糖質制限ダイエット開始後一年、最近、リバってるんですけど・・・?
糖質制限後のリバウンドについて、カナダからお戻りのコバさん(男性)から質問コメントをいただきました。
返信を書いているうちに記事になってしまいそうなボリュームになったので、記事にさせていただきます(^_^;)。
身長175㎝の男性であるコバさんが、糖質制限開始当初はカナダ在住で、3200kcalものカロリー摂取をしていたにもかかわらず、60kgまで体重減少していた。
ところが、それが開始後1年、日本にいる現在は67kgまでリバウンドしてしまった、しかも驚くことに摂取カロリーは2400kcalまで減っているというのです。
糖質制限してもリバウンドしてしまうのは宿命なのでしょうか?
糖質制限後の安定期の体重リバウンドがあることは研究でも明らかにされています。
NEJMの三つのダイエット方法の比較研究結果の体重推移のグラフをもう一度見てみてください。
まさしくリバウンドについて記事にしたものです。
⇒ 糖質制限ダイエットの停滞期について
青いラインの糖質制限ダイエット、最初の半年でぐっと体重が減るのですが、1年から1年半後には30%程度の体重のリバウンドが見られ、そこで安定します。
(あくまでも平均値です、個人差はあります。)
よく見ると、このリバウンドの動きは赤いラインの「低脂肪・カロリー制限ダイエット」の場合にもはっきりと認められますよね。
こちらは「カロリー制限」すると基礎代謝率が下がることが知られています。
カロリー制限を続けることで、身体がそれに対応するために筋肉量を減らすなどして基礎代謝を減らして「省エネ型」の身体になるのがリバウンドの理由だと言われます。
糖質制限の場合について同様の実験研究結果があるのかどうかは文献で検索しきれませんでした。
それでちょっとエビデンスを持っては説明できないのですが、理屈としては同じことでしょう。
糖質制限開始後しばらくは「糖質摂取」から「糖質制限」への変化に体がすぐに対応できず、ケトンの産生と利用、糖新生などが下手なんだと思います。
(糖新生に必要な酵素もそれまでよりも増やさなければなりませんし、脳細胞などの脂肪を使う細胞側の準備も必要です。)
でも、糖質制限を長く続けることで身体が「糖質制限」に合わせた栄養の使い方に完全に適応し、エネルギーロスがなくなることで、体重が「糖質制限食を継続している場合に適正なところ」に戻るのだと思われます。
ということから考えると、「糖質制限食を継続しているコバさんの骨格に応じた健康な体重」は67kg付近なのでしょうね。
男性175cm・67kgというのは素晴らしいBMI(21.9)ですし、現在の基礎代謝量はコバさんにとって理想的な量なのではないかと思われます。。
(参考文献)
ちょっとタイムスケールが違うのですが、糖質制限に体が慣れるために時間が必要という話で、こういうのがあります。
Review
Ketogenic diets and physical performance
Stephen D Phinney
http://www.nutritionandmetabolism.com/content/1/1/2
Nutrition & Metabolism 2004, 1:2 doi:10.1186/1743-7075-1-2
Abstract
Impaired physical performance is a common but not obligate result of a low carbohydrate diet. Lessons from traditional Inuit culture indicate that time for adaptation, optimized sodium and potassium nutriture, and constraint of protein to 15?25 % of daily energy expenditure allow unimpaired endurance performance despite nutritional ketosis.
糖質制限すると最初は運動能力、特に耐久性などがそれまでに比べると落ちてしまうことがしばしばある。
それに適応するための時間、適切な塩分バランス、適切なタンパク質/脂肪バランスが重要である。
というものです。
上の参考文献引用していて思ったのですが、ひょっとして・・・。
コバさんのカナダ滞在のころと日本への帰国後で、タンパク質/脂肪バランスに大きな変化はなかったのか?というのが気になります。
マウスの実験の話につながりますが、
⇒ タンパク質/脂質比率で異なる結果
摂取するタンパク質/脂肪の比率によって、糖質制限時の安定体重が変わるようなことはありはしないでしょうか?
なんかワクワクしてきましたぞ(笑)。
コバさん、カナダにいらっしゃった頃と日本で過ごす現在とで、摂取する糖質制限食のタンパク質/脂肪バランスは大きく変わっていたりしませんか?
