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癌と糖質制限について


<癌に対しての私の考え方>


癌に対してどう対処するべきか

私自身は、これまで、癌の方やその身内、友人からメールや非公開コメントで相談を受けた場合、糖質制限だけでがんを治療しなさいなどとは、これまでに一度もお勧めしたことはありません。

糖質制限は好ましいライフスタイルとしては勧めるけれども、がん治療法として、一定の効果が認められている確立した治療方法があるのであればそちらを優先して実践することをお勧めしてきました。

手術にせよ放射線にせよ分子標的薬服用にせよ、既存のがん治療法と、食事療法としての糖質制限を併用して治療に取り組むことをお勧めしてます。


癌は手ごわい病気であり、ありとあらゆる方法を駆使して、なだめすかしながら付き合っていく病気だと思っています。

医者としてももちろんですが、身内のがん患者の経過を見ていてもそう思います。

一筋縄で抑え込める病気ではありません。


考えうる限りの方法を選択肢としてあげて、組み合わせた総合戦略を考えて、しつこくしつこく取り組むべき病気だと思っています。

癌の様子が変わってきたら、別の組み合わせを考える、一生続くもぐらたたきのようなものです。

もちろん、最優先すべきは自分の望むQOLを維持できる治療方法の範囲でそれを選択することです。

生きていても病院のベッドに縛り付けられ続ける人生に意味はないと思います。


いずれにせよ(既存のがん治療と併用するにせよ、しないにせよ)、

「糖質制限は癌患者の食事スタイルとしてはベストである。」

私自身は、これを確信しています。

「糖質制限食を続ければ、生理的な血糖値が食事に関係なく維持され続ける」

からです。


しかし、がんの治療にどう取り組むかは最終的には個人の判断です。

放射線治療や抗がん剤治療などの現代医療に不信感を抱いた人に、それを抱いたままでそれらの治療を受けるように強く押し付けること、私はようしません。

You  can  take  a  horse  to  the  water, but  you  can't  make  him  drink.

基本はこれです。


だから、どんな選択肢であってもその人の意志を尊重したいと思っています。


仮に、不満を抱いたまま、人に言われたことに従って、望まない結果を得たとしたら。

そう強要してきた人に対してだけでなく、それを跳ね返せなかった自分にも悔しい思いを抱きます。

でも、自分の頭で考えて決めたことなら、たとえ間違っていたと後で分かったとしても、後悔はしませんから。。。


個人的には、QOLをそれほど損なわない有効な治療法が目の前にありながら、それに取り組まずに放置するというスタンスには反対ですけどね。

理論的な理由はいくつかありますが、それはまたいずれ。




<補足事項>

がん患者さんが食事療法として糖質制限を実践するにあたり、注意点を追加します。

わずかな低血糖状態でさえも癌には良くないのかもしれないという、武田氏の危惧を考慮してのことです。

これ、糖質を60%も摂取している人こそ、気にしてほしいことではあるのですが(糖質を食べるたびに高血糖と低血糖が発生するのですから)、
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/cat6/post_204.html

糖質制限していても、いくつかの条件が合わさると低糖質状態が誘導される危険性がありますので。

(あくまでも理論上の注意点であり、実験データを伴うものではありません)


糖質制限でも、飲酒などと絡むと以下の問題点がありえます。

1.糖質制限しながら、常習的にお酒をたくさん飲まれている場合は「糖新生ブロックによる低血糖」が起こりえます。
低血糖を回避するために、飲酒は控えめにしていただくか、飲酒前に糖質を少量摂取していただきたいです(どのぐらいがいいかは個人でトライアルしてください)。

2.糖質制限しながら筋トレや長距離走などにいそしんでいる方はグリコーゲン貯蔵量が少ないので、飲酒時には低血糖につながりやすい可能性があります、この場合も飲酒前に糖質を少量摂取してください(こちらも至適量は個人差が大きいと思います)。
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/cat13/_fat_adaptation.html

3.糖質制限しながら、肝臓に負荷の大きい抗がん剤などを服用している場合にも、飲酒時と同様の「糖新生ブロックによる低血糖」が起こりえます。
肝臓に負荷をかけるすべての行為でそれは起こりえます。
この場合も、低血糖を引き起こさない、しかし食後高血糖を引き起こさない範囲での糖質摂取を考えてみる必要があるでしょう。


さらに、低血糖に注目して考えると、別の問題点もあります。

4.ストレスがかかり続けている状況で働かれている方の場合、副腎皮質ホルモンがしばしば放出されて過剰な糖新生が起こり、それを下げるためにインスリンが出て反動的な低血糖状態が頻繁に惹起されることも起こりえます。

5.喫煙などの毛細血管の血流を悪くする習慣、これもストレス行為であり、コルチゾールの分泌と血糖値上昇を招きやすいこと、それも糖尿病患者でそれが顕著であることが古くから報告されています。

Effect of cigarette smoking on the blood glucose level in normals and diabetics.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7455580

したがって、

ストレスの多い生活、

過度の飲酒やヘビースモーキングを継続していると、

せっかく糖質制限していても、しばしばそれを打ち消すような血糖値の乱高下が起こっているかもしれません。。。



これらの問題は、大局には影響を与えないような些細な問題なのかもしれませんし、あるいは意外に重要な要因なのかもしれません。

その人その人でケースバイケースで、一概にどちらともいえないと思います。

ですが、質問を受けそうなので、念のため、補足させていただきました。




まとめてしまうと、


1.癌に対しては既存の治療法を駆使して総合的に取り組むべきである。

2.糖質制限食は血糖値の乱高下を防ぐので、がん患者の食事方法としては最善の方法である。

3.アルコール摂取や肝臓に負担の大きい薬の服用などを伴う場合、肝臓での糖新生が阻害される恐れがあるので、糖質制限中であってもそれを補うだけの糖質を摂取するべきであると考える。
アルコール摂取は控えめに。ストレスがたまる仕事はできれば避ける。タバコは吸わない。
(仕事しないことや禁酒や禁煙そのものがストレスになる人はできる範囲で(;^ω^))


これが、私が癌治療に対して考えているスタンスです。

当たり前な内容でつまらないと思われるかもしれませんが、私だったら自分自身が癌になったらこうします。



実は、これまで、私の中では、1番目と2番目しかありませんでした。

3番目は今回、武田さんから頂いたコメントや、ほかの方々から頂いた非公開コメント、論文に関する情報、このブログでの読者さんとの過去のやり取りなどを考察して、今回、追加させていただきました。


このように考え方を論理的に整理させていただいたという点で、武田さんから否定的なコメントをいただいたことに、感謝しております。


心配して、非公開コメントをくださった方々にはもっと感謝。


さらに、すべてのブログ読者にひたすら感謝です。

この場を借りてお礼申しあげます、これからもよろしくお願いします。


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2014年5月21日 00:30

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コメント(2)

カルピンチョ先生

ありがとうございます。

この記事を、胆管がんと戦っている知人に紹介させていただきました。

先生の、ニュートラルで科学的な記事に、いつも痛く感心しています。

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糖質制限と病気

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しかし一方で、記事一つ一つは、異なる人へ向けての異なるメッセージです。
すなわち、個別記事というものは、どういう人々に何を伝えるか、ターゲットを明快にして書くものだと私は考えています。
そういうところでいちいち、しかし、例外はあります、とか言って全ての人に配慮した注釈を付けると、読む側もメッセージがなんなのかわからなくなります。

したがって、読まれた方の立場次第では、その記事では自分の存在を無視されているように感じる、配慮が足りないと感じられる記載内容があり得ます。
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