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腎機能障害がある場合、糖質制限していいの?ダメなの?


「日本人2型糖尿病の人の4割には腎機能障害がある、タンパク摂取は腎機能に負担をかけるから、その人たちが糖質制限するのは危険である。」

と、誰かがテレビで言っていましたね、大げさだとすぐに反論を書いてしまいましたけど。

あのことについて、ちょっと詳しく書いてみます。


現実的には、この「日本人2型糖尿病の患者のうち、腎機能障害を持つ4割の人」の内訳はこういう比率です。


微量アルブミン尿のある糖尿病腎症第2期の人が32%

顕性たんぱく尿のある糖尿病腎症第3期の人が7.0%

腎不全である糖尿病腎症第4期の人が2.6%

人工透析を導入せざるを得ない状態の糖尿病腎症第5期の人が0.4%

Japan Diabetes Clinical Data Management Study 10
Yokoyama et al., Diabetes Care 2007, 30, 989-992

こちらは上記論文のPDFが読めます
→ http://care.diabetesjournals.org/content/30/4/989.full.pdf+html

具体的に数字の書かれたテーブルです
→ http://care.diabetesjournals.org/content/30/4/989/T1.expansion.html


合計すると確かに42%の人に微量アルブミン尿以上の腎機能異常が認められます。

ですが、この人たちが全員同じように厳密にタンパク摂取制限するべき段階にあると思いますか?



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「糖尿病の解決」の著者であるバーンスタイン医師は1型糖尿病を発症し、治療を受けていましたが年々症状が悪化していました、30代の時には死を予感しています。

しかし、小さな子供を残して死ねないという気持ちから方法を模索し、当時出たばかりの血糖測定装置を手に入れて試行錯誤の末、かなり厳しい糖質制限食を始めます。

それは、顕性たんぱく尿のある糖尿病腎症第3期に入ってしばらく経った段階でした。


彼の糖尿病合併症はそこから、糖質制限食と適切なインスリン投与で、劇的に改善していきます。

腎機能異常が全くない状態まで完全に復帰していますし、その後、44歳で医学部に入っています。

(糖質制限のおかげでインスリン投与量もその前の1/6まで減らせています。)


タンパク摂取量増加が腎臓にかけるデメリットを差し引いても、血糖値の乱高下を制御して末梢血管障害を改善するメリットの方がはるかに大きいのです。



もちろん、糖尿病腎症第3期の人全員がバーンスタイン医師のように改善するという保証はできません。

でも、少なくとも彼よりも軽い状態、糖尿病腎症第2期の人(全体の32%)にとって、糖質制限が危険だなんて、とても考えられませんよね。

糖質制限で微量アルブミン尿が一切なくなる可能性の方がはるかに高いと思われます。


ただし、さすがに腎不全状態や人工透析状態の人の場合には安易に糖質制限には取り組むわけにいきません。

タンパク質量、特に食事中の窒素量を厳密に管理する必要があります。

(人工透析中でも脂質メインの糖質制限が可能だという話がありますが、それは専門家の管理下でのみ実践可能な取り組みでしょう。)



ということで、腎機能障害と糖質制限の関係は、おそらくこう言うことができると思います。


日本人の2型糖尿病患者の0.4%が人工透析を受けていて、2.6%は腎不全状態にある。

この3%の人たちはタンパク摂取量を制限するべきであり、糖質制限に取り組む際には、糖質制限のことを理解した主治医の指導の下で、窒素量負荷を計算・管理しながら厳密に行う必要がある。

(この時期の人たちであっても糖質制限に取り組むことのメリットは、高血糖状態による血管障害を進行させない、インスリン投与量を減らすことでインスリンの副作用を軽くする、などです。)


顕性たんぱく尿のある糖尿病腎症第3期の7.0%の人たちは、バーンスタイン医師の提唱するような適切な糖質制限により腎機能が改善する可能性は高い。

もちろん、インスリン投与量を減らすことができる(この時期の人はけっこうな確率で投与しているでしょう)メリットもある。

しかし、3期と言っても個人により病態進行度は異なるので、主治医の指導の下に、こまめに腎機能検査を受けながら糖質制限を実践することが好ましい。


全体の32%を占める微量アルブミン尿のある糖尿病腎症第2期の人は、正しい糖質制限を実践することで、腎機能が悪化する危険性はほとんどないと考えられる。



そう、日本人の2型糖尿病患者のうち、糖質制限時のタンパク摂取量について注意すべき人は42%ではなくて、3%(多くて10%)しかいないと、私は思うのです。

ただしこれは私の推測であり、すべての人に対して糖質制限の安全性を保証するものではないことはお断りさせていただきます。

(深刻な肝機能障害や、特殊な脂質代謝異常症などが重複しているケース、加齢、悪性新生物の合併など、想定できる隠れた危険性までは排除できませんので。それはどんな治療方法であってもそうですけどね。)



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2012年11月 4日 09:55

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コメント(9)

糖質制限時のタンパク摂取量について注意すべき人は多くて10%ですか。

 江部先生はかつて透析療法中の人は糖質制限不可としていましたが、
 「腎不全で、透析はしておられない段階の糖尿人は、低タンパク食が標準であり、相対的に  高タンパク食となる糖質制限食は適応となりません。
   しかし、既に人工透析中であれば、腎不全でも普通人と同様ていどのタンパク質摂取がOK  となるので、糖質制限食も可能となります」としています。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2258.html
 おおむね、糖尿病腎症第3期までは糖質制限食OKとのこと。

 糖質制限の対象が広がるのは素晴らしいと思います。

クローズアップ現代のK先生は、理由がよくわかりませんが「糖質制限」がいやなようですね。

肝機能障害って、腎症みたいにレベルがないんでしょうか?

