マジョリティとマイノリティと基準値と
最近、マスコミをにぎわせた話題に日本人間ドック学会の発表した新しい日本人の基準値の問題というのがあります。
基準値というのは、コレステロールにしろ血糖値にしろ血圧にしろ、健康な人なら標準的にここに入っているであろうという数値です。
これ、どうやって決めているかというと、
自覚的に特に問題がないと考えていて、
かつ、健康診断などの病院での診察でも病的な問題はない、健康だと判断された人たち。
そういう人たちの、「平均値±標準偏差の2倍」の範囲を基準値として決めています。
なぜならば、正規分布のグラフで考えると、その範囲にその集団の95%以上が含まれるからです。
100人中、95人が含まれているその範囲、その範囲を「標準的な数値の範囲」であると考えるわけです。
マジョリティが含まれる範囲の数値、それが基準値です。
日本人間ドック教会の新しい基準値がどうしてマスコミを騒がせたかというと、その数値の範囲が、これまでに人間ドック学会や内科学会が目標としていた数値とけっこうずれていたからです。
たとえば、かつては220以下にするべきとまで厳しくしてた総コレステロールの基準値の上限は男性の場合、251ということでした。
150万人の検査対象の中から、健康上、何の問題もないとされた1万5千人についての数値を採用したものですから、信頼性は高いと思うのですが。。
数値が世に出たところでマスコミが大騒ぎを始めて、
「前に言ってたのと全然違うじゃん!どうすんの!病気とか病気になるから治療すべきと判定されてた人の多くが実はしなくてよかったってことじゃん!」
ということで、病気の基準が変わるぞと大騒ぎになったんですね。
そしたらほかの学会から人間ドック学会への集団攻撃が始まりました。
他の学会からとことん攻撃された人間ドック学会からの最終報告は、「基準値は基準値であって、望ましい数値はそれぞれの専門家の学会が決めるからそちらに従ってほしい。」でした。
自他ともに「健康である」と認める人の95%が含まれる数値の範囲が、病気や、病気になりやすい範囲の数値とは違うのだという、なんだか納得のいかない説明で。
まだ喧々諤々やっております。
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詳しい数値はこちらにpdfファイルがあります。
新たな健診の基本検査の基準範囲 日本人間ドック学会・健康保険組合 ...
(Adobe PDF) - htmlで見る
www.ningen-dock.jp/.../プレスリリース用PDF(140409差し替...
新たな健診の基本検査の基準範囲. 日本人間ドック学会と健保連による 150 万人の メガスタディー. 日本人間ドック学会・健康保険組合連合会. 検査基準値及び有用性 に関する調査研究小委員会. 実行委員長. 渡辺 清明
様々な学会から抗議を受けたのでほかの学会が主張する守るべき数値と併記されているのが悲しいですけど、わかりやすいですね。
多くの学会基準ははるかに狭い範囲です、すべてに従うと、何も治療や生活指導の必要がない人というのは日本人全体の5%以下になるんじゃないかと個人的には思ってしまいますが、人間ドック学会の統計研究担当の方、それについての統計を出してみてくれないかなあ、無理かな(笑)。
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ところで、先ほどの正規分布。
あれ、中央の95%の人の数値が標準的であるとしたわけですが、何度も書きますが、あの集団全体が、自他ともに認める、病気のない、健康な人の集団なわけですよ。
つまり、両端の上と下の2.3%ずつの数値の人たち。
この人たちも、学会の基準を遠く離れ、統計学的な95%の範囲の外にあっても、健康なわけです。
自他ともに認める「健康だ」という人々、これは1万5千人以上の統計だったと思うので、4.6%とくれば700人ぐらいはこの両端に含まれるわけです。
この700人は、人間ドック学会が調べた基準値よりもさらに外にあるわけです。
でも、健康だと自覚しているわけです。
そして、診察してみても健康なわけです。
数値的にはマイノリティーだけど、何の問題も感じていなくて健康に元気に暮らしてるわけです。
それが、現実です。
それがまさしく「個性」なんですから。
この方々の多くは、「あんたは基準値の外にあるんだからこの薬を飲みなさい。」と言われたら、不愉快に感じるでしょう。
一つの検査数値に固執するのではなくて、総合的に診断して、トータルバランスで見て健康であるのなら、スタチンなんか無理やりのませる必要もないと私は思います。
いろんなことに関して、我々はこれを考えなくてはなりません。
糖質制限だってそうです。
