白米や小麦粉ではない、悪いのは現代のライフスタイルなのだ。
日本糖尿病学会の推奨する「糖質60%で低脂質で低カロリー」の糖尿病食、これが糖尿病の人にとってどれほど危険な食事内容であるかにつて何度か書いてきました。
⇒ 禁忌である75gOGTTを毎食摂取するように指導している日本糖尿病学会
そしてそれがどうやって決定されたのかについても書いてきましたし、そこには厚生労働省の、というよりは農林水産省の思惑が強く働いていることも書いてきました。
⇒ 糖質60%が理想的だとだれが決めたのか?
日本糖尿病学会から「命に関わる危険性がある、推奨できない」とされる糖質制限食が逆にADAやIDFといった海外の、あるいは国際的な上位機関では容認されている事実も書きました。
⇒ IDFの糖質制限へのスタンス
ここまで書いてくると、白米などの糖質を主食としてがっつり食べることが糖尿病を生み出している、白米を主食として崇め奉る考え方が間違いである、そう思われるかもしれません。
ですが、白米や小麦粉やジャガイモは悪くないのです。
それどころか、、とても経済的ですばらしい栄養源なのだと思います。
人類の健康状態をよくして、そして爆発的に人口を増やしたのは人類が穀物やジャガイモなどの糖質を栽培して安定的に摂取できるようになったからなのです。
人類の現代の繁栄の礎となったのがそれらの米や小麦やジャガイモであり、彼らが悪いのではないのです。
穀物や糖質の多い植物の食べ方、そして、それを食べる我々側のライフスタイルに主な問題があるのです。
端的に言えば、日本人が、いいえ、世界人類が太ってしまったのは
「日常的な消費カロリーが減ったこと」・・・①
が最大の原因だと思われるのです。
二番手に来るのが
「必要以上の栄養を安定的に摂取するようになったこと」・・・②
これが第二の原因だと思われます。
(この②を何とかしようとして、スタート時に勘違いしてしまって失敗しているのがNCEPであり、久山町であるわけです。)
糖質制限は目からうろこ的に効果的な②の要因対策ですし、糖尿病対策という上ではこれ以外にありえないという根本的な対策です。
ですが、そもそも我々はどうして太ったのか考えるときに、「日常的な消費カロリーが減ったこと」・・・①、これをまず念頭に置いておかなくてはなりません。
以前にも書きましたが、
サッシ窓や断熱材、そしてエアコンが普及して、気温の変動に対する我々自身の体の体温調節で費やすエネルギー消費が格段に減ったのがわれわれ、先進国の現代人です。
これによる消費カロリーの低下は少なからず肥満と糖尿病の増加に貢献していると思われます。
1980年代から肥満と糖尿病が止まらなくなったのは農林水産省の米重視政策だけでなく、我々、日本国民のライフスタイルの変化に負うところが大きいはずです。
エアコンの普及だけではありません、労働の機械化、省力化により、最近になって我々日本人を含めた先進国の国民の労働時間は劇的に低下しています。
例えば1970年には日本の労働者の年間平均実労働時間は2239時間でしたが、2009年以降は1800時間を切っています(2011年は1788時間)。
機械化で重労働も減った上に、軽労働主体の実労働時間も20%減っているのです。
これは家庭でも同様ですよね、1960年代から日本でもシンプルな洗濯機が普及し始め、1970年代に全自動洗濯機が登場して主婦の労働時間と消費するエネルギーがものすごく節約されます。
同時に掃除機も出てきて、ここでも消費するエネルギーが減っています。
掃き掃除と拭き掃除の必要な畳の生活から、掃除機のかけやすいフローリング生活へとライフスタイルも変化しました。
炊事もそうですね、スーパーマーケットで出来合いのお惣菜を買ってきたり、めんどくさければカップめんで済ませることもできます、これらの出現も70年代で、広く普及し始めたのは1980年代からです。
料理や後片付けが大変なこと、つまりエネルギーを消費する作業であることはみんなよくわかっているでしょう?
