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朝日新聞に糖質制限を5年続けると命が危ないって出てたよ(笑)。


糖質制限仲間から、朝日新聞の夕刊に糖質制限を5年以上続けると危険だって出てたよ、と、昨夜、メールで連絡をいただきました。

2013012621370000.jpg

「ぷ(^m^)」つきで送られてきました。


ああ、そういえば、明日(今日ですね)は能登先生の学会発表があるのだったな、それで載ってるんだなと。


先ほど、オンラインでもニュースが出ました。


糖質制限ダイエット、長期は危険? 死亡率高まる恐れ

朝日新聞デジタル 1月27日(日)11時59分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130127-00000015-asahi-sci


 【桜井林太郎】ご飯やパンなどの糖質を控える「糖質制限食(ダイエット)」を5年以上続けると、死亡率が高くなるかもしれないとする解析結果を、国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝・内分泌科の能登洋医長らが26日、米科学誌プロスワンで発表した。死亡率が高まる理由はよく分かっていない。

 糖質制限食は「低炭水化物ダイエット」などとも呼ばれ、短期的には減量や血糖値の改善につながるという報告が出ているが、長く続けても安全かははっきりしていない。能登さんらは昨年9月12日までに発表された糖質制限食に関する492の医学論文から動物実験などを除き、人間での経過を5年以上追跡して死亡率などを調べた海外9論文を分析した。

 対象は、とくに病気がない地域住民や医療スタッフら計約27万人。摂取した総カロリーに占める糖質の割合に応じて10のグループに分けた。



私的にはこの発表に対する結論は出ていて、スーパー糖質制限の実践においては考慮に値しない報告だと思っています。

ですが、「糖質制限が一律に危険だ」と誤解されるのは癪に障るから反論を書いてみましょう。


この発表の主旨は以下の通りです。

*****
 糖質制限食について長期的な効用は認めず、むしろ死亡リスクが有意に増加する。こんなメタアナリシスの結果を1月12日、国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝・内分泌科医長の能登洋氏が第47回日本成人病(生活習慣病)学会で発表した。

中略

 メタアナリシスの対象として選択された論文は全9件で、対象者は27万2216人(女性66%、追跡期間5~26年)。総死亡数は1万5981人だった。

 総カロリーに占める糖質の割合をスコア化し(low-carbohydrate score;LCスコア)、糖質の割合が低い(30~40%)群と高い(60~70%)群を比較した結果、総死亡リスクは低糖質群で31%、有意に増加した(調整リスク比の95%信頼区間は1.07-1.59、図1)。「低糖質・高蛋白質」群と「高糖質・低蛋白質」群を比較した結果(LC/HPスコア)でも、前者で総死亡リスクは22%、有意に増加(同1.02-1.46)。糖質制限食による長期的な効用は認めなかった。

 心血管疾患死については低糖質群で10%増加したが、有意差は認めなかった(同0.98-1.24)。また、心血管疾患発症リスクはLCスコアでの検討では有意差はなく、LC/HPスコアで検討していた1文献では有意差を認めていた。

 結果について能登氏は、「糖質制限食をし好する人は、脂肪や動物性蛋白質の摂取量が高値となる傾向にあり、総死亡の増加への関与が想定される」と話した。ただし、「今回の検討では糖質の特徴や蛋白質源などの影響は加味されていない。これらの解析を含む長期介入研究が必要だ」とした。
(日経メディカルの記事より抜粋 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201301/528564.html )
*****


能登先生のこの研究は、膨大な数の論文を比較して、その中から選択キーワードに合致した9編の論文を比較対象とした、としていますが、

ピックアップされている論文は、同じ研究グループのものが半数以上を占めています。

そのグループのひとつは、昨年6月にBMJに「糖質制限は危険だ」という論文を出してBMJ読者から「科学的にpoorだ、編集者の見識を疑う」と言って、ぼろくそにけなされているあの研究グループです。


Pubmed-Noto Fig.png

たとえば能登先生が1月12日に発表して日経メディカルに掲載されているこのグラフですが、6編の論文を比較したとしています。

でも、少なくとも上の二つは同じグループ、真ん中の二つは同じ人、下の二つも同じ人、ということで、実質的に3つのグループのデータ比較です。

上の二つは「糖質制限反対派」の研究論文(つまり昨年6月にBMJに出た、反糖質制限派が心の拠り所にするあの論文)です。

真ん中の論文も、以前から「糖質制限すると癌になりやすい」としているグループの論文で、これも反糖質制限派が以前から拠り所としているものです。

一番下の方は、統計学的に見て、メリットもデメリットもないとする「中庸」派ですね。


そして不思議なことに、彼らの論文よりもImpact Factorの高い雑誌に掲載された「糖質制限は危険ではない」とする複数の論文は検討対象から外されています。

つまり、このメタアナリシスは、最初から恣意的に偏りを持って構成されている感じが否めません。

キーワードで選択した結果そういう風に選ばれた、としていますが、それらの「糖質制限否定派」の論文には存在して、糖質制限を肯定する論文には存在しないキーワードを用いて選別をかけている可能性もありはしないかと思ってしまいます。

発表を聴いていないので、選別をかけたキーワードが真実のところはどんなものかわかりませんけど。

(死亡率に注目しているのは反糖質制限派の論文だけ、ということなのかもしれませんが)


念のため、Pubmedで、能登先生が使ったというキーワードを検索してみますと、以下のような結果になります。

*****
「能登氏らは、MedLine、EMBASEなどの検索エンジンを用いて、"low-carbohydrate diet"や"carbohydrate-restricted diet"などのキーワードで関連する研究を選択し、メタアナリシスを行った。」
(日経メディカル記事より)
*****

