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日本人と米について


少し古い話で恐縮ですが、「梅干と日本刀」という本をご存知でしょうか?

樋口清之さんという方が書かれた本で、今から40年前の1974年に発売されてベストセラーになった本です。

考古学者である樋口氏が、日本人の知恵や科学について書き上げたこの本。

面白いだけでなく、様々な含蓄に富んでいます。


梅干と日本刀 日本人の知恵と独創の歴史(祥伝社新書)


ちょっと紹介してみますね。

まずは第1章の日本人の食に関するくだりから


*****

以前、日本の食物史のことを書こうとしたときのことである。
日本人の食べる食品名をいろいろと挙げていってみると、大げさに言えば、日本人は世界中の人が食べてきた、すべての食品を食べている。
というより、さらにそれに輪をかけた多種のものを食べている、という結論を得た。

摂取している食品が多い上に、中華料理だの、西洋料理、ロシア料理、インド料理、メキシコ料理、最近はアフリカ料理店まであるらしいが、ともかく何でも食べる世界一の雑食民族が、日本人である。

食べ物に関して情熱的というか、貪欲というか、恐ろしく丈夫な胃を持っている。
香辛料にしても、ある民族は胡椒しか使わないのに、日本人は唐辛子も生姜もワサビも食べる。
そして、それを少しも不自然だと思っていない。

ナマコ、ウニ、タコ、カズノコはいいとしても、ニシンが昆布に産み付けた子持ち昆布まで珍味と喜ぶ。
子持ちコンブは、アラスカが、自国では食べずに、日本への輸出用にだけ採っているのだそうである。

フグやウルシの新芽まで、日本人は危険の一歩前まで食べる。
いうならば、日本人は命がけで何でも食べてみるという、恐ろしく勇敢な民族である。

こうした貪欲さは、一方では生命力の旺盛さである。
世界中で、最も滅びにくい民族は日本人かもしれない。

*****


はい、言われてみればそうなんでしょうねえ。

海外から来てしばらく日本に生活している人がことごとく言うのが、日本における食材の豊かさです。

日本にすんだらありとあらゆるものが買えるし、その専門のレストランも探せば必ずあると。

しかもどれも美味しい、とね。


では、どうして日本はこうなったのでしょうか?

*****

では、日本人は何を基準にしてこれほどいろいろなものを食べているのであろうか。
それは、栄養があるとか、カロリーがあるとか言った基準ではなく、まったく論理的な根拠のない"うまい、まずい、季節感がする、歯触りが良い"という一種のムードがもとなのである。
いわば味覚が日本人の食生活を選択し、決定してきたのである。
その結果、西洋の思想から見れば、いろいろな不合理を生んできたのは確かである。

栄養学的に不合格な食品といえば、まず米である。
むしろヒエ・アワ・ソバの方が合理的な食品である。
第二次大戦前の徴兵検査で、ヒエダンゴとサツマイモとイワシを常食としていた九州や四国の農村の若者がいちばん体格がよかった。

中略

日本人がなぜ米を選んだかというと、穀物の中では米が、いちばんグルタミンと糖分を含んでいて、まさに"うまい"からである。
それが、日本人を米の偏食家にしてしまったが、一方ではこの"うまい"という基準が、米偏食を補って十分なほどの副食品を生んでいくことになる。

日本人の悪食の知恵は、米偏食の戦いの中から生まれてきたと言ってもいい。

*****


面白いなあ。

現代の日本文化の土台を作ってきたのが米を食べるという文化であり、その栄養学的に不完全な食べ物を主食にしてしまっただけに、いろいろと工夫する知恵が生まれてきたと。

樋口氏は梅干しやたくあん、みそなどについてもいろいろ書いています。

さらに、コメが単位制さんあたりの収穫量が豊富なことや、もちなどとしての保存に優れた穀物であり、食べた直後にすぐに労働エネルギーに変えることができるという点でも非常にすぐれた食べ物であることも書いています。


しかし、樋口さんが尾の本を書いた1974年には、日本人には肥満の問題はあまりなかったですよね。

カロリーだって、その食べ物にどれほどたくさんのカロリーが含まれているかをうたう場合の方が多かった。

まだまだ貧しくて、たくさん、お腹いっぱい、安く食べられる食べ物はとても大事だったのです。



もしも今、樋口さんがいらっしゃって同じような日本人に関する本を書いていたらどんな形になっていたか。

これだけ肥満が増え、生活習慣病が増え、中でも2型糖尿病患者の数たるや、予備軍まで含めるととんでもない数になります。


日本糖尿病学会の先生方に言わせると

「食生活の欧米化で脂っこいものばかり食べるからいけないんです、日本人の伝統である米を中心に糖質60%で脂質は15~20%にしてカロリーも厳しく制限すべきです。」


という状況ですが、

樋口さんだったらどんな本を今、書いただろうか?