料理なんてしないから知らないわって人は、和食をしっかり出してくれる地方の旅館に泊まった時に、出てくる料理を見て、それを準備して片づけることを想像してみてください。
つまり、日常的に消費するカロリーそのものが日本人(先進国で暮らす人々すべて)では労働者も主婦も、著しく減っているのです。
この間に摂取カロリーはどうなったかというと、 から へと、摂取量は減ってはいますが、労働時間の低下、労働負荷の低下に比べれば微々たる減少で、不変と言っても変わりません。
中学高校大学とスポーツをしていた人が社会人になってスポーツをする時間が取れなくなり、だけど食生活は昔と変わらないと、てきめんに太っていく場合がありますよね、それと同じ状況なのです。
かつて、労働時間が長かった人類にとって、糖質はそれを支える安価で重要なエネルギー源だったのですね。
はたらくおじさん、はたらくおかあさんにとってみれば、消費するエネルギーに見合ったエネルギー供給源として最高の食べ物だったのです。
でも、それは「三丁目の夕日」の時代、せいぜい「巨人の星」や「秘密のアッコちゃん」の1960年代までの話、「機動戦士ガンダム」の1981年以降には摂取を制限するべき食べ物へと変化していたのです。
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不幸なことに、まさしくそのタイミングでNIHや日本糖尿病学会が勘違いしてしまいました。
「試験管の中で燃やしたカロリーは高いけれども、効率よくエネルギーとしては使われない脂質」の摂取量を減らし、
「試験管の中で燃やしたカロリーは低いけれども、非常に効率よく肥満に結び付く糖質」の摂取量を上げるように指導したのです。
だから、ますます消費エネルギーと摂取エネルギーとのギャップが大きくなってしまったわけですね。
何度も書きます。
我々が現在肥満している第一の要因は、運動不足(労働時間や日常作業の低下・体温調節による基礎代謝の低下)による消費エネルギーの低下にあります。
そこで勘違いして糖質摂取を増やしてしまい、エネルギー摂取過剰に陥っていること、これは二番目の要因です。
もちろん、その二番目の要因を是正する糖質制限は非常に効果的なダイエット方法で、現代日本の成人のほとんど(禁忌の場合を除いて)にお勧めしたい食事療法です。
でも、もしもあなたがどうしても過剰な糖質摂取を続けたい、糖質制限なんてしたくないというのであれば、別の方法もあります。
1960年代、あるいは1950年代のライフスタイルに戻ればよいのです。
食事で言えば、伝統的な和食にして、砂糖たっぷりの清涼飲料水は飲まないで、夏は麦茶か水、冬は玄米茶か白湯を飲んでください。
仕事なら、パソコンを使わない、コピーも使わなければFAXも使わない、移動は極力歩くか、最低限度の公共交通機関、オフィスにももちろんエアコンは入れない。
家事なら、家でエアコンを使わない、洗濯機も掃除機も使わない、料理は出来合いのものを使わない、すべて素材を買ってきて自分で調理する、インスタント食品なんかもってのほか。
そういう生活に戻れば、精製された糖質摂取量は減りますし、毎日、こまめに忙しく体を動かし続けるしかありません。
何も構えて運動をする必要はなくて、歩く、あるいは食後すぐに労働を始めるなど、日常的に常にまめに体を動かしていれば糖質を摂取してもこれはすぐに筋肉に吸収されて消費されます。
血糖値はさほど上がらず、インスリン分泌量も抑えられますので、無意味に肥ることもありません。
⇒ 糖質を食べてしまったらどうすればよいか
その生活ができるのであれば、糖質制限は必要ありませんし、お金もかかりませんし、節電にもなって地球環境にも優しいはずです。
日本人がお米から糖質をたくさん摂取していたのは、1960年代以前のライフスタイルであれば問題ない、間違いどころか理にかなった経済的な食事でした。
お米が悪いのではないのです、変わってしまったのは我々のライフスタイルの方なのです。
むかし、お米は素晴らしい食べ物だったのです。
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スポンサードリンク 2012年8月26日 12:31 スポンサードリンク
日曜日なので、各都道府県の糖尿病対策がどうなっているかあれこれサイトを見てみました。