Pubmed-Noto Low carb.png
"low-carbohydrate diet"が620件

Pubmed-Noto carb-ristricted.png
"carbohydrate-restricted diet"が695件

Pubmed-Noto keywoed double.png
AND検索で両方をかけてみたら 151件でした。


このように、Medlineだけでも膨大な数の論文が引っ掛かるはずですが、どのようなセレクションをかけて、そこから9編まで対象とする論文を絞り込んだのか、その理由は何なのかを聞きたいです。

(誰か学会で聴いてきたのであれば教えてくださいね。)





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ただね、これはある面では、真実を表している研究発表でもあるのかもしれないと思うのです。

これを持って、能登先生やFungの主張がおかしいとは言い切れない部分があります。

彼らが抽出した検査対象であれば、彼らの主張は真実であり、彼らが「危険な糖質制限」とする食事スタイルは確かに危険かもしれないと思います。



そのことについては、別の記事で書きます。

⇒ マイルドな(中等度の)糖質制限で脂肪摂取が増えるとかえって危険 


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2013年1月27日 16:13

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コメント(14)

勝間和代さんも、ブログでこの記事に対する疑問点を
書かれていました。
また、こちらのブログのリンクもありましたヨ(≧∇≦)
http://kazuyomugi.cocolog-nifty.com/private/2013/01/post-e389.html

私の同僚にも糖質制限を始めた人が三人いるんですが
みんな人が変わったようにイライラしていて正直キツいです。
人が離れていきます。

それだけでなく体型もどんどんみっともなくなっていて
生理もこなくなっているらしく
まるでお婆さんのようになってしまいました。

健康で魅力的な人はバランスの良い食事をしていますが
本当に糖質制限っていいことなんですか?

そもそも人間の奥歯って
穀物をすり潰す形をしているのでは?


糖質制限で、なかなかよい結果が出ない方もいらっしゃるようですが・・・
 私の場合
昨年6月 糖尿病発覚時 HbA!c  14.5 (NGSP)
食後血糖値  553
空腹時    400前後
すぐ糖質制限をして
11月ごろから、もう一年あまり
 HbA!c 5から5.5(NGSP)
 中性脂肪も200越えから、50以下
 LDL 200から120
 HDL 40から 90
 体重90kgから75kg 体脂肪率  14.7

肝機能なども改善、花粉症も軽くなりました。
個人差・男女の差など、個体差は大きいのかも知れませんね?

P.S 妻は、私と同じように糖質制限をして半年で、体重59から49kgとスリムになりました。

まあ、色々ブログを回ってみたんですが、ハッキリ言えば糖質制限を推奨してる人たちって、
都合のいいことしか言わない、
自分たちを否定する意見や人たちにはとことんバカにしたり、攻撃してくる人がなぜか多いので、その時点で人格的にバランスがいいとは言えないと思うんですけどね。

偏見と無知が丸出しのしょーもない妄想を垂れ流さないでください。
悔しかったら論文を書いてみてはいかがですか?
書けないからこんなブログでコソコソ吠えているだけなんでしょうけど。

Carpincho先生
いつも勉強させていただいています。以前コメントさせていただいたものです。
糖質制限を始めて8ヶ月目です。コレステロールと尿酸値が一時期高くなったのですが、江部先生に相談したところカロリーを上げるようにとのことでした。そこで、脂質を十分とるように気をつけておりましたら、標準に戻ってきました。
このまま、続けて参りたいと思います。

さて、実は私、生命科学者でして(医者ではありません)、商売柄論文書いてます(今は書かせてます・笑)。
先生には言わずもがなですが、論文って最後に「Discussion(考察)」を書くんですよね。ここは、自分が出した新たな結果をまとめ、先行研究との比較をおこない、自分の研究の意義を明らかにして今後の発展を「語る場」です(自分の出した結果以上に語りすぎの研究者もいますが・苦笑)。
過去の知見(他の論文)を引用しつつさらなる大きな状況を「こうだったら面白いな、楽しいな」と「妄想」することが許される場なんですよね(笑)。科学的な妄想とでも申しましょうか。
この妄想が科学者としては楽しい!時なんですよね(証明するのはつらいけど)。

で、先生のこれまでのブログの内容を読んでいると(さすがに全部目を通しておりませんが)、ご相談内容や先生のご経験(結果)をこれまでの情報(論文・学会・記事等)に照らしつつ(怪しいと思われるところはその旨コメントし)、とまさに「Discussion」しておられます。
読んでいて思わぬ気づきがありますし、生化学の内容を再確認したりして、とても面白いです〜。

というわけで、いつもありがとうございます、とお礼を申し上げる次第です。

ちなみに、有名ブログになりますといろいろなコメントが寄せられるのでしょうね。
「偏見と無知が丸出しのしょーもない」コメントも中にはあるのでしょうか?

Carpincho先生
早速にありがとうございます。

>>
欠点はこちらが学位論文のために実験して得た実験結果をプログレスレポートの翌月には斑会議とかでべらべらしゃべられることでした~(笑)。
>>
◆同じ先生ではないと思われますが(私の師匠は東京出身だったので)、境遇が似てました(苦笑)。お金を取ってきてもらっていたので、痛し痒しといったところでした(その後、できる限り早く論文化しなければなりませんでしたが・・・・・作戦?)。

>>
そうですね、わたしもまともにとりあうのはやめるべきだなと思いつつ、
>>
◆そういったコメントをお一人で抱えるのは、ストレスが増えるのでは、とお察し申し上げます。何かあれば、またすっ〜とご機嫌伺いに参ります(笑)。

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