おそらく、95%以上の人にとって見れば、糖質制限は良い結果しかもたらさないと思います。
でも、一般的な糖質制限が自分には向いていないと感じるマイノリティーの人は必ず存在します。
以前にも別の記事で書いていますが、これだけ朝から晩まで糖質を豊富に食べることができる現代社会であるからこそ、普通に生活できている人は一定の確率で存在しうると思います。
厳しい糖質制限ができない体質の人
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/cat30/post_176.html
糖質が今ほど当たり前に摂取できなかった15世紀ぐらいまでの社会であれば、大人になることもできずに亡くなっていたかもしれない人々が、現代ではなにも悩みなく生きていけている可能性はあります。
そういう方々(糖質摂取しないと具合が悪くなる方々)が、マイノリティーだと思いますが、いらっしゃるわけです。
マジョリティに対して情報を発信するときにも、我々はその存在に対してにつねに真摯であらねばならない。
5%の民は常に存在するのだと。
でも同時に、自分はマイノリティーだと感じている人たちも、また考えてほしい。
お互い様だと思うんですよ。
自分はマジョリティーの人たちとは違うんだ、ってこと、自分で分かっていたらそれでOKだと思うんですよね。
それが個性だと認識していたらそれで充分。
マジョリティに向けて発信されている情報のひとつひとつをチェックして、そのすべてに、自分たちへの配慮がされてないからと言って違和感を覚える必要はないと思うのです。
その情報発信元のコンテンツをトータルバランスで見るべきで、個別記事に噛みつく必要はないと思うのです。
むしろ、ユニークであること、それこそが自分の個性であること、そしてそれを自分はわかっていること。
ほこりに思って我が道を行けばいいんじゃないかと思うんです。
要らん世話ですな。。。
<記事末の注意書き>(2014年5月22日に掲載したものの再掲です。少し削ってます。)
読者の皆様へ
個別記事により、マイナーケースに配慮の足りない記載内容があり得ますが、論拠を明瞭にするためにすべてのケースの方々に配慮しての注釈は行っていません。
人はそれぞれ遺伝子が違い、環境が違い、そのアプローチに挑むときの年齢や健康状態も違うのですから、同じことをしても同じ反応が出ないのは当然のことだと思います。
従いまして、糖質制限に限らず、ここで議論にしている医療行為や健康方法が自分の場合にはその通りに該当しないと憤慨なさる方もいらっしゃるかもしれません。
すべての方に同じことは起こりえないということ、人はそれぞれ違うということ、当然の現実です。
私も、最も重要に思っていることです。
そのことについてすべての記事で配慮して毎回必ず言及するべきだと思っていらっしゃる方もいるかもしれません。
しかし、個別記事というものは、どういう人々に何を伝えるか、ターゲットを明快にして書くものだと私は考えています。
すべての文章に対していちいち、「ただし、例外的事例があります、例えばこういう方ではこう考えるべきで、」などという断り書きを入れると、メインメッセージはあいまいな混沌としたものになると考えます。
入れた方がいいと思う場合は入れますが、記事のメインターゲットの方々にメリットにならない議論であると思う場合は入れません。
すなわち、ターゲットに対して、より強いメッセージが重要だと思った時ほどノンターゲットへの配慮は少なくなります、申し訳ありませんがこれは変更しません。
記事一つ一つが、異なる人へ向けての異なるメッセージです。
これらのことを念頭に様々なコンテンツを読んでいただけますと幸いです。
糖質制限がうまくいかない人は明らかに一定数存在しますし、その方々の存在を否定するつもりなど毛頭ありません。
その方々に向けて、個別記事で、糖質制限がうまくいかない方々についていくつかの記事を書いています。
今なおたくさんの症例、可能性については細かく言及できていませんし、永遠に完全に言及しつくすことなどできないと思いますが、できるだけ様々なケースについて、折に触れて追加させていただきます。
サイト全体を見渡してとらえていただき、個別記事に感じる独断や偏見を容赦していただけましたら幸いです。
カルピンチョ拝
<2014年5月22日以降にアップした記事からしばらくは、この注意書きを巻末に添付させていただきます。一定期間、記事末に掲載したのちにサイドバーにこの注意書きを転載させていただきますことご了承ください。>
カルビンチョ先生
対策、うたれたんですね!
ナイス!!です。
コレステロール。そういうことでしたか・・・
皆さんブログで騒いでいました。
納得です。
キャッツさん
お騒がせしました。
わたしも、もうちょっと余裕がある対応ができるべきであると思いつつ。