その一つの回答がこちらだと思うんです。


炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学 (光文社新書)


夏井先生の名著ですね。

日本だけじゃなくて世界規模のお話なんですが、しかも海底から太古から幅広いのですが、たくさんの知識に支えられての話の展開がなんだか梅干しと日本刀にどこか通じるものがあって、面白いです。

両方合わせて読むことお勧めします♪


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2014年7月21日 18:38

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コメント(8)

 はじめまして。
 48歳の男性です。実は私は「うつ状態」でしばらく仕事を休職しています。精神科の主治医によると、原因は過度のストレスによるものだろうということで、月一回の診察と投薬を受けています。しかし、あまり改善しないなあと感じていたところに、妻の薦めで夏井先生のご本や炭水化物を止めればうつはよくなるという本を読む機会に恵まれ、それまでいかに炭水化物を摂りすぎていたのかを猛省し、現在、米、パン、麺を一切断つに至りました。
 ただ、目下の問題は家族の理解がなかなか得られないことです。特に管理栄養士をしている40代の妹がわかってくれません。彼女は従来の栄養学を学び信じてガチガチに凝り固まっているように見受けられます。彼女は、炭水化物も含めてバランスよく食事すべきだといって聞きません。私にも彼女を論破し、説得するだけの理論武装ができておらず、もどかしい思いをしているところです。これまでの栄養学は糖尿病学会も含めて、まやかしがいっぱいと言ったらけんかになりそうになりました。

日本の食物史で、常識的に語られることの一つとして「明治以前には、獣肉食は宗教的タブー(主に仏教の不殺生戒)から避けられており、明治に入ってから文明開化によって西洋からの影響で、次第に獣肉食が普及した」というものがありますね。
しかし、どうも農村・山村では、江戸時代でも獣肉はそれなりに食べられていたらしいんです。


江戸時代、鉄砲(火縄銃)の所持は、厳しく規制されていたような印象がありますが、一方で、農村・山村では、ある程度の鉄砲所持が奨励されていたようです。表向の理由としては「農作物を荒らす害獣を駆除して、年貢収入を確保する」ということで、大名から鉄砲を領民に貸し出す預鉄炮(拝領鉄炮)という制度がありました。こちらをご参照ください。
→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%89%84%E7%A0%B2
(江戸期の農村・山村における鉄砲普及率の具体的データをどっかのサイトで見た覚えがあるのですが、どこだったか見つかりません。ちゃんと裏を取ってコメントすべきなのですが…。すいません)


作物を荒らす害獣としては、主に猪・鹿などが対象だったと思われますが、そうした「害獣を駆除」した後どうしていたか、といえば、当然のことですが「普通に食べていた」わけです。特に山村地帯では、猪などの塩漬け肉は、冬期の保存食として重要な位置を占めていたようです。

どうも、一般的にイメージされている「伝統的な食習慣」は、都市部中心のもので(都市部の生活習慣のほうが、文字記録には残りやすいですから)「本当の伝統的な食習慣」は、かなり慎重に検討しなけば、その実態は把握しがたいもののように思われます。


この辺りの問題は、白水 智氏の『知られざる日本―山村の語る歴史世界』 (NHKブックス・ISBN-13: 978-4140910306)が、非常に参考になります。機会があったら、ご一読をお勧めいたします。


猪・鹿意外には、狸なんかもポピュラーな食材だったのではないでしょうかね。昔話『カチカチ山』では、おじいさんは捕まえた狸を、狸汁にしようとしたわけですし、わらべ唄『あんたがたどこさ』では、
「船場山には狸がおってさ それを猟師が鉄砲で撃ってさ 煮てさ 焼いてさ 食ってさ♪」と、歌われておりますね。狸を「煮たり焼いたり」して食べることは、結構あたりまえのことだったのではないでしょうか。ついでに言うと狸の脂は傷薬として重宝されていたようです。ものすごく臭いらしいですが(笑)。


