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心臓を動かす心筋細胞にはブドウ糖が不要だということ


iPS細胞に限らず、ES細胞でも、未分化性の維持に必要なLIFを抜いて培養しているといろんな細胞に分化していくのですが、最もその分化がきれいに見えるのが心筋細胞です。

培養フラスコの中でどくんどくんと収縮を続けているのが非常に印象的です。

ところが、iPS細胞などの多能性未分化細胞から分化してくる細胞は心筋細胞だけでなく、様々な細胞がフラスコの中に出現して混ざり合うので、これをどうすれば取り分けることができるのかというのはずっと課題でした。

800px-Humanstemcell.JPG
画像はWikipediaよりES細胞塊

ひとつの方法は特定の物質を特定の濃度で添加して、特定の細胞だけが分化しやすいように誘導する方法です。

これでフラスコ内の未分化細胞の20%を特定の細胞に分化誘導できました~!

なんていうと、けっこう成功の方で、この細胞を蛍光ラベルしたモノクローナル抗体で染色したフローサイトメーターとかで単離してやれば、かなり純度の高い細胞群を用意できる、というわけです。


でも、それは大ごとだし、金はかかるのに効率が悪い。

それに対してこの仕事は実用的な点でエポックメイキングですね。



iPS心筋の選別効率化=腫瘍リスク、大幅低減―再生医療に弾み・慶大など

時事通信 11月16日(金)2時3分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121116-00000012-jij-soci

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)から心筋細胞を作り、重症の心不全患者に移植する再生医療が期待される中、慶応大などの研究チームは作製した細胞から未分化のものを取り除き、心筋細胞だけを効率的に選別する技術を開発した。15日付の米科学誌セル・ステムセル電子版で発表した。
 移植用の心筋細胞に未分化の細胞や心筋以外に分化した細胞が含まれると、腫瘍化する危険がある。新しい方法は安全性の高い心筋細胞を効率的に作れるため、臨床応用に向け弾みになるという。
 慶応大医学部の福田恵一教授とアスビオファーマ(神戸市)の服部文幸主任研究員らは、心筋細胞とiPS細胞のエネルギー源の違いに着目。それぞれの細胞内でどのような物質がエネルギー源として使われているかを調べた。
 激しく増殖するiPS細胞や胚性幹細胞(ES細胞)では、大量のブドウ糖を消費して乳酸を排出するのに対し、心筋細胞はブドウ糖の消費が少なく、乳酸を取り込んで活動可能なことが判明。ブドウ糖を除いて乳酸を加えた培地を用意し、ヒトのES細胞から作った未選別の心筋細胞を約1週間培養すると、心筋以外の細胞が死滅し、最大で純度99%の心筋細胞が得られた。
 マウスを使った移植実験ではES細胞で9割、未選別の細胞で4割に腫瘍が発生したが、選別済みの心筋細胞は腫瘍が全く発生しなかった。 



糖質制限のことを書いているこのサイトとしてこの記事を取り上げたのはもちろん、培地からブドウ糖を抜いたという方法に注目してのことです。

命を動かしていくエンジンである心筋細胞、これがブドウ糖を必須のエネルギーとしては想定していないという事実。

このニュースを見るだけでも、赤血球や神経細胞は確かにブドウ糖が大事なんだけど、すべての細胞にとって重要なわけではないことがわかりますね。


心筋細胞は哺乳類に限らず、多くの生物にとって「個体全体に体液を循環させてエネルギーをいきわたらせるために重要な必須の臓器」なわけです。

その主要な構成細胞はブドウ糖不要であるという初期設定を持つこと。

きれいにわかりやすくニュースの形で示されたわけです。


・・・と、書きつつ、関連する知識の文献確認をしていないので、この辺でやめておきます。

自分では、夜中にiPhoneで読んだこの記事、「すごく面白いじゃん!」とか思って布団の中でにへにへ笑ってたんだけど、何を思いついて興奮したのか、何が書きたかったのか、わからなくなってきました。

糖質と細胞とのかかわりについて、もう少しリサーチと熟成の必要なネタでした。

すみません(^_^;)。


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2012年11月16日 13:17

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