのパターンです)
2時間後にはじめるか?
3時間後にはじめるか?
4時間後にはじめるか?
くらいに分けてやってみましょうか?
しかし、わたしの場合、夕食が20時ですから
カルピンチョ先生が至適時間と考えられているところが
23時か24時に来るのがつらいところです笑)^^;
toさん
あ、そっかあ、それは辛いですね。
1時間後か2時間後かぐらいの範囲で(^_^;)。
川の土手沿い・・・あそこは夜は暗くて危ないか。
いやいや、頑張ってみますよ。
tosan.s376.xrea.com/x/korobbs.cgi?mode.thread=1&res_num=0109
ここに書いていってます。
これは今日の分(今書いてる途中)
今夜は食直後~食後1時間の間にウォーキングしました。
食直後と食後1時間値がほとんど変わりませんでした。
明日は 1時間後から
明後日は 2時間後から
・
・
とやっていって何度か繰り返しますね。
toさん
深夜は気を付けてくださいね。
よろしくお願いいたします。
カルピンチョ先生、こんにちわ。63歳の糖尿人です。いつも誠実かつユーモア溢れるご発言に勇気をいただいています。もっと更新回数を増やしてはいただけまいかと、また、ぜひ、Kindle版で宜しいので、まとまったご著書を執筆いただけないかと、勝手な願いを持っております。今回初めてコメントというか、質問を差し上げます。お忙しいところを恐縮ですが、宜しくお願いします。
今年の2月に急性心筋梗塞で某大学病院に入院し、手術と診察の結果、立派な糖尿病とのご託宣を受け、しばらくはインシュリンと大量の飲み薬、そしていわゆるカロリー制限食で過ごしてまいりました。しかし一向に改善されず、色々と調べた結果、糖質制限食に巡り会い、3月中旬から思いきって実施、今に至っております。
おかげさまで体重は5キロ減じ、BMIは26が23に、血糖値もHbA1cで12.6→9.2→6.0と改善され、他の検査数値も問題のないレベルになりました。しかしただひとつだけ、中性脂肪が気になるのです。以前は130ぐらいだったのですが、先回の検査結果では300ぐらいになっていました。医者は、それみたことか、脂質の多いものを摂りすぎているからだとし、早く炭水化物をたくさんとって、肉やオリーブオイルやチーズを減らし、バランス良いカロリー制限をしなさいと、やや恫喝的に申します。
特に大食いというわけでもなく、どちらかといえば肉よりも魚、総摂取カロリーも一日当たり1800ぐらいに収まるのですが、やはりタンパク質と脂質の比率は多いです。というか、糖質制限の場合はこれが正解と思っておりました。そこへ今回の中性脂肪の値です。検査時の中性脂肪の値は前日の食事が脂こいものだとモロに反映するので当てにならないという方もおられるのですが、そうなのか? 「血液ドロドロ」のまま、高脂肪の糖質制限を続けて行って良いものか、いささか逡巡しております。カルピンチョ先生は、脂質制限(?)のようなものをなさっておりますか? なにかご指導をいただければ幸いです。
kosugeさん
糖質制限の成功おめでとうございます。
無知な医者の言うことを鵜呑みにせずにご自分で判断されたことが良い結果につながりましたね。
中性脂肪ですが、一回だけの測定はあてになりません。
おっしゃる通りに直近の食事内容が反映されますし、アルコールを摂取した後も上がります。
私自身の経験としては、健康診断と、定型的に受診している整形外科(高尿酸血症)で検査日が二日と開かなかったことがありました。
健康診断では前日夜9時以降は水以外飲食せずに、朝食も抜いて計測したら正常値の低目でありながら、その二日後の平日の夕方に整形外科クリニックに駆け込んで計測したら250オーバーということがありました。
前の晩にベーコンをつまみにウイスキーをダブルで2杯飲むという「おいた」をした結果がきれいに反映されていたかと。
そんなもんです。
LDL、HDLはいかがでしょうか?
動脈硬化に関してはLDLをHDLで割ったL/H比が1.5を割るのが理想的、2.0を割れば許容範囲、という考え方があります。
血圧はいかがでしょうか?下がっていませんか?