あるいはタンパク質摂取源が牛肉主体から大豆主体に変わったとか、脂質が動物質のそれから植物質のそれに変わったとか、質の変化はないですか?
いろいろ気になります。
まずはタンパク質/脂肪をいろいろ設定して、自分で実験してみるかな?
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・・・誰かやってくれないかしらん?
(・_・)ノ☆(*__) ソレデモイシャカイ!
スポンサードリンク 2012年9月20日 08:25 スポンサードリンク
こんにちは!
今日、ブログをチェックをしたら、なんと!自分の質問が記事になっているではありませんか!!
一人で感激しておりました(笑)ありがとうございます!
実験結果を拝見させていただきました。どのダイエット法も多少のリバウンドはあるのですね、知りませんでした。
Q:「タンパク質摂取源が牛肉主体から大豆主体に変わったとか、脂質が動物質のそれから植物質のそれに変わったとか、質の変化は?」
A:ものすごく心当たりありますよ!
カナダでは脂質が多かったのが日本では大豆中心になりました。
1日の食事は大体ですが、
カナダでは『厚揚げ、卵(1日6個)、バター、オリーブオイル、豚肉200g、ソーセージ大3本、マヨネーズ大さじ6~7杯』
日本では『豆腐一丁(300g)、おから400g、肉100g、厚揚げ、卵(一日2個)、納豆、味噌汁(3~4杯程度)』
追記で、日本では糖質量が合計10gくらい増えていますが約90g/日で、運動量もカナダのときと差ほどかわりません。
やはり大豆主体の食事に変化したのが何か関係があるかもしれませんね!!
ホント、誰か実験してくれませんかね・・笑
でもこのように客観的に原因がわかってきましたので本当に感謝しております!
コバさん
具体的な食事内容ありがとうございます。
なんだか、すごく、マウスの実験と似てきた感じがします。
マウスに
糖質0%、脂質95%、タンパク質5%の食餌を与えると痩せるのに、
糖質0%、脂質80%、タンパク質20%の食餌を与えると逆に太るのです。
マウスの場合はもともと糖質が主食の生き物ですから、人間に単純に当てはめるわけにはいきませんが、脂質の比率を高くすると痩せるのです。
コバさんの食事内容も脂質が減り、タンパクも植物性たんぱく主体になり、ということで、どちらがどうとはわかりませんが、同じ糖質制限と言っても、タンパク質と脂質のバランス次第で全然異なる結果が生まれそうに思えてきました。
また、「タンパク質の質の違い」ですが、こちらも、今ちょっと思いついたことがあるので、調べてから記事にできたらしてみます。調べられなかったら推測記事になっちゃうのでアップしないかもです。(^_^;)
初めまして
大変学術的でかつ実践的な記事、いつも興味深くそして楽しく拝読しております。
摂取する蛋白質、脂質の種類と減量の関係についての質問というか、ご相談です。(すいません。長文です。)
私は40代半ばの女性。既往特になし。(耐糖能異常指摘されたこともありません。)現在BMI26(62~3キロ)
十数年の乳菜食主義から3年前にビーガン(完全菜食主義)になりました。
ですので肉、魚、乳製品、魚介類すべて全く食べません。
ちなみにアルコールもたばこ(関係ないか…)も一切取りません。
糖質制限を開始して3か月。体重は開始当初から徐々に2~3キロほど減っただけです。
現在の食事内容は大豆製品や小麦のグルテン、ナッツ類やオリーブオイル等の植物性の脂質、あとは昆布以外の海藻、低糖質の野菜類、キノコ類をいろいろ組み合わせ、低糖質のパンやおからのケーキ等作って食べています。調味料にも気を付け、糖質制限を初めて2週間目くらいに採血をしたところ、尿中ケトンが2+血中総ケトン体が672μmol/Lで、家族に「梅酒のにおい」がするといわれていたので、糖質制限はうまくいっているものと思われます。
その他、肝腎機能血糖も異常なくHbA1cも5.0%(NGSP)でした。
経過としては、若い頃からBMI23~26あたりをうろうろ。結婚して妊娠、出産を機に太り始め、2008年から筋トレ主体のジム通いを始めたものの
2010年末にはついにBMI30をたたき出し(!)
