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健康な食事に含まれるべき炭水化物量の厚生労働省案にコメ業界から批判殺到?


厚生労働省の栄養指標にコメ業界から批判殺到。

しばらく前のNHKニュースで見たんですけど、ばたばたと朝の準備をしながら聞いたのでおぼろげで、確認してみました。


厚生労働省が、適正な栄養バランスについての指針を示して、それに合致するコンビニ弁当などの商品には「健康な食事」の専用マークを付けることができるようにしようという話がありました。

ところが、これにパブコメで猛反対があったので中止になったと。


いわく、

「基準を設けることで米の消費が落ち込みかねない」

いわく、

「食事の制限につながり、エネルギーが不足する人も出る」

いわく、

「農作物の消費や生産にも影響する可能性があり、慎重な議論が必要だ」


ということで、基本的にはお米を作っている人やそれを販売して利益を得ている人たちからの猛反対があったようです。


NHKのニュースはこちら

ーーーーーーーー


「健康な食事」表示制度 批判相次ぎ見直しへ
3月23日 5時46分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150323/k10010024741000.html

厚生労働省は1食当たりに必要な炭水化物などの栄養素の基準を定め基準を満たしている弁当などに専用のマークを表示できる制度を来月から始める予定でしたが、「基準を設けることで米の消費が落ち込みかねない」といった批判が相次いだため、制度を見直すことを決めました。
厚生労働省は栄養バランスが取れた食事を食べてもらい、生活習慣病の予防などにつなげようと1食当たりに必要な栄養素の基準を設け、基準を満たしていれば「健康な食事」としてコンビニや飲食店などで販売される弁当や定食に専用のマークを表示できる制度を来月から導入することにしていました。
基準では主食となる米などの炭水化物は40グラムから70グラム取ることなどが盛り込まれ、厚生労働省はパブリックコメントを行い広く意見を募っていました。
その結果、「基準を設けることで米の消費が落ち込みかねない」とか、「食事の制限につながり、エネルギーが不足する人も出る」、さらには「国が主導して導入すべきではない」などと、制度そのものへの批判も寄せられたということです。
このため、厚生労働省は農林水産省と協議を行い、「農作物の消費や生産にも影響する可能性があり、慎重な議論が必要だ」として、制度の導入を先送りし、仕組みや基準などを見直すことを決めました。
厚生労働省は「専用のマークの表示を行うかどうかも含め、再度検討したい」としています。

ーーーーーーーー



これを見て私、すごく驚きました。

厚生労働省が炭水化物の適正な摂取量について、ずいぶん低く設定しつつあるのですね。


一食当たりの適正な炭水化物摂取量を40gから70gとしていますが、カロリーに換算すると160kcalから280kcalですね。

同じく厚生労働省の2014年8月に開かれた検討会では、平均的な日本人のカロリー摂取量は全部総合して平均すると2194kcal程度と計算しています。

以下はその検討会の議事録の一部抜粋です。

ーーーーーーーー

2014年8月4日 第10回日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会 議事録

健康局がん対策・健康増進課栄養指導室
○日時

平成26年8月4日(月)
14:00~16:00 

○場所

厚生労働省 共用第8会議室(19階)

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000055558.html


  性・年齢階級別は全部で8グループありますが、それぞれ最適化値が求められ、それを1つのグループの値として求めました。8グループの平均をとり、1グループの1つの値を求めたということです。年齢階級としては、男女共通18歳以上のグループということになります。

 5ページの上半分の右側にある表が最適化の結果になります。表の左側が食品群の分類で、先ほどお示しした食品グループごとです。右側は最適化した結果ということで、摂取量の平均値を1日当たりのグラム数で示しています。

 こちらの数値に加えて、エネルギーについては、性・年齢階級ごとの食事摂取基準で参考値として示している、推定エネルギー必要量の平均をとり、成人の1つの値としており、表を下に分けて表記しています。これが1日当たりのエネルギー摂取量ということで、2,194キロカロリーになります。

ーーーーーーーーー


一食当たり40gから70gの炭水化物摂取が健康な食事バランスである、

という厚生労働省の提示案は、

一日当たりの炭水化物としてのカロリー摂取量は480kcalから840kcalであるということから計算すると

2194kcalの中に占めるパーセンテージで言えば、

21.9%から38.3%ということになります。


素晴らしい!


