日本人2型糖尿病患者での糖質制限RCT研究
\(^o^)/ぱちぱちぱちぱち\(^o^)/
ようやく、科学的評価に耐える強いエビデンスが示されました。
北里研究センターの山田悟先生のところからの論文です。
MTProから抜粋引用します。
日本人でも糖質制限食は有効 初のRCT
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr140101.html
研究の背景:日本人における糖質制限食のRCTの報告はなかった
ここ数年,糖質制限食に対する注目ががぜん高まっている(関連記事)。米国糖尿病学会(ADA)の食事療法に関するガイドラインでも,2002年版(Diabetes Care 2002;25:148-198)では"糖質制限食はすべきでない"とし,2008年版(Diabetes Care 2008;31: S61-S78)では"糖質制限食は体重減量に有効"としながらも脂質プロファイルや腎機能に対するモニタリングが必要という条件を設定していたのに対し,2013年版(Diabetes Care 2013;36:3821-3842)ではそうした条件を外し,さまざまな受容可能な食事法の1つという形で取り入れている。しかし,日本人におけるランダム化比較試験(RCT)のデータは欠如していた。
このたび,私たちのデータが日本内科学会の英文誌Intern Med(2014;53:13-19)に掲載されたので,せんえつではあるがご紹介したい。
内容の抜粋
本研究は,北里研究所病院糖尿病センターの外来に通院していて,既にカロリー制限食(25~30kcal/kg標準体重)の指導を受けたことがあり,薬物療法も受けながら,なおHbA1c 6.9~8.4%の2型糖尿病患者を対象とした。
24例(平均年齢63.2歳,男性12例,平均BMI 25.8,平均HbA1c 7.6% )の患者が登録され,12例ずつ2群に割り付けられた。HbA1cは糖質制限群においてのみ有意に改善し(7.6±0.4%→7.0±0.7%, P=0.03),その改善の変化量はカロリー制限群(7.7±0.6%→7.5±1.0% , n.s.)より有意に大きかった(P=0.03)。
体重,脂質,血圧,腎機能,肝機能の6カ月での変化量は両群に有意差はなかったが,トリグリセライド(TG)については糖質制限群においてのみ有意に改善し(141.7±76.2 mg/dL,→83.5±40.6mg/dL, P=0.02),カロリー制限群(155.2±86.4 mg/dL→148.4±90.7mg/dL, n.s.)との間で差のある傾向が認められていた(P=0.08,図)。
私の考察:日本の(糖尿病)栄養学の新時代の幕開けを期待したい
昨年,ADAが栄養療法のガイドラインを改訂し(Diabetes Care 2013;36:3821-3842),糖質制限食を第一選択肢の1つとしたことは以前に報告した(関連記事)。幸い,本研究でも腎機能や脂質プロファイルは改善することはあっても悪化は全くなく,かつてADAが糖質制限食に寄せていた"(蛋白摂取過剰に伴う)腎機能の悪化"や,"(脂質摂取過剰に伴う)血中脂質プロファイルの悪化"といった懸念(Diabetes Care 2008;31:S61-S78)が杞憂であることが日本人でも確認された。また,本研究における糖質制限群の平均BMIは24.5であり,"肥満の欧米人と同様に非肥満の日本人においても糖質制限食は有効"ということが証明された。現時点で,"カロリー制限食に対する副次的食事療法として糖質制限食は安全で有効だ"ということは断言できよう。
ここまで。
いやあ、山田先生、ありがとうございます。
柔らかいバランス感覚でじわじわと文句のつけようのないエビデンスを積み重ねていく。
激しい反論はしない。
精緻な事実の前に、感情的な反発も起きにくい。
豊臣秀吉みたいな人たらしのその手法、すばらしい!