2011年1月から筋トレに加え標準的なカロリー制限とスロージョギングを追加。12月までに12キロ減量。
2012年1~2月に停滞。3~5月に2~3キロのリバウンド。
6月から江部先生の糖質制限ダイエットを知って即開始しています。(糖質制限を始めてからリバウンドした分が減ってもとに戻ったことになります)
特記事項
1)爪で調べる遺伝子検査キットで
ADRB3変異ヘテロ型
ADRB2正常ホモ型
UCP1変異ホモ型
結果基礎代謝が一日250キロカロリーほど普通の人より低いと診断されています。
2)昨年1月腹部エコーで「軽度脂肪肝」指摘されましたが、
今年2月は同検査で「脂肪肝ではありません。膵臓も綺麗に
描出されるし、(皮下脂肪はありますが)内臓脂肪はむしろ標準です」と内科医師にいわれました。
一日の摂取カロリーは日によってばらつきはありますが平均で1500キロカロリーくらい(厳密に計算はしていません。もっととっているのかも…)
筋トレは趣味で2008年からはまっており、今は週2回ジムに行っていつもどこかに筋肉痛がある状態です。
(ベンチプレスが40キロ。デッドリフトで55キロメインセットで組んでいます。スクワットやラットプルのマシン等駆使して結構追い込んでいます。)
体重はゆっくりではありますが、減少傾向にありこのまま糖質制限を続けるつもりです。
ただ、食事内容や運動をしている割には減少幅が少ないのは「遺伝子のせい」か、「食べていないつもりでカロリーを実はとっているせい」かと思っていましたが、もしかして「菜食主義のせい」??かとも…。
やはり肉を食べない食事では糖質制限の効果も減じるのでしょうか…?
ご多忙中大変恐れ入りますが、先生のご意見、お考えをお聞かせいただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
4つのダイエット方法(ラーン、オーニッシュ、アトキンスなど)で不足する栄養はなにか、という研究で、
長期に渡り低糖質(アトキンス)をすると、ビタミンC、ビタミンB1、葉酸、マグネシウム、鉄分の不足がみられるとありました。
そういう観点からも、栄養素の欠乏からリバウンドしやすい、ということはないでしょうか?
※訂正します!
すみません、鉄分が抜けてました。
春の花さん
コメントと、詳しい実践データをありがとうございます。
かなり筋肉質なVeganさんですね。
そして基礎代謝が低いのでそれだけ運動しながら摂取カロリーは抑えておられる。
頭が下がります。
すごく健康そうですね。
さて、食事内容や運動の割には体重の減少幅が小さいということ、それが肉を食べないせいかどうかということですが。
・・・正直、わかりません。
コバさんの例から考えると、豆腐を脂身たっぷりの豚肉やレバーに置き換えてみると、ひょっとしたら痩せるかもしれません。
Veganの方で足りなくなる可能性が高いのが鉄分、タンパク質(肉に多いアミノ酸)、脂肪、ビタミンB群だと思います。
逆に大豆類で肉より多くなるアミノ酸もあると思われ・・・。
でもまだ栄養成分の比較に手間取っていて、理屈がきれいにつけられないので、もう少し調べてみます。
歯切れが悪くてすみませんが、質問していただいた内容はコバさんのコメントから、まさしく現在調べて考えている最中のことなのですみませんです。
ただ、一つ言えることは、石器時代の食生活が人間本来の食生活だとすれば、動物性の脂肪やたんぱく質を摂取するのはまったく自然なことです。
もしも春の花さんの野菜生活が何か宗教的理由からとかではないのであれば、豆腐や大豆のタンパク質、オリーブオイルを豚肉や豚レバーに置き換えて試してみられてはいかがでしょうか?
