糖質60%摂取が辛い(体に悪い)人も100人中5~6人いるかもしれない
前の記事とリンクした記事です。
糖質制限が体質的につらい人は100人に1~2人いるかもしれないという話をしました。
患者の家族が自分で研究して治療法を解明し、それが映画にもなったので有名な話ですが、難治性てんかんの患者さんに効果的な食事療法で、ケトン食療法というのがあります。
ケトン食療法というのはほぼ完全な糖質制限食です。
実際には完全に糖質フリーな食事を維持することは難しいので、修正アトキンス食などが用いられていますが、糖質摂取率は5%以下です。
難治性てんかんの患者さんの中には、この食餌療法が劇的に効果的な人が一定の割合で含まれます。
仮のこの病気が常染色体性劣性遺伝形式で起こると考えると、100人に数人はその遺伝子変異の保因者であるという計算が成り立ちます。
ということはつまり、糖質代謝のために必須の酵素が半分足りない人がその割合で存在する、という可能性があるわけです。
どんな病気があるんでしょう?
神経系疾患分野
稀少難治てんかん(平成24年度)
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http://www.nanbyou.or.jp/entry/3250
1. 概要
乳 幼児・小児期にてんかん性脳症を来たし重篤な脳機能障害と発達の停止・退行を来す希少難治てんかんは、その激烈な臨床経過から破局てんかんとも呼ばれ、臨 床的には、大田原症候群、早期ミオクロニー脳症、ウエスト症候群、ドラベ症候群、ドゥーズ症候群、遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、レノックス・ガス トー症候群、睡眠時てんかん放電重積状態をもつてんかん脳症、タッシナリ症候群、ラスムッセン症候群、ランドクレフナー症候群、スタージ・ウエバー症候 群、片側けいれん・片麻痺・てんかん症候群、アイカルディ症候群などに分類される。成因の多くは遺伝学的背景に基づく脳形成異常・神経機能異常と考えられ るが、病因不明で既存の症候群分類にあてはまらない症例も少なくない。多くの症例が長期的には重度の発達障害など不良な予後をたどるため、生涯にわたる家 族及び社会の負担は大きい。一方早期の診断とてんかん外科治療等による適切な対応により良好な予後が得られる場合もあり、最新の画像診断と遺伝子診断を組 み入れた診断基準の確立と病因の解明及び有効な治療法の開発が求められている。
2. 疫学
我が国における患者数は5才以下の乳幼児で約5000人(活動性てんかんの10.2%)と推定されるが、学童期以降については本邦ではこれまで系統的な患者数調査は行われておらず明らかではないのが現状である。
3. 原因
病 因として、皮質異形成、瘢痕脳、腫瘍性病変、結節性硬化症などの病理学的異常、あるいは遺伝子異常が確認される場合があるが不明なことも多く、免疫や炎症 機序の関与も指摘される。病態の解明には、臨床的には神経画像(MRI、PET、SPECTなど)や頭蓋内脳波記録などによるてんかん原性病変の同定及び 原因遺伝子の探索が重要で、一方外科摘出標本を用いた神経生理学的・病理学的研究や動物モデルによる基礎研究も、原因の解明と有効な治療法を開発するため に必要とされる。
4. 症状
希少難治てんかんは、頻発するてんかん発作と発作間欠期の持続性脳波異常及び進行す る脳機能障害を特徴とする。臨床症状としては、スパスム、強直発作、無動発作、脱力発作などのてんかん発作が頻発し、多くの症例では発症とともに発達が停 滞し、長期的には発達の退行及び重度の発達障害に至る。脳波上、様々な形態の年令依存性全般性脳波異常、すなわち、新生児期にはsuppression- burst(大田原症候群)、乳児期にはhypsarrhythmia(ウエスト症候群)、幼児期にはslow spike-and-wave complex(レノックス・ガストー症候群)などを呈する。
5. 合併症
発作の改善が得られない症例では、重 度の発達障害が最も重大な合併症となる。一方、発作の改善が得られ発達障害が軽度の症例であっても、様々な行動障害や学習障害及び精神障害を伴う場合が多 い。また頻発する発作による誤嚥性肺炎や低栄養などの身体合併症及び突然死(Sudden Unexpected Death in Epilepsy: SUDEP)が問題となる。
6. 治療法
抗てんかん薬による内科治療が基本であるが、症例によっては、ビタミ ンB6投与、ACTH治療、ケトン食治療、あるいは免疫グロブリン療法などが行われる場合もある。皮質異形成などの局在性病変を伴う症例では、病変の切除 を目的とした外科治療(切除外科)が適応となる。一方病変を認めない場合や両側性広汎性病変など切除外科の適応がない場合には、脳梁離断術や迷走神経刺激 術などの緩和的外科治療が選択される場合もある。
5歳以下で5000人ですから、100万人当たり1000人。
1000人に1人ぐらい、この病気になります。
常染色体劣性遺伝形式で発生すると考えて、1024人に1人で考えると、その1/4、256組に1組はヘテロの組み合わせになります。
これの平方根を求めると、16です。
つまり、16人に1人は、糖質をうまく栄養として利用できない遺伝子変異の保因者であり、その人自身、その遺伝子の機能が半分しかないということになります。
こういう人が、朝から晩まで菓子パンとジュースだけで生活するような糖質漬けの生活を送ったらどうなるでしょうか?