けっきょくのところ、腎臓などへの負担を上げるのは血管の硬さと血圧であり、食事を反映した中性脂肪の数値ではないので、食事内容(お酒内容)に思い当たる節があるのなら今回は気にしなくていいと思いますよ。
血液検査での様々な数値のデータは日々、また時間ごとに変動するのが当たり前です。
中性脂肪は食事内容などの影響を受ける、日内変動のもっとも大きな検査数値の一つです。
糖質制限を続けていく場合、上がったり下がったりを繰り返しながら最終的に中性脂肪は低めに落ち着くと思いますから、日内変動は気にしないで取り組んでみてください。
血圧が正常で、L/H比が正常で、肝機能に異常がなければ、1回や2回の高値は気にしないでいいです。
気になるのは、ある程度以上の糖質をなお摂取していらっしゃるのではないかということです。
山田式の一食当たり20g~40gの糖質を摂取している場合、脂質摂取量には気を配る方がいいかもしれません。
なぜなら、糖質を20g以上摂取すれば確実にインスリン分泌と、肝臓などに取り込んだ糖質の脂肪への合成が起こり、同時に摂取した脂質は肝臓や脂肪細胞に入る余地なく、血中をさまようことになるからです。
血中のトリグリセリドは長い時間、高いままですし、行きつく先は霜降り人肉だったりします。
能登式のカロリー比で30~40%(糖質50g~100g)のなんちゃって糖質制限食ほどにはひどいことにはならないにしても、ちょっと注意が必要です。
ただし、前日の20時くらいから絶食して、晩御飯でアルコールも摂取してなくて、翌日朝に検査を受けたときにも中性脂肪の数値が高い。
それが2回以上続くようであれば食事内容に問題があるのかもしれませんし、何か別の問題があるのかもしれませんね。
(血圧が120/80以下でL/H比が2.0以下、肝機能が正常なら本質的には問題ないとしても)
カルピンチョ先生
ご丁寧な返信をありがとうございます。こちらからもすぐに返事を差し上げねばと思いながら、なんでもかでも先生に訊くのは失礼かと思い、私でも解ることは自分でまず調べてから、また先生にお伺いしようと、ただ今勉強中です。特にコレステロールについてなにか勘違いをしていたようです。というわけで、返信はもうしばらくお待ち下さい。
ひとつ、おそらく先生はすでにご存知かと思いますが、情報を。お目汚しならばごめんなさい。
例のレッド・ミート(赤肉)問題ですが、ご承知のようにハーバードの2013年論文は内外で注目され、色々なニュースサイトでも取り上げられております。このLiveScience のも同類なのですが、この記事で面白いなと思ったのは、このニュースサイトのコラムニストが論文の著者らに直接インタビューをし、低脂質高炭水化物ダイエットなどについての著者らのコメントを掲載していることです。
http://www.livescience.com/18996-red-meat-premature-death.html
"This paper does not give a green light to a low-fat, high-carb diet," senior author Frank Hu of Harvard School of Public Health (HSPH) told LiveScience. "Instead, it underscores the importance of types or quality of protein."
続く Low-carb vs. low-fat? では
Missing entirely from the new Harvard study is the word "carbohydrate." The study merely looked at different forms of protein sources and found beef and pork to be unhealthier compared with other sources. Both Hu and co-author HSPH colleague Walter Willett have said that added sugar in drinks and in snack foods as well as the simple carbohydrates found in potatoes, white flour and processed foods are the primary causes of obesity and diabetes.
Also, their previous studies have found that a moderately low-carbohydrate diet that includes healthy sources of fat and protein — such as olive oil, nuts, poultry, fish, whole grains and legumes — can better lower the risk of premature death from cardiovascular disease than low-fat, high-carb diets.
Therefore, if you go (or stay) in the low-carb direction, Hu advises that you choose your fats and proteins carefully. "All low-carb diets are not created equal," nor are high-carb diets, he said.
先生の言う「糖質制限地中海食」に近いのかなと。
では、またいずれ。
kosugeさん
興味深いサイトの紹介ありがとうございます。
いろいろ読まれているのですね、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
私、最近食べている動物性蛋白質は鶏肉が中心です。
主な理由は安いし、手に入り易いということですw
コンビニでは、たとえばローソンのグリルチキン、セブンイレブンの揚げ鶏など、衣のついていない皮つき肉が調理されて販売されているので重宝しています。
家には睡眠時間含めて6時間程度しか滞在しないのでほとんど外食しているのですが、ようやく糖質制限な晩ご飯食べようと思うと、終了間際の居酒屋チェーンか深夜営業の日高屋にかけこんで食べるしかないって感じになります。
それも面倒な時はローソンかセブンイレブンですね♪
理想の糖質制限地中海食を24時間出してくれるレストランがあれば幸せなんですけどねえ。。。
祝杯だァー
糖質制限食を始めて7ヶ月
市の健康診断で何も言わずに受診した結果が出ました
先生曰く メタボも無く 血液検査の結果は全て良好です
それに糖尿病の心配はありません(A1C=5.8 随時血糖=113)
因みに あえて同じ日に糖尿病の主治医の検査を受けました
その結果は A1C=6.2 これッて如何いう事??
ともかく 祝杯だァー 焼酎ハイボール飲むぞぉー
厚揚げ食うぞオー
糖質制限バンザーイ
たまには二日酔いになって見たい。
土屋
土屋さん
おめでとうございます!(*^。^*)
よかったですね~、完全正常化。
二日酔いになられたんでしょうか?
