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肝機能異常が何年も続いているけれど、自分は糖質制限していいのか?


いくつか前の記事、肝硬変などの人は糖質制限してはいけない、の続きです。

自分は肝機能異常がすごく進んでいるように思えて、自分は肝硬変になっているのだろうか、それともまだ肝硬変とは言わないのだろうか?

糖質制限できるのか、できないのか?

心配された方がいたかもしれないので、具体的な指標など。



肝硬変なのかどうかを判断する基準ですが、肝障害度分類というものがあります。


肝障害度(liver damage)

臨床所見,血液生化学所見により3度(A,B,C)に分類する。
各項目別に重症度を求め,そのうち2項目以上が該当した肝障害度をとる。

項目                   A      B         C
腹水                  ない    治療効果あり    治療効果少ない
血清ビリルビン値(mg/dL)     2.0未満    2.0~3.0    3.0超
血清アルブミン値(g/dL)      3.5超    3.0~3.5    3.0未満
ICG R15(%)         15未満    15~40     40超
プロトロンビン活性値(%)     80超    50~80     50未満

注:2項目以上の項目に該当した肝障害が2ヵ所に生じる場合には
高いほうの肝障害度をとる。たとえば,肝障害度Bが3項目,
肝障害度Cが2項目の場合には肝障害度Cとする

これは日本肝癌研究会が「原発性肝癌取扱い規約」でまとめた肝障害度分類です。

本として出版されています。

⇒ 原発性肝癌取扱い規約―臨床・病理


別の評価方法もあります。

「Child‐Pugh分類」(チャイルド・ピュー分類)

血清ビリルビン、アルブミン、腹水の有無、肝性脳症の有無、プロトロンビン時間(肝臓でつくられる血液を固める作用をもつたんぱく質の検査)の5項目から肝臓の障害度を評価するものです。

            1点    2点     3点
肝性脳症         なし      軽度    時々昏睡あり
腹水          なし      少量    中等量
血清ビリルビン(mg/dl)    2.0未満      2.0~3.0    3.0超
血清アルブミン(g/dl)    3.5超      2.8~3.5    2.8未満
プロトロンビン時間(%)70超      40~70    40未満

Child-Pugh分類
A  5~6点
B  7~9点
C  10~15点

各項目のポイントを合計しその合計点で分類します。


これらのグレードについてはもちろん病院に行って検査して診断してもらうしかないですね。

でも、ここにひっかからなくても、自分で健康診断の血液検査データを見て、ある程度の推測はできます。


もっとも簡単な指標は、上の診断基準にもありますが、血清アルブミンの低下です。

ALTやASTなどの数値が長い間正常値をはるかに超えていて、かつ、血清アルブミンが4.0mg/dlを切る状態が始まったようであれば、よろしくないです。

(炎症などで一時的に落ちる場合もありますから1回だけであわてる必要はありませんけど。)


血清アルブミンの値が正常値下限を切るようであれば(検査機関によって異なりますが3.5~3.7mg/dlとされます)、肝硬変の可能性が高いと判断されます。

こうなると、自分で言わなくても職場の産業医や病院から促されて、ほかの検査もすることになります。

他の検査というのは、血清アルブミンだけでなく、総ビリルビン、プロトロンビン時間、コリンエステラーゼ、血小板、アンモニアなどの数値から推測します。


さらに、上に書いたようにICG排泄テストも診断基準の中に入ります

それに加えて超音波や上部消化管内視鏡で画像診断することも多いでしょう。

(内視鏡では食道静脈瘤の有無を視ます。)


で、それらのいくつもの検査データを重ね合わせて、医師が最終的な判断を下します。


以前は、肝生検をするのが一番確実と言われていました、肝臓の組織の一部を切りとってきて病理検査するということです。

これは出血が止まらなくなったり、気胸を起こすなどのリスク、ゼロではありませんからあまりお勧めできません。

医療側もそれはできるだけ回避する方向で検査基準が決められています。


と、いうことで、自分が肝硬変と言える部分に足を突っ込んでるかどうかは病院に行って尋ねてください。

事前に判断したければ血清アルブミンの数値を見てください(健康診断から省いている健保組合が多いですけどね。)。


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2012年12月 2日 13:22

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