糖質制限を始めたら、貧血傾向にあるようなのですが?
しばらく前に糖質制限をやっている方々からメールをいただきました。
糖質制限ダイエットを始めて快調に痩せているし、HbA1cも中性脂肪も肝機能も改善したということでした。
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友人は体重が4Kg減(67歳、166cmで69Kgに)、私は6Kg減(51歳、165cmで74kgに)となり、
友人は、HbA1cが正常値になり、血糖値も下がり正常になりました。
私の場合は、尿酸 8.5→7.9
総コレ 220→198
中性脂肪 355→152
γ-GTP 254→90
HbA1c 5.0→4.8
とこれらのデータはすこぶる良くなったのですが、友人と私、2人とも貧血気味になっています。
私の場合、RBC 435→411です。
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ということで、これ、実は私も気にしていたことだったのです。
私の場合こういう感じです。
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さて、貧血気味とのことですが、私も赤血球数は減りました。
でも、Hbはいったん下がったのがまた上がってきております。
(誤差範囲の増減かもしれませんけど)
Hbが15.8でRBCが513万だったのが、
実施2か月で
Hbが14.4、RBCは484万へと下がりました。
実施1年後には
Hbが14.9、RBCは439万となっています。
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このように、私の場合も糖質制限開始後にRBC数が減っています。
でも、貧血というよりは多血症気味だったのが改善したということなのではないかと考えました、なぜなら、正常値範囲内での変動でしたから。
そして、この多血症がなぜ起こったのか?
いろいろ考えたのですが、その方のメールの後半にヒントがありました。
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また、2人とも以前は夜半(2時ごろ)に時々目が覚めていたのが、まったく朝まで熟睡するようになりました。
(私は以前、マイスリーの5mg錠を時々飲んでいましたが、今は全く不要になりました。友人も同様です)
午後9時を過ぎるとすごく眠くなります。
これは、何か糖質ダイエットが関わっているのでしょうか?
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あああ!これって私も一緒です。
でも、私の場合はこれの原因を把握していました。
肥満していたころは寝ている間に呼吸が止まっていたのです。
睡眠時無呼吸症候群だったのが、糖質制限して痩せたら改善したのです。
そして睡眠時無呼吸症候群の合併症の一つに、多血症があります。
睡眠時無呼吸症候群というのは肥満での気道狭小化などによって呼吸が止まってしまうものです。
これは、呼吸はしたいけれどもできない状態なので、体は酸素不足に陥り、必死でそれを何とかしようとします。
すると、酸素欠乏性多血症になるんですね。
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酸素欠乏性多血症 Wikipediaより
空気の薄い高地での生活、慢性の閉塞性肺疾患や肺胞の異常などによる肺の酸素取り入れ能力の低下、心臓・血管などの異常による血流の不足、異常ヘモグロビン症、赤血球内の2,3-ビスホスホグリセリン酸塩(2,3-BPG)量の低下、常習的大量喫煙の一酸化炭素ヘモグロビン症などでは血液が運ぶ酸素の量が減少し、体組織は慢性の酸欠状態になる。
その結果、エリスロポエチン産出臓器である腎臓(および肝臓)が反応しエリスロポエチンの増産を行い、造血組織がエリスロポエチンの増加に反応し赤血球産出量を増やすことで血液の酸素の運搬能力を高めようとする。この酸素欠乏反応性の赤血球増加が酸素欠乏性あるいは低酸素性の多血症である。
この低酸素状態に腎臓が反応してエリスロポエチン産出を増やし赤血球量の増加をはかって血液の酸素の運搬能力の向上を目指すのが、マラソン選手が行う高地トレーニングである。肥満でも多血症は多く見られる。肥満の為に体が必要とする酸素を十分に取り込めないためであり、また睡眠時無呼吸症候群などでは起床時には低酸素症となるような要因がなくとも睡眠時に低酸素症が起きるために多血症は良く見られる。常習的大量喫煙では、煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンに結びついて一酸化炭素化ヘモグロビンになり、それは酸素運搬能力は無いので、肺でいくら呼吸しても低酸素状態になる。ヘビースモーカーに多血による赤ら顔が多いのはこのためである。一酸化炭素によるものでなくともヘモグロビンの異常によって赤血球の酸素運搬能力が低下すると同じ機序で赤血球は増加する。
この低酸素反応性の赤血球増加は酸欠の原因が解消されれば(低地への移住や原因疾患の根治、禁煙など)腎臓のエリスロポエチン産出も落ち着き、やがて多血状態も落ち着く。
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もちろん、食後高血糖がなくなってインスリンサージがなくなることの影響も否定できませんが、睡眠時無呼吸の縛りから解放されることが大きいように思えます。
これは昨日のせんださんのコメントからもうかがえます。
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また、血液検査の結果を確認していて気が付いたこと、
過去3回 2012/5-8 で RBC,Hb,Hc が H だったのが、
前回 2012/10 突然正常範囲になってました。
2012/6 >> 2012/10
赤血球数(RBC) 631 >> 529
ヘモグロビン(Hb) 18.9 >> 16.7
ヘマトクリット値(Hct) 56.6 >> 47.8
RBC が多いと、HbA1c が高めにでる???