体調が悪くなる可能性がありますし、イライラして切れやすくなるかもしれません。
100人に6人は糖質60%の食事でも、実は辛くてしょうがない(かもしれない)、ということになりますね。
学校給食をなかなか食べられなくて、泣きながらパンを食べさせられていた。
パンを全部食べると頭が痛くなったり手がしびれたりして食べれないといっても、先生から許してもらえなかった。
食べても食べても吐いたり下痢したり寝込んだりして病気がちだった。
ひ弱といわれ、小学校の先生から怒られたり溜息をつかれたりして苦しんでいた。
そういう子供たちの中には、糖質代謝機能の低い、糖質代謝に関わる遺伝子欠損のヘテロ(保因者)の方々も含まれていた可能性がある、そう考えることも可能である、というわけです。
と、ここまでいろいろ考えてみると
糖質制限がすべての人にとって万能の食事というわけではないだろうということもわかりますし、
糖質60%の食事が生まれつき、体に合ってないので、先生が強制的に給食を食べさせるのは体に悪い拷問となる人もいることもわかります。
どちらも、100人に1~2人、いいえ、ひょっとしたら100人に5~6人という高い確率で、その食事を体がうまく受け付けてくれない人がいる可能性があります。
20人に1人ぐらいは糖質60%の食事がつらい、50人に1人ぐらいは糖質制限がつらい、
と、理論的な可能性を気にし始めるとこういうことになります。
極論を話してきました、でも何を言いたいかというと、みんな、もっとお互いに、いろんな体質の人がいるということを認めるべきだ
ということです。
先日、どうしても糖質制限が続けられないという糖尿病の方のコメントに、糖質制限できないなんて、みたいなコメントをしてしまいましたが、もしかして体質的にしんどい方だったら、継続は難しいかもしれないなと、反省しております。
(-_-;)。
> 極論を話してきました、でも何を言いたいかというと、みんな、もっとお互いに、いろんな体質の人がいるということを認めるべきだと
良い記事ですね~~~
個別の対応はその人に合わせてやるべきですからねー
そのためには広範囲な知識と経験が必要ですよね。
それこそ、医師が患者に与えられるものだと思うのですが・・・
実際は薬を決まった手順で出すだけなのが多い印象を受けてしまいますよね。
なるほど、精神論では無く、医学的な理由で糖質制限できない人もいらっしゃるのですね。勉強になりました。
とても大事なことだと思うので、私のブログで紹介させていただいてもよろしいでしょうか?