保存食としての塩漬け肉はそうとう塩辛いでしょうから(新巻鮭くらいの塩気でしょうか)それ自体を主食にしたとは思えませんが、「肉食は明治に入ってからはじめて普及した」という思い込みは、修正の余地がありますね。江戸後期には「ももんじ屋」という獣肉を扱う専門店が現れていますから、都市部においても、江戸後期にはすでに獣肉食の習慣は広まりつつあったわけです。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%82%E3%82%82%E3%82%93%E3%81%98%E5%B1%8B


付記。『あんたがたどこさ』の、「船場山の狸」には、全く別の解釈もあります。お暇な方はこちらご覧ください。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%9F%E3%81%8C%E3%81%9F%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%95

学会の先生方は専売公社や肉屋と結託してるんでしょうか?

日本の場合、食生活の欧米化でかな~り儲けたのは肉屋じゃなくて
砂糖屋さんたちです。しかも製造原価が肉よりもお安いですから。

挽いた肉を使った食品に砂糖やら水あめを使いまくって、
「脂っこいもの」ではなく「ややあま辛い加工肉」を売りまくったのにね。

「赤ワイン」は糖質制限に最適ですが日本式の「赤玉ポートワイン」
は砂糖が入っているのでダメです。

実はそれと同じで日本式の加工肉も糖質制限食としては、
○ではなくやや△気味の評価なのかも。

不正をやって叩かれた大手の食肉加工会社が糖質オフの
ウィンナーを売り出しましたが、ウィンナーはそもそも糖質ゼロの
食べ物です。

ブログ再開、本当に有難うございます。
待ち続けたかいがありました。もう更新はないものか、と半ば諦めかけていたのですが(サイトが消失する前に、全データをコピー・保存しておく必要があるのかな、かなどと考えていました)、またDrカルピンチョの名調子が読めると思うと、すごく嬉しく思います(なんて言いうと、余計なプレッシャーになってしまうかな^^;)


>たぬきの油が傷薬。
ワセリンみたいな意味があったんでしょうかね。

聞いた話で、うろ覚えなのですが、傷口に狸の脂を塗り、油紙で覆っておくと、傷の治りが早いとされていたようです。これって、言ってみれば、一種のラップ療法ですね。


ワセリンがなかった時代には、ペースト状の油脂としては、動物の脂が最も入手しやすいものだったのだろうと思われます。そういえば、傷や火傷の薬として、馬油なんていうものもありますね。こちらは、現在でも市販されています。(販売サイトの効能書きは、はっきり言って眉唾ものですが^_^;)

油に含まれる成分に効能があるというよりも、傷口を油脂で覆い外気から遮断すれば、治りが早いということを、昔の人々も、経験から知っていたのではないでしょうか。


>「それがくさくていっちょんうまなかたい!」

やっぱり狸は臭くてまずいのか(^_^;)

それでも、昔はタンパク源として貴重なものだったのでしょうね。

猪肉や鹿肉はかなり美味ですから、現在でも食材として需要が見込まれるのではないかと思います。
近年、野生の鹿が増えすぎて、森林資源が荒らされることが問題になっていますし、猪が人里に現れて、人間を襲うといったニュースも散見します。

どうも現在より江戸時代のほうが、こうした野生動物を狩って食料にすることが広く行われていたのではないか、と思えるのですね。


ここ高知でも、野生の鹿肉を名産品として売り出し、地域活性化に役立てようといった動きも見られますが、→http://www.kigenhaeikayo.com/food/momiji.html
謳い文句が「鹿肉は低脂肪でヘルシー」というのがいささか残念です(-_-;)。

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しかし一方で、記事一つ一つは、異なる人へ向けての異なるメッセージです。
すなわち、個別記事というものは、どういう人々に何を伝えるか、ターゲットを明快にして書くものだと私は考えています。
そういうところでいちいち、しかし、例外はあります、とか言って全ての人に配慮した注釈を付けると、読む側もメッセージがなんなのかわからなくなります。

したがって、読まれた方の立場次第では、その記事では自分の存在を無視されているように感じる、配慮が足りないと感じられる記載内容があり得ます。
その場合、その記事はほかの人に向けられた記事であると、スルーしていただけたらありがたいです。

よろしくお願いします。

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