(私的にはほめてます、思いっきり)
時間はかかるけど、感情的な反対派が多いところで人を動かしていくにはそれが一番手っ取り早いですもんね。
論文の内容は、糖質制限を実践している我々からしたらまったく当たり前。
むしろ、弱いくらいです、いきなりスーパー糖質制限でがんがんやればもっといい結果が出たかもなのに(笑)。
でも、それを日本人で、ちゃんとRCT研究としてデータをとって報告したところにとても重要な意義があるんです。
日本内科学会の英文誌だけど、日本の糖尿病治療の歴史にとって見れば、New England Journal of Medicineに掲載されたのと同じぐらい重要な意味を持つ論文だと思います。
おめでとう!
ありがとう!
日本人においても糖質制限が安全で有効な食事療法である
やったね!
詳細を見たい人、図を見たい人はInternal Medicineのサイトまで行ってぜひ原文を読んでください。
無料で読めます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/53/1/53_53.0861/_article
A Non-calorie-restricted Low-carbohydrate Diet is Effective as an Alternative Therapy for Patients with Type 2 Diabetes
Yoshifumi Yamada1), Junichi Uchida1), Hisa Izumi1), Yoko Tsukamoto1), Gaku Inoue1), Yuichi Watanabe1), Junichiro Irie1), Satoru Yamada1)
1) Diabetes Center, Kitasato Institute Hospital, Japan
Released on J-STAGE 20140101
Keywords: calorie restriction, low-carbohydrate diet, type 2 diabetes
Objective Although caloric restriction is a widely used intervention to reduce body weight and insulin resistance, many patients are unable to comply with such dietary therapy for long periods. The clinical effectiveness of low-carbohydrate diets was recently described in a position statement of Diabetes UK and a scientific review conducted by the American Diabetes Association. However, randomised trials of dietary interventions in Japanese patients with type 2 diabetes are scarce. Therefore, the aim of this study was to examine the effects of a non-calorie-restricted, low-carbohydrate diet in Japanese patients unable to adhere to a calorie-restricted diet.
Methods The enrolled patients were randomly allocated to receive a conventional calorie-restricted diet or low-carbohydrate diet. The patients received consultations every two months from a registered dietician for six months. We compared the effects of the two dietary interventions on glycaemic control and metabolic profiles.
Results The HbA1c levels decreased significantly from baseline to six months in the low-carbohydrate diet group (baseline 7.6±0.4%, six months 7.0±0.7%, p=0.03) but not in the calorie-restricted group (baseline 7.7±0.6%, six months 7.5±1.0%, n.s.), (between-group comparison, p=0.03). The patients in the former group also experienced improvements in their triglyceride levels, without experiencing any major adverse effects or a decline in the quality of life.
Conclusion Our findings suggest that a low-carbohydrate diet is effective in lowering the HbA1c and triglyceride levels in patients with type 2 diabetes who are unable to adhere to a calorie-restricted diet.
ブログなどのメディアを持っている人も是非、紹介してあげてください。