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徳島県の糖尿病の現状と対策 2010年9月13日http://www.pref.tokushima.jp/docs/2008111700039/
県民の健康状態
平成15年県民健康栄養調査の結果から、「食べ過ぎ」「運動不足」による「肥満」の人の割合が高くなっています。
●食べ過ぎ
1人1日当たりエネルギー摂取量は全国平均と大差ないものの、エネルギー摂取基準を2割以上上回る人(食べ過ぎ)の割合が高く、県民の「3人に1人に食べ過ぎの可能性」が考えられます。
●運動不足
1日当たり歩数をみると、男女とも全国平均から「約1000歩も少ない」状況にあります。
【1日当たり歩数】
区 分 徳島県 全国平均
男性(20歳以上) 6,507歩 7,575歩 ▲1,068歩
女性(20歳以上) 5,931歩 6,821歩 ▲890歩
●肥満
このようなことが原因となり、県民の「約3割に肥満」の傾向がみられます。
【肥満~BMIが25以上の人の割合】
区 分 徳島県 全国平均
男性(20歳以上) 37.2% 27.8%
女性(20歳以上) 26.1% 22.2%
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うどん県の香川と徳島が糖尿病患者の受療率が高いわけですが、「歩け歩け運動」や「食べ過ぎに気をつけよう」キャンペーンでは、心もとないですね。1日10分多く歩くのもいいですが、ライフスタイルをあまり変えられないようなら、糖尿病合併症の危険を明示して、糖質制限およびカロリー制限を徹底しないと・・。男性の肥満率がひどいことになっていますね・・。
長谷川さん
いつも有用な情報をありがとうございます。
さっそくこれ、引用させていただいて記事にしてみたいと思います。
多謝!
追加資料です
カルビンチョ先生。
いつもブログ楽しみにしています。
さて、「徳島県の現状と食生活指針」です。
http://www.pref.tokushima.jp/docs/2012041700250/files/h22syokuseikatusisin.pdf
県では、少し糖尿病の疑いのある人が減って喜んでいるようです。
食事のグラフがありますが、「いも類・果物類・炭水化物の摂取が減り」
「歩行数が増えた」としています。
玉石混交みたいな指針です。
取り急ぎ・・・
今後もよろしくお願いします。
これから、焼酎飲みま~す。
わんわんさん
徳島県庁の方々も根本的なところが理解できてないんでしょうね(^_^;)。
日本糖尿病学会の指針に従えば「うどんが悪者」だなんて絶対に思わないでしょうし、批判の的にされるのは果物や加糖食品だけ。まあ、その辺だけでも制限しないよりはましなんでしょうけれども。
興味深い本を見つけました
小麦は食べるな!
ウイリアム・デイビス 著/白澤 卓二 訳
http://www.nihonbungeisha.co.jp/books/pages/ISBN978-4-537-26033-5.html
是非、カルピンチョ先生のコメントを・・・
(忙しくて、読む時間ないかなあ・・?)
わんわんさん
これ、すごく面白そうですよね。
実は土曜日に本屋さんで見かけたんですけど、我慢しました(笑)。
本屋さんによれたら探してみますね。
超朗報です
糖質制限で私は糖尿病が完治しました。
それを担当医が認めました。
当院で初めてのことです、と院長が私に言いました
そして、私もこれから糖質制限食を勉強して当院もそれを
取り入れますと断言しました。机の上には江部先生の
医療従事者向け糖質制限の本が有りました。
私は先生に"有難う御座います"とお礼を言いました
次の検査日は12月 糖質制限一年生です
土屋
土屋さん
よかったですね、ほんとうによかったです!
土屋さんがエビデンスを見せつけながら冷静に対処してくださったおかげで、先生方も思いのほかスムースに糖質制限にきちんと向き合ってくださったのでしょう。
ありがとうございます。
土屋さんはご自身だけでなく、その病院にかかられているたくさんの糖尿病の患者さんに新たなる治療への道を開いてくださったのです、感謝いたします。
こういう働きかけで糖尿病の食事療法の概念がどんどん変わって行ってくれたらうれしいです。