初め、無呼吸や別の病気を疑われてました。
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中年でお腹がぽんと出てる男性の場合、肥満指数がそれほどでなくても「睡眠時無呼吸症候群」がある程度の割合で出る可能性があります。
それが、糖質制限で肥満が改善して、寝ている間に酸素不足に陥らないようになったから、多血症になってそれを補う必要がなくなった、ということ、十分に考えられます。
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逆に言えば、肥満があって、糖質制限でそれが改善して、かつ、赤血球数やヘモグロビンの値が減少した人の場合、
「睡眠時無呼吸症候群が改善して多血症から解き放たれた」ことの証拠である、という可能性もあります。
嬉しい発見ですよね♪
スポンサードリンク 2012年11月10日 14:02 スポンサードリンク
はじめまして
先日夏井先生のところでここを知りました。
65歳 BMI 22 DMです。
2年ほど前、HbA1c 8.7(旧) から糖質制限を開始し、現在5.1前後を維持しております。
確かに、糖質制限を始めてから直線的に赤血球の数値が下がって来てました。
現在規定値を下回り*印が付いております(笑)が、貧血の症状は全くありません。
主治医(悪名高き糖尿病専門医)はこのことに気づいておりません。
もともと肥満はありませんので、多血症はなかったと思いますし、睡眠時無呼吸症候群もありませんでした。
昨年からこの現象を考えておりましたが、こう考えております。
「糖質制限によりケトン体(3ヒドロキシ酪酸)増加 → エネルギー(酸素消費量の少ない効率の良いエネルギー源)として使用 → さほど赤血球を必要としなくなった」
と言う流れです。
因みに,現在の総ケトン体は2000μM/Lを超えております。
ヘモグロビンの数値は正常値です。
今年の春先より「なんちゃってケトン食」を目指して脂肪の摂取を大目にしております。
今後とも宜しくお願い申し上げます。
山本
山本さん
コメントありがとうございます。
なるほど、肥満していない人でも赤血球数は下がるのですか!
・・・となると確かにおっしゃる通りに睡眠時無呼吸症候群は影響を与える可能性の一部でしかなくなりますね、赤血球数が減るという根本的なメカニズムが存在するはずです。
現在、正常値とされている数値は基本的に「糖質60%の標準的とされる食事」をされている人たちの血液を調べた標準値です。
言い換えれば「高糖質食摂取者の平均値」なわけで、糖質制限している人たちの血液検査数値がそれと全く異なってもおかしくないわけですね。
まさしくケトン値がそうですね、人類の本来の食生活に従えば高くて当たり前だけど、現代の高糖質食者の平均からは外れているから、異常とみなされたりする。
人間が本来持つべき赤血球数はもっと少なくてよいのかもしれません。
おもしろい♪
はじめまして。先生と同年齢京都市在住主婦です。いつも理論的でわかりやすく且つ面白い記事をありがとうございます。更新を楽しみにしています。
3年半前に夫の2型糖尿病が発覚。いろいろ調べ本を読み「糖質制限をします。」と夫に宣言しました。料理を作るのは私ですから。そして高雄病院に電話したら、1ヶ月後の江部先生の予約が取れました。
当初のHbA1c 7.8(旧)から6.7に、3ヶ月後にはHbA1c5.5、体重は10kg減少し、BMIは23になりました。薬は使っていません。多少の変動はありますが維持しています。
私の体重は3kgしか減りませんでしたが、元々BMI21.5ですからね。水分が抜けただけかな。健康診断で引っかかる項目はなかったのですが、いろいろ改善しました。まず花粉症の症状がほぼ出なくなった。冷え症だったのが今はポカポカ。食後の胸焼けがなくなった。皮膚が乾燥して出る痒みがなくなったなど。
