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先天的に糖質制限がつらい人は100人に1~2人いるかもしれない


以前にも書きましたが、生まれつき、糖質制限がうまくできない人というのはある程度の確率で存在するのかもしれないというお話。

それについて、もう少し数字を上げて考えてみようと思います。

原理的には簡単な遺伝学のお話です。


仮定の話が重なるので、中学校の理科のメンデルの法則の授業がよくわからなかった人はスルーしてください。


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日本人長鎖脂肪酸代謝異常症

代謝疾患分野
長鎖脂肪酸代謝異常症(平成22年度)
ちょうさしぼうさんたいしゃいじょうしょう
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http://www.nanbyou.or.jp/entry/790


1. 概要

脂 肪は空腹・飢餓時に糖に代わるエネルギーとして利用される。従って長 鎖脂肪酸代謝異常症は、空腹・飢餓時に突然発症することが多く、極端な場合はライ症候群や乳児突然死症候群として発症する。診断後は、L-カルニチンの補 充や、空腹を避けるなどの簡単な生活指導により無症状に経過する者も多く、最近はパイロットスタディーとして行われているマス・スクリーニング対象疾患に も組み入れられており、発症前に見つかった患者さんの多くは良好な経過をたどっている。


2. 疫学

日本において毎年10-50人の新患が発生。



ここでは、年間10人から50人の新しい患者さんが発生すると報告されています。

仮に、毎年30人の新しい患者さんが発生するとします。

日本の年間出生数はおよそ100万人ですから、30/100万、10万人に3人程度発生する疾患だと仮定することができます。


これが常染色体劣性遺伝形式で発生する遺伝病だと考えましょう。

(常染色体劣性遺伝というのは、劣性遺伝子二つがあわさった時に形質が出る遺伝形式のことです。

たとえば、くせ毛Aという遺伝形質が優性でAという遺伝子にコードされ、直毛aという遺伝形質が劣性でAの遺伝子配列の一部が変化したaという遺伝子にコードされた場合、

くせ毛Aaの両親から半分ずつ受け継いだ遺伝子の組み合わせがAAとAaとaAのときはAの形質(くせ毛)が出て、aaの場合にだけ、aという形質(直毛)が出るというものです。)


-------------------
血液型でたとえれば、O型ですね。

赤血球表面に多く発現するABO抗原を考えてみた時に、A抗原とB抗原は配列の異なる日本の糖たんぱく遺伝子ですが、O型はその両方の配列を失った短いタイプの糖たんぱく遺伝子です。

AA型とAO型はA型の形質を持ちます。

BB型とBO型はB型の形質を持ちます。

O型の形質(抗原を持たない)が現れるのはOO型を受け継いでいる場合のみです。
-------------------


そうすると、両親はそれぞれ同じ遺伝子のヘテロ保因者です。

このヘテロ保因者は集団の中にどの程度の頻度で存在するかを逆算して考えることができます。


両親からそれぞれ劣性遺伝子をもらう確率は1/2ですから掛け合わせると劣勢のホモの患者さんが生まれる可能性は1/4ですから

10万人に3人の4倍の割合、つまり、2.5万組に3組の割合でヘテロ保因者同士の組み合わせが発生することになります。

掛け合わせて3/25,000になる確率でヘテロ保因者が存在することになります。

25,000/3=8,333の平方根を求めると、およそ91.3です。


すなわち、長鎖脂肪酸代謝異常症の患者さんのご両親はその原因遺伝子に関してヘテロですが、その割合は91人に1人で存在する、ということになります。

91人に1人は、この病気を引き起こしうる劣性遺伝子を持つヘテロの保因者である、ということになります。

通っていた学校の同じ学年に1~2人は絶対いそうな確率ですね。


その劣性変異が欠質変異だと仮定すると、そのヘテロの保因者の方は、長鎖脂肪酸代謝に必要なある遺伝子が他の方の半分しかない方であるということになります。

糖質を60%摂取している社会においては、そういう人には異常は顕在化しないものと思われます。

しかし、糖質を10~20%程度の摂取にして、糖質制限した場合には、脂肪をたくさん代謝しなくてはならなくなるので、その遺伝子が半分しかない場合、代謝障害が顕在化する可能性が否定できません。


つまり、91人に1人ぐらいは長鎖脂肪酸代謝に必要なある酵素が半分しかないがゆえに、糖質制限すると、エネルギー代謝がついていかないので体調が悪くなる可能性が(理論上は)ある、ということになります。


長鎖脂肪酸代謝に限らず、様々な酵素が複数のエネルギー代謝系には関わります。

そう考えると、100人中1~2人は、糖質制限の実践が体質的に難しいかもしれない、ということは、理論的には考えておかなくてはなりません。



これは、逆もまた真なりです。

先天的に糖質摂取が体に悪いという患者さんも一定数、存在します。


⇒ 糖質60%摂取が辛い(体に悪い)人も100人中5~6人いるかもしれない

2015年7月 7日 22:57

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