厚生労働省の推奨する健康的な炭水化物摂取量が、かつての55~60%から、22~38%に変わってきたのです!


前の日本糖尿病学会の会長が2013年の3月に公式コメントとして厳しく批判していた

「カロリー比にして40%を切るような厳しい糖質制限」 ・・・今見返しても大笑いなコメントなんですが(;^ω^)

を、2015年3月の厚生労働省はあっさり否定して、

「健康的な糖質摂取量はカロリー比にして22~38%」

だと宣言しようとしていたわけです。


よかった。


もちろん、できれば20%を切るぐらいの低糖質摂取が健康にいいことを我々糖質制限実践者は知っています。

それでも、大きな進歩です。

素直に喜びたいと思います。



残念ながら、この案はいったんは引っ込められました。

このパブコメに寄せられた意見を見ると、誰がひっこめさせたかは明白ですね。

NHKニュースもそれを揶揄するような内容です(笑)。


日本人の健康よりも自分たちの権益を優先する人たちが、今でもたくさんいるのだなということがよくわかります。

まあ、彼らにしたら収入に直結する死活問題ですから必死なのはわかりますが、

生活習慣病の原因の一つが炭水化物のとりすぎのせいである

ということが世界的なコンセンサスになりつつある現在、彼らの立場がどんどんまずくなっていくこと、早く気づいていただきたいものです。



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2015年3月29日 15:59

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コメント(24)

いつの間にか記事が更新されていてびっくり。エイプリルフールじゃないですよね?(笑)

カルビンチョ先生、お久しぶりです!

この案が見直しされたと聞いたときは、「国民の健康より利益が大切なのね」と暗然たる思いだったのですが、たしかに、低糖質摂取がスタンダードになりつつあるのは喜ばしいことですね!
日本の糖尿病学会も早く目覚めてほしいです。知り合いに合併症で失明した人がいます。これ以上の進行を食い止めるために糖質制限をすすめてはいるのですが、目が見えない状態では、書籍等から正確な知識を得るのも難しいようです。親しい友人ではないので、私がしゃしゃり出ることもなかなかできず・・・。毎月病院で検査を受けているようなので、主治医が糖質制限を指導してくれれば・・・と思わずにはいられません。

カルピンチョ先生、
復帰ありがとうございます。
たま~に更新されないかと覗いていましたよ。
これからも、違う角度からの記事、
楽しみにしてますねぇ。

ブログ再開おめでとうございます。
というか、読者としては「有難うございます」です。

「デンプンはアルファ化されなければ人体に吸収されない」との考えを発展させて、「生の」玄米を、粉末にしたり、水を含ませてミキサーにかけてスムージーにして、摂取すれば良いと提唱している方々も居られるようですね。
それが上手い事いけば折り合いつけられたりしないかなあ、とか思ったりしました。(少量以上食べるとお腹壊しそうですが…)

それにより体内でケトン体生成したり、糖新生したりする必要も減り内蔵への負担も少なくなると主張されてるような。

直接にはミネラルの摂取、間接的には腸内細菌のエサとなることでそれらに短鎖脂肪酸を作らせ腸から人体に吸収することで、ケトン体同様の作用をさせる…といった趣旨のような。(興味深いのですが、いわゆるトンデモかも?正直よく判りませんゴメンナサイ)
http://cancer-treatment-with-diet-cure.doorblog.jp/archives/38005096.html

糖質制限絡みのお米ネタでは最近こんなのも流行ってるようです。一例を貼ってみました(御存知でしたらスミマセン)

普通に炊いてアルファ化した御飯が、冷めたくらいで元に戻ったりするもんなんでしょうか?
それだったら災害備蓄食のアルファ米とか糖質制限オーケー食なんでしょうか? 
遠足のお弁当の当然冷めてるオニギリなら食べ放題?

http://7272.main.jp/post-27/

>主食となる米などの炭水化物は40グラムから70グラム

ずいぶんと思い切った指針ですね。これだと、一食当たり茶碗一杯程度ということでしょうか(コンビニ弁当などは軒並みアウトということになりますね)。「タニタ食堂レシピ」に近いようなイメージなんでしょうか?(笑)