たまにはいいですよね。
って、糖質制限して蒸留酒飲んでるとなかなか二日酔いになりませんけどね~。
先生有難う御座います
糖質制限で肝機能が非常に良くなってしまい
飲んでも、飲んでも、酔わないし、二日酔いにも成らず
嬉しい悲鳴です。これからの目標は 糖質制限食を
近所に言いふらしながら散歩する事です。
土屋
土屋さん
ほんとによかったですねえ。
私も同じくウイスキーと焼酎三昧です。
でも、糖質よりははるかに肝臓に優しいとはいっても、アルコールも肝臓に負担をかけます。
飲みすぎには注意ですよ。
・・・これ、自分にも言ってます(笑)。
カルピンチョ先生
先生の記事の後に判明したことですが、赤肉のL-カルニチンは腸内細菌のエンテロタイプによって危険度が大きく異なり、バクテロイデスが優勢なタイプ1の場合はTMAOが作られにくいそうです。
うれしいことにエンテロタイプは低糖質、高脂肪、高蛋白の食事を続けているとタイプ1に変化するそうです。長く糖質制限を続けている人は赤肉やL-カルニチンや(ホスファチジル)コリンを多く摂っても安全らしいです。
その他に、エクストラバージン・オリーブオイル、赤ワイン、バルサミコ酢に含まれるDMB(3,3-ジメチル-1-ブタノール)にTMAOの産生を抑える働きがあるそうです。赤肉やL-カルニチンやコリンのサプリを摂取するさいには、これらの食品も一緒に摂ると良さそうです。そういえば日野原重明先生も大豆レシチン(コリン)を飲んでいるそうですが、オリーブオイルも一緒に摂取されていたと思います。
>OgTomoさん
>赤肉のL-カルニチンは腸内細菌のエンテロタイプによって危険度が大きく異なり、バクテロイデスが優勢なタイプ1の場合はTMAOが作られにくいそうです。 うれしいことにエンテロタイプは低糖質、高脂肪、高蛋白の食事を続けているとタイプ1に変化するそうです。
・・・ああ、なるほど、そういうことがあるのですね。
これまでに出てきた糖質制限や肉食を批判するような研究はすべて「糖質からカロリーの60%を摂取しているような人々」におけるデータだと考えて良さそうな気がしますねえ。
詳しい情報どうもありがとうございます。
初めまして。最近自分の妊活と健康、子供の食育のため糖質制限を始めました。29歳女です。肉魚チーズナッツ類が好きなので自分にぴったりな食事法だと思っています。しかし、牛肉豚肉に関しては焼く事でトランス脂肪酸ができ、炎症反応を高める為とらないようにおすすめしている本を読んだ事があったので沢山食べて良いのだろうかと不安に思っていました。(『がんに負けないからだをつくる 和田屋のごはん」 』和田洋巳著)糖質制限を徹底してやり、たまーに機会があれば牛肉もいただく事にします。また、もう一つ不安に思っている事があります。上記の本に乳製品をとる事でがんを育てるとかいてあったので、糖質制限食でチーズを積極的に取っても癌に関して問題ないのだろうかという点です。牛乳には多くのIGF-1が含まれており、これはがんを増殖させるmTORを活発にしてしまう。IGF-1を含んでいる乳製品をとる事でがんを育てる働きに、関与している考えられるとかいてありました。江部先生の糖質制限に関する本や宗田先生のケトン体の本には糖質ががんのエサになるから糖質制限はがんにも良いという趣旨の事は書いてあっても、チーズとがんの関係性に関して触れてる箇所が見当たらなかったので、こちらでカルピンチョ先生のご意見が伺えればと思いコメントさせて頂きました。昨年義理姉が31歳で癌で亡くなったので、がんにならない食生活を身に付けて続けていきたいと思っています。お時間ありましたらご回答いただければ幸いです。
Mariさん
どんな食べ物にもメリットデメリットはありますし、人の体は全部違うので、すべての人に安全な食事法というものは存在しないと思っています。しかし人間は何かを食べて生きていかなければならない。これは一貫して、あ、いえいえ、このブログを書き始めて途中から思って言ることです。
チーズの成分や牛乳の成分が特定のがん細胞の発育によくないという論文などはあります。
いま書いている内容にかぶるので詳しくは書きませんが、精製した糖質が最も良く無いと思いますが、プロセスチーズなどもよく無いと思います。(そもそも家畜の乳は家畜の子供に飲ませるための栄養ドリンクであって人間の大人が積極的に摂取すべきものではありません。)
ただね、人間は、ほかの哺乳類もそうですが、ほかの生物やその分泌物を食べて生きています。それはある程度のリスクも承知の上で生きるために摂取してきたわけです。それに適応した体の変化も起こっています。しかし現代社会の変化のスピードはそれをはるかに上回るスピードで今進んでいるので・・・
これ以上は今は書きません。
ともかく、チーズには悪い面もあります、絶対安全だとは申しません。でも、それはすべての食べ物がそうです。
限りなく安全なのは、ナトゥーフ期などの狩猟採集生活の黄金期の時代の自然の食べ物を食べているお母さんの母乳、ということでしょうか。