科学的な査読のある科学雑誌に掲載された論文として、画期的な一報なのです。
スポンサードリンク 2014年1月16日 19:02 スポンサードリンク
カルピンチョ先生、ご無沙汰しております。
宗田先生の「新生児のケトン体使用」や山田先生のこの記事と、次々と面白い研究結果が出てきますね。私なんぞ「やっぱりね」などと思ってしまいます。なにせ500万年超の実績ですからね。
末尾の『現時点で,"カロリー制限食に対する副次的食事療法として糖質制限食は安全で有効だ"ということは断言できよう。』は、随分控え目な言い方ではないか、と感じます。
・カロリー制限→薬なしでは食後高血糖も、日内変動もコントロールできない
・糖質制限→ハナから血糖値を上げないので、薬で無理やり下げる必要がないし、日内変動も少ない
どちらが体にとって良いか、は小学生でも分かると思いますが、どーしても認めたくない方々がいるようですね(私はこういう人たちを「絶滅希望種」と呼んでます)。
ではまた。
satyさん
面白い研究結果がどんどん出てきてうれしいです。
おっしゃるように我々にとっては自明のことで、山田先生の物言いもえらくへりくだってますけど、彼としても懐刀を飲んだ上での物言いじゃないかと勝手に想像しております。
真実よりもメンツを重んじる方々、長幼の序を求める方々、彼らにうんと言わせるにはなによりもメンツを立ててあげることがまず重要なのです。
とか、私がこんなこと書いてたら懐刀がさらされるのでこんなこと書いちゃ駄目だと思うんですけどね。
おはようございます。
いつも、勉強させてもらっています。
とくにケトン体については、ありがとうございます。
今後ともよろしくお願い致します。
千葉の産婦人科医Mさん
おはようございます。
参考資料のひとつにしていただければ大変うれしいです。
オオカミ系の妊婦さんの健康管理、ぜひよろしくお願いいたします。
先ほど、書き忘れました。私のFBに先生の山田RCT論文の記事をリンクさせてくださいというところでした。事後承認ですがよろしいでしょうか?とても気持ちの良い書き方でしたので紹介したく思いました。それぞれの持ち場で頑張っていきたいです。
千葉の産婦人科医Mさん
ありがとうございます、どうぞよろしくお願いします。
絨毛とケトンの話、江部先生のブログで知りましたが、わくわくしました。
カルピンチョ先生
HbA1cと心血管疾患リスクに関して、ちょっと気になった多目的コホート研究(JPHC研究)があったのでご報告します。
どこに張っていいのか分からないのでここにしました。(失礼)
要はHbA1c低値が心血管疾患のリスクが高いという結果で、どうしてそうなるのか?分かりません。(論文でも分からないと言ってるので分かるわけないか・笑・)
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3536.html
さて、どんな仮説が立てられるでしょう。・・うん、思いつかない!
もう一つ
福島県で臨床医をなさっている医師が「インスリンは猛毒」と主張されてます。 これは私も激しく同意します。
上記と同じ研究機関の報告がありましたので、張っておきます。
まさにインスリンは毒だと分かります。
「インスリン関連マーカーと大腸がん罹患との関係について」
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/296.html
それと男性と女性でこうも違うのも謎でございます。
やはりメトホルミン(β細胞でのインスリン放出を抑制・インスリン抵抗性の改善)ということですね。大笑・・・まだ確保出来てない・・・
>Yamamoto_maさん
3万人の対象者について調べた時に5%以下のHbA1cの方々で心血管イベント発生率が高い。
なんだかBMIが20を切ると死亡率が高いという統計を思い出しますねw
さて、リンク先を見させていただきました。
ここで私が非常に気になったのは脳出血患者のデータです。
脳出血患者だけに絞ってみると、5%以下のHbA1cの方々での疾患発生の方が
HbA1c高値の日糖尿病患者よりも高い、それどころか糖尿病患者よりも高いです。
ひょっとして、HbA1cが低いということは、線溶系が亢進しているということとリンクしているのかもしれないですね。
つまり、HbA1cが5%以下の集団は血が止まりにくい傾向がある集団である、ということなのかもしれません。
(原因か結果かは横に置いておいて)
血管での出血や凝固に関するトラブルは実は我々が症状を感じるよりもたくさん発生していて、それを正常な線溶凝固系が常に補修していると考えると、HbA1cが低い人では、凝固が働くべきところでうまく働かないが故のトラブルが起こりやすいということになります。
ちょっと文献検索してみましたが、こういうのはありました。
PLoS One. 2015 Jul 6;10(7):e0132629. doi: 10.1371/journal.pone.0132629. eCollection 2015.
The Influence of Haemoglobin A1c Levels on Platelet Aggregation and Platelet Turnover in Patients with Coronary Artery Disease Treated with Aspirin.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26148094
Q J Med. 1987 Dec;65(248):1025-31.
Thrombin and plasmin activity in diabetes mellitus and their association with glycaemic control.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2971234
なんとなく、推測があってるかもしれない気がします(笑)。