たしかに、コメの既得権で利益を受けている人たちにとっては大打撃でしょうが、主力を米以外にシフトしようという発想はないんでしょうかね(・・?。
大豆などは、国内自給率は10%を切っています(「大豆・自給率」で検索すればいくらでも情報が見つかります)。大豆って「伝統的な食文化を支える重要な作物」の一つじゃなかったんですか?
休耕田を大豆畑に転用する、といった動きもごく一部にはありますが…。


でんぷんのα化・β化の話題が出たので便乗します。
以前からずっと疑問に思っていたんですよ。「加熱してα化したでんぷんは、冷めるとβ化して消化しにくくなる」って本当なのか?(だとしたら、冷ご飯や冷麺は糖質制限OK食材となりますね)

仮に本当だとしても、胃で消化されて小腸に送られる頃には、口に入れた時に暖かろうが冷たかろうがだいたい体温程度(37℃前後)になっているんじゃないだろうか。だとしたら、それで消化吸収率に差が出るとは思えないw。

>室温に戻っても水分が含まれていれば当然、α化したままで、簡単に糖質に変わります。

これで疑問が氷解しました(^_^)。
重要なのは生(非加熱)であるか、加熱されて水分が加わった状態であるか、ということなんですね。

更に別の疑問にも答えが出ました(^o^)。
木喰行(五穀断ち・十穀断ち)という修行法の中に「火食(加熱調理された食物)を避ける」という条件があるのですが、これもまた、理にかなったことだったんだ、と、勝手に納得。←これ、長くなりそうなので、機会を改めてまとめてみます。

果物でも野菜でも必死に甘くなるよう品種改良って風潮強いですよね。
努力の方向性が間違ってるってヤツでしょうか。
(売れるかどうかって観点からは間違ってないんでしょうね)

水分無くて冷めてる御煎餅とかオッケーだったりしてw?
米粉100%近いですが…

糖尿病、糖質制限食周辺事象でも流行り廃りが結構ありますよね。

これも最近話題になってますよね。
個人的には因果関係が逆転してるような気がするんですが…

「睡眠障害の改善が糖尿病の血糖改善などに有効であることを確認 - 大阪市立大」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150416-00000121-mycomj-sci

お米が売れなくなるのがまずいのなら、それこそ大豆や葉物野菜など、糖質制限でもOKの作物にシフトすればよいと思いますが、実際にはなかなか難しいんでしょうかね。


買うのも買わないのも、消費者の自由ですよねー。


デンプンのアルファ化⇔ベータ化、解説有難うございました。

このネタにもお国柄があるようですね。
英BBCニュースではパスタだそうです。

「パスタ好きに朗報!茹で上げたパスタを一度冷やして再加熱すると、血糖値の上昇を最大50%までに抑制 」
http://ameblo.jp/zabutonteisyu924/entry-11941443132.html

炭水化物40〜70gというのは1食当たりではなく,
主食中の量ではないでしょうか。
言い換えれば,炭水化物が40〜70g含まれている主食を食べようとする指針です。

ご存じかとは思いますが,
野菜や大豆などにも炭水化物は含まれます。
報告書の表15によると,
主菜や副菜にも含まれる炭水化物も考慮すると,
炭水化物エネルギー比はおおよそ60%になります。

よって,厚生労働省が推奨している炭水化物摂取量が低下しているわけではないと思いますがいかがでしょうか。

最近病院の目標栄養基準の見直しをしました。
炭水化物は60%で(糖質制限推奨はしてないので…)いいよねって計算していたら、穀物エネルギー比率に変わってて、穀物➕穀物以外の糖質って区別せんとあかんの?ってことは60%にしたら炭水化物エネルギー比率は65〜70%にもなるん!って自分で作成して、自分でビックリ。
いつの間に変わったのでしょう、栄養士としてブランクがあるので気づいてなかったです。

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朝日新聞に糖質制限を5年続けると命が危ないって出てたよ(笑)。
クローズアップ現代の「糖尿病を手術で治す」の番組の問題と対策


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