>みさこさん
はい、よろしくお願いします。
あくまでも計算上の仮説であることはご了承くださいね。
>naoさん
コメントありがとうございます。
> 実際は薬を決まった手順で出すだけなのが多い印象を受けてしまいますよね。
・・・耳が痛いです。
私はここでは文献やテキストを確認してゆっくり考えて答えることができますが、外来の場での個別対応は本当に難しいと思います。
そういう医療を心がけているクリニックを開業してる友人がいますが、彼は一人30分の完全予約制で、一年先まで予約で埋まっています。
彼の場合は対象疾患をいくつかの病気に絞っているのでそれができるのです。
でも、いきなり行ってもすぐに診療を受け付ける普通のクリニック(いわゆるコンビニ診療)だと、午前中の受付だけでも100人とかを診療することになり、お昼ごはん抜きで診療しても17時までかかる、ということはざらですよね。
そんな中で、新患の患者さんの病歴を読み、背景まで把握するのに許される時間は30秒とかせいぜい1分とかですから、ほんとに難しい。
(待ってる患者さん側からすると、前の患者さんが出てきて自分が呼ばれるまでに1分も待たされるのっていったいなんなんだ?ってイライラすると思いますし。)
糖尿病のような生活習慣病であれば、ウェブをうまいこと、予備問診に使えるといいのかもしれないですね。
プライバシー保護への配慮やら、医師法の規制の問題やら、ウェブを使えない医師会の重鎮たちからの反対に引っかからない範囲、などの落としどころは必要かと思いますが。
今回の記事を読んで娘の小さい時を思い出しました。食が細くて食べるのも時間がかかり、給食は残してましたね。あげパンは大嫌いで友達にあげてたとか。炭水化物が全くダメではないけど、どちらかとなると苦手?でしたねー。生理が早くきてからは寝込みがちで、病院からは「中身と外側が一致してないうちに生理がきたのねー。可哀想に。甘い物はとっちゃダメよー。」と言われました。何故に?と思ってましたが、今となってはなるほど!と思ってます( ・∇・)。娘は社会人になってから私と一緒に糖質制限しはじめて、とても調子がいいらしいです。もっと早くに気を付けてあげれば良かったと思う私です。さまざまな人が居るようにさまざまな体質の人が居るので、一概にひとくくりには出来ない?という事は大切ですよね。違う事を認めるのは勇気が必要だし(^-^;柔軟な対応力がある病院が増えるといいですよね(^-^)
>えび大好きっ子さん
娘さんがそうでしたか。
けっこういらっしゃるんじゃないかと思うんですよね。
けっこう食べるのに太らないね、って人の中には、糖質が苦手で低糖質な食事スタイルを自然に続けてらっしゃる方々がいらっしゃるんじゃないかな。
今、低糖質ライフで調子がいいのであれば、元気で楽しい人生がすごせますね、娘さん、これから子供のころに寝込んでた分を人生楽しんでいただけたらと思います。
かるぴんちょ先生、お返事ありがとうございます(^-^)。娘が小さい時は、身体にいいって聞いたら何でも食べさせてきましたねー。今振り返ると、確かに拷問だったかも(笑)。健康になってもらいたいばっかりに、間違った栄養情報を元に食事を作ってたんですから(>_
がんばります!(^◇^)
Dr.カルビンチョ先生
>>何を言いたいかというと、みんな、もっとお互いに、いろんな体質の人がいるということを認めるべきだ<<
糖質の奴隷になってるような(糖尿病一歩手前の)友人2人に、良かれと思い食事法を勧めましたが、気を付けて様子を見ることにします。
自分が成功したからと言って、人にも正しいとは言い切れませんね。
本当に友人の為になるように考えて行きます。この記事は特に今の私にとってとても参考になりました。ありがとうございます。
>ケトン代謝のおばさんさん
参考にしていただければ何よりうれしいです。
たぶん、100人中96人は糖質制限で体調はよくなると思うんですよね(程度差はあれ)。
しかし、残りの4人の方々の感じる疎外感にどう対処していくかが、この国では特に重要だと思っています。
追いつめてしまったら、その4人の中から出現するであろうごく少数の強烈な反対活動家のせいで、96人の多数派が手にできていたメリットさえも否定されて失ってしまう可能性があります。
ワクチンにしても新薬にしても、副作用が出た時の騒ぎっぷりを見てるとそう思います。
糖質制限にはそうなってほしくないです。
本音だけで言えば、理解してメリットを享受できる人だけでやってればいいかなとも思います。
自分はスリムで健康で若く見える、周りはメタボで生活習慣病で年相応か老けて見える、
そしたら自分が引き立つのなんのって\(^o^)/ ←おい。