江部先生のコメントを「おおむね、糖尿病腎症第3期までは糖質制限食OKとのこと」
というように紹介しましたが、カルピンチョ先生が「第3期」について丁寧に説明されていますので、あらためて、江部先生のブログから関連記事を転載します。
 以下
**************************************
腎症第3期Aまでは、糖質制限食が可能と過去のブログで述べたのは、所謂EBMに基づくものではありません。

バーンスタイン氏は、35才で顕性腎症前期(第3期A)となった頃、SMBGで血糖自己測定をしながら食事療法を研究し、徹底した糖質制限食を開始しました。
尿中微量アルブミンの増加する「早期腎症期、第2期」より進行した、蛋白尿が出現する段階の「顕性腎症前期、第3期A」から、糖質制限食で回復しタンパク尿が消失します。

個人差も当然あるし、糖質制限食のコントロール・スタディなどはありません。従って、糖質制限食で尿中微量アルブミンや顕性腎症前期(第3期A)までなら、必ず改善すると断定したり保証することは当然できません。ただ、糖質制限食でHbA1c:5.8%未満くらいまでコントロールすれば、バーンスタイン先生のような経過をたどる可能性もありえると思います。

* 糖尿病腎症病期
第1期(腎症前期)
第2期(早期腎症期):微量アルブミン尿陽性
第3期A(顕性腎症前期):蛋白尿。1g/日未満。
第3期B(顕性腎症後期):蛋白尿。1g/日以上。
第4期(腎不全期):高尿素血症。蛋白尿。
第5期(透析療法期)

第3期A(タンパク尿1g/日未満)の段階までは兎も角として、第3期Bの段階(タンパク尿1g/日以上)の段階になると、糖質制限食も含めて治療に難渋します。

 ともあれ、できるだけ早い段階で糖尿病腎症を発見し、糖質制限食実践で血糖コントロールを良好に保つことが、現時点で最善の道と考えられます。
 *************************************
医学はどんどん進んでいますので、これが江部先生の固定的な見解ではありません。
また、文中にあるように、所謂EBMに基づくものではありません。
 主旨は、K先生のように、「糖尿病患者のうち腎疾患のある4割の人は、糖質制限食の対象にならない」という十派一からげの切捨てを許さないことです。

了解です。

「糖尿病腎症第3期Aか第3期Bの段階の患者さんで、血中クレアチニン0.83 eGFR 73.1 。糖質制限食で、血糖コントロール良好を保ち、何とか糖尿病腎症の進行をくいとめる或いは遅くすることを目指しましょう」
という話でした。   腎症が進むと大変ですね。

*************

 糖尿病が原因で、人工透析になった人の5年後の生存率は、約6割だそうです。
 合併症を発病する前に、早く『糖質制限食』に出会えればいいのですが。
血糖降下剤を服薬しても、HbA1c6.5以下の患者は、1/3。
 日本もアメリカも、戦前は炭水化物を20%以下にした糖尿病食だったのですが、
インスリンが1921年に発見され、50年代に降下剤が作られると、普通の食事を摂って良いだろうとのことで、どんどん炭水化物(糖質)量が増やされていったという経緯です。
 脂質が悪者にされた。
 歴史の歯車が逆に回ってしまった。

糖質制限で、世界で3億7千万人いる患者の大半は、良好な血糖コントロールが出来るだろうに・・・。

腎疾患,現在今日の数値
クレアチニン1.66 eGFR 33 アルブミン4.0 LDL-C193
中性脂肪167 尿素窒素40 尿酸6.9  Cys-C 1.84
U潜血+-0.03 尿クレアチン50 尿アルブミン判定料80
TP/Cr 1+0.03 アルブミン/CR 1+150
3ヶ月前までの徹底した食事制限の検診数値に比較して特に変わったことはHDL-C48が61に、LDL-C 122が193に、中性脂肪が75が167に、尿素窒素23が40に急に上がり始めました、45日前からバージンココナッツオイル50/cc/日とクルミ15g摂取、朝食抜き、糖質を50gに減、タンパク質は45gを120gに増、食パン昼1/4枚、夜1/4枚、野菜はココナッツオイル炒め生換算で300g穀類や果物その他含め極力糖質削減しています ヨーグルト少々
中鎖脂肪酸ココナッツオイル主体に糖質は減らしました、主治医の見立ては糖質制限が今現在の状態からどのように進むかわからない常識的には芳しくない方向に進みますと忠告されました、クレアチニンは平均しています、コレステロールが急に増えたことは中鎖脂肪酸であるバージンココナッツオイルがケトン体として消化されていないでしょうか、また上記のクレアチニン数値では糖質制限ココナッツによるケトンエネルギィーに頼るのは難しいでしょうか。

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