9月に受けた血液検査で総コレステロールは210ありましたが、LDL/HDL比が0.9なので問題ないかと。中性脂肪は60。HbA1c5.0(NGSP)
私は酒好きで甘いものが苦手、アテが沢山並ぶ食卓が好きなので糖質制限に何の抵抗もありません。以前から夕食にはご飯を食べていません。でもビールを飲んでたんです。夫は酒も好きだし、お菓子も好き。麺も大好き。
夫の身内は糖質制限にあまり良い顔をしませんが(義母は合併症で苦しんで亡くなったのに)これからも続けていきます。遺伝的素因を持つあなたたちもしたらといっても聞いてはくれません。
愚痴っぽくなりすみません。
京都は時雨れています。寒くなったのでご自愛ください。
松尾さん
コメントありがとうございます。
見事な糖質制限ですね、ご主人の病気を奥さんが治されている、素晴らしい事例です。
糖質制限での様々な効果についても書いてくださってありがとうございます。
花粉症の改善、冷え性の改善、逆流性食道炎?の改善、皮膚バリアのコントロール改善。
どれも素晴らしい効果ですよね、そして現代医療がどうしようもできなくて、なんとかしようと右往左往している症状でもあります。
そういうさまざまな症状が改善するのって素晴らしいです。
そして検査データもばっちり。
(おそらく、ですけれども、糖質制限している人たちの標準データというのは、現代の医療検査データの標準値とされているものといろいろとずれているのではないかと思うのですよね。それを考えた上でもなお現代の標準データの範囲内というのがまた素晴らしいですね。)
と、医者らしく回答したところで、いちばんうれしいのはここですね。
>アテが沢山並ぶ食卓が好きなので糖質制限に何の抵抗もありません。
最高にすばらしい(爆)。
飲んべさんにとって最高の食事療法です、いやほんまに。
早速お返事をいただきありがとうございます。嬉しくてまたお邪魔しちゃいました。
「アテ」は方言ですが先生には雰囲気をわかっていただけると思い使いました。
私は子どもの頃父親から「ご飯はいいから、おかずを食べなさい。」「タンパク質をとりなさい。」とよく言われていました。カレーライスや丼物などで済ますことは許されませんでした。
父は86歳ですが、ステーキもトロも揚げ物も食べます。入れ歯もありません。ほとんど白髪もありません。
たぶん10歳以上若く見られるかと思います。
室井摩耶子さんの記事にもありましたが、動物性タンパク質と脂肪が好きな人ってお元気ですよね。
もちろん高糖質なものは食べないという前提で。
松尾さん
素晴らしいお父さんですね。
うらやましいです。
私の父も今年で86歳なのですが、だいぶん枯れてきました。
残念ながらほとんど糖質しか食べません(笑)。
でも、膵臓が強靭だったと見えて、HbA1cも80過ぎまで正常値でした。
(現在はちょっとだけ高めです。)
といっても食事量が少ないんです、日本糖尿病学会の先生が大喜びするようなごく少量です。
ご飯を軽く一膳、あとはお漬物と焼き魚をちょんちょんと突っつくぐらい。
摂取カロリーにしたら一日に800kcalくらいしか食べてないんじゃないかなあ。
ほとんど運動もしないで椅子に座ってテレビを見たり転寝したり家族とおしゃべりしたりで過ごすので、それで十分なんでしょう。
逆に言えば日本糖尿病学会の目指す厳しいカロリー制限の糖尿病食というのは80過ぎの痩せたお爺さんの生活を保つのにちょうどいい構成になっているというわけですね。
ほんとうは糖質制限してほしいのですが、80過ぎてから生活習慣を変えるのは逆にQOLを下げてしまうと考えて強くは言ってません。(私がご飯を食べないで痩せて元気になった理由を説いても、「そうね、若返ったからよかったね」と、にこにこ笑って見ているだけです。)
ともあれ、親が元気でいてくれることはありがたいことですね。
私も若く見られるじいちゃんを目指します。