迷った時は頭で考えるよりも自分の身体に訊いてみる方が早いかもですよ。
・・・んで、結果を教えてもらえると嬉しいです。(・_・)ノ☆(*__)
(無責任ですみません(^_^;))
質問への理論的な回答は可能であれば後程、記事にします。
ナオさん
コメントありがとうございます。
そうなんですね、なにか肉食糖質制限と野菜食糖質制限でそれぞれ偏る栄養素がないかと考えたのですが、ご提示いただいたビタミンやミネラルの場合、少なくとも肉やレバーやナッツや卵を食べて、葉物野菜もわしわし食べていれば、十分に足りると思うのです。
(豆腐や大豆などの植物中心の場合はひょっとしたら足りないかもしれないです)
もちろん、「足りる」ということと、「望ましい量摂取する」ということは異なるわけです。
お酒をよく飲む人は葉酸をアルコール分解でかなり使ってしまうので、「最低摂取量」では不足する可能性があります。
そしてこれがリバウンドにつながるかどうかですが、葉酸が不足するとドーパミンもセロトニンも生産量が少なくなる可能性がありますから、神経系の興奮が不足する、すると基礎代謝が落ちる、・・・ということはあるかもしれません。
でも、これらの栄養素の必要量、あるいは望ましい量というのは遺伝的にも環境的にも個人差がすごく大きい部分だと思いますので、全員でこれが問題となるとも思いにくいのです。
(神経伝達系の個人差ってものすごく幅があるように私には思えます。)
原因だとしてもマイナーなものなのではないかなと。
それともう一つ、2008年のNEJMの研究では研究所の食堂のランチメニューによる管理が行われていました(イスラエルでは昼食が最も重要で、朝と夜は少なめなのだそうです)。おそらくビタミンやミネラルといった微量栄養素の摂取に関しては、食堂の栄養士がきちんと管理していたはずで、「それでもどのダイエット方法でもリバウンドする」ということは、体が適応するという部分が大きいのではないかと思います。
私としては、動物性と植物性の違い、そしてタンパク質と脂質の比率の違いの方が体重への影響は大きいように思っています、今のところは。
迅速かつ丁寧なお返事をいただきありがとうございます。
恐縮です。
Vegan生活三年ですが、ご指摘のように鉄分等の栄養不足に関しては正直「大丈夫」という自信はないので、定期的に健診を受けたり、ボランティアと実益を兼ね献血をしてチェックしています。(この程度の検査ですので厳密には不足がないかどうかわかりませんが…)以下、ご参考までに。
鉄分:ここ数年 赤血球420万/μl Hb14g/dl Ht40% あたりで変わらず、MCV等すべて基準値内(血清鉄やフェリチン等は測定していません)
蛋白質:総蛋白7.6g/dl アルブミン4.3g/dl(今年6月のデータです)
脂肪、ビタミンB群あたりはよくわかりませんが、全身の皮膚、粘膜や髪や爪の状態も体調も特に問題なく、(歳のわりにはしわが少ないとお世辞かもしれませんが、よく褒められます(*^。^*)~あ、しわが少ないのは肥満のせい??)日中は元気に勤務、家事をし、筋トレも問題なく行っていますので、自分としては「まあ大丈夫、なのかな??」と…。
2008年からずっと、ケンタイのpower protein (professional type)(大豆たんぱく100% アミノ酸スコア100 各種ビタミン、ミネラル配合)をトレーニングの直後は必ず一回約30g(これを週二回)摂取していますので、その影響も少しはあるのかもしれません。
それから…。
私のVegan生活は宗教や信仰ではないのですが、
「どうしても動物を殺したものを口にしたくない」菜食主義で
(植物はごめんなさい。何も食べなければ死んでしまうので)
すいません。豚肉等を食べてどうなるかの実践はご報告できません。申し訳ないです。
先生の新しい記事、楽しみにしております。
春の花さん
Hbが14もあるのなら女性としては文句なしの領域ですね。
アミノ酸もそういう製品ならば大豆で不足するメチオニンやトリプトファンも補正してあるのかもしれませんし。
・・・とすると脂肪の比率の問題なのかな?
カロリーの中に占める脂肪の比率を増やしてみるというのは実験的には良いかもしれません(オリーブオイルでギトギトになりそうですけど(^_^;))。
「どうしても動物を殺したものを口にしたくない」
了解いたしました。
考え方は人それぞれですし、春の花さんは現在も健康なのですからVegan貫かれてください。
私は毒がなければほとんど何でも食べます(食べれます)。
ただし、蜘蛛、ムカデやゲジゲジは生理的に無理。。。って、春の花さんが動物を食べないのは私が蜘蛛やムカデは無理って思うのと同レベルの不快感に遮られてのことなのかもですね、納得です(笑)。