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久山町でなぜ糖尿病が増えているのか?


「久山町研究」というのは日本が世界に誇る疫学研究のことです。

福岡県の福岡市東部に接する人口8000人程度の小さな町、久山町の住民の健康状態について、九州大学の第二内科が中心となって1961年以来、ほぼ全住民の健康管理を続けているものです。

これのすごいところはいくつもあるのですが、ともかく、40歳以上の住民の健康診断データをずっと取り続けていて、そして住民のみなさんもその研究に大変協力的であり、ゲノム解析にも剖検にも積極的に協力してくださっています。

九州大学の「久山町研究」のホームページ

上のページから抜粋してみます。

久山町研究の最大の特徴は、この剖検率の高さにある。正確な死因を知るという点において、剖検以上に正確な診断方法はない。追跡調査の精度も高い。これまでに行方不明となった対象者は数例に過ぎず、追跡率は99%以上。また、久山町研究では40歳以上の住民を5年ごとに集団に新しく加えているため、生活習慣の移り変わりの影響や、危険因子の変遷をもうかがい知ることができる。

最近では、環境医学分野の教室員のほか、九州大学病態機能内科学、眼科、精神科神経科、心療内科、呼吸器科、予防歯科、健康科学センターなどから大学院生や研究者が集まり、研究テーマが生活習慣病全体に広がった。久山町研究は、臨床と疫学の両方を俯瞰できる幅広い視野を持つ人材を育てるユニークな疫学研究である。2002年に、従来の環境因子に遺伝子解析(SNPs)を加えた生活習慣病のゲノム疫学がわが国で初めて開始され、成果をあげている。


さて、そんな素晴らしい成果を上げている久山町研究、当然ながら糖尿病に関する研究も非常に熱心におこなっています。

最近の研究でユニークでそして驚くのが、胃がんやアルツハイマー病の発症と糖尿病あるいは耐糖能異常との関連性の高さです、特に後者の、血糖値が高い方でアルツハイマー病が発症しやすいという結果は剖検率の高いこの研究ならではの結果です。


さて、その久山町研究の中で残念ながら、ちょっと首をかしげる結果があります。

研究内容がおかしいというのではなくて、久山町の住民の健康にいささか、不安があるということです。

それは全国平均に比べて非常に糖尿病発症率が高いところです。

以下のグラフをご覧ください。
久山町研究の糖尿病に関するページのグラフをキャプチャしました)

久山町男性.png
久山町の男性の1961年から2002年の変化

久山町女性.png
久山町女性の変化

これらは久山町の40歳以上の住民の方々のうち、肥満、高コレステロール血症、糖代謝異常に分類される方々の比率を1961年、1974年、1988年、2002年に調査した結果をデータにしたものです。
(上が男性、下が女性です。)

これで一目瞭然なのが、1974年から1988年の14年の間に、男性も女性も高コレステロール血症と糖代謝異常が劇的に増えていることです。

肥満に注目してみると、女性ではそれほど変わりませんが、男性では肥満の激増と比例して高コレステロール血症と糖代謝異常が増えています。

これらの数値はその当時の全国平均を大きく上回っています。


さらに不思議なのは1988年から2002年の変化です。

高コレステロール血症に関しては抑え込まれているのに(つまり対策がなされたであろうに)、糖代謝異常は男性も女性も歯止めが効きません。


偏りのほとんどない平均的な日本人集団であるということは久山町研究を開始する上で重要なことでした。

さらに、(その比率を乱さないようにと、意図しててかどうかはともかく)その住人の構成比はずっと日本全体を反映し続けてきました。

日本の平均を表す集団であることは間違いないと思われます。


それなのに、2002年の男性糖尿病有病率は23.6%であり、同じ年の日本人全体の男性糖尿病有病率の15.6%に比べて、かけ離れて多くなっています。女性でも程度の差はあれ、全国平均より多いです。

男性の場合は肥満にも歯止めが効かず、全国平均からどんどん乖離して状況は悪化の一途です。

これはいったいどういう事態なのでしょうか?


久山町の住民の方々はとてもまじめで協力的な方々です。

そして、特にこれといった産業のない久山町では、九州大学の疫学調査に選ばれたことを好機と捉えて、「健康の町」としてのイメージづくりにまい進してきました。

高度成長の時代には地方都市はニュータウンを設置して企業を誘致して町の発展に努めようとするところが多かったのですが、久山町は外からの人を引き込むことなく、自然を大事にして、町の人々同士の結びつきを大事にして、そして何よりも住民の健康を守る町政を町中が一丸となって進めてきました。

その中心にある医療が九州大学を中心とした久山町研究スタッフの労を惜しまない貢献にあったことは言うまでもありません。

そんなに健康にたいしてまじめで一生懸命な久山町でどうして糖尿病がどんどん増えてしまうのでしょうか?


これは糖質制限について書かれている皆さんのブログでしきりに取り上げられて疑問視されている問題でもあります。

高雄病院の江部康二先生のブログでも何度か取り上げられています。

久山町研究の背景とデータの信頼度の高さ

どこに原因があるのかを求めていくと、どうしても、1988年より以前に導入された何らかの働きかけがそれ以降の久山町住民の肥満と糖代謝異常の増加に影響していると考えざるを得ません。

それがどこにあるのか考えてみました。



実は、久山町研究に関わっているのは九州大学の内科だけではありません。

九州大学医学部のほかの研究室の方々や、他の学部の方々、さらには他の大学の方も研究に参加して住民の健康維持のために努力してこられました。

その一つが福岡市にある中村学園大学という栄養学で有名な大学です。


この大学では久山町住民の栄養摂取調査を行うだけでなく、栄養摂取指導にも積極的にかかわっていらっしゃいます。

彼女たちが久山町研究に関わったのはいつからなのか調べてみたところ、どうやら1985年ごろにはすでに研究に参加し、町で多くの方からアンケートを取り、調査指導を始めていたようなのですね。

そして1988年以降も積極的に栄養摂取指導について献身的にかかわってこられました。

1988年時点ですでに全国平均を逸脱していた久山町住人における糖代謝異常の多さ。

そのことから、九州における栄養学の草分け的な中村学園大学の先生方が、食事指導で治して差し上げようと努力されたであろうことは想像に難くありません。

(実際に久山町のホームページを見ても住民への栄養摂取指導が専門家からなされていることがうかがえました。)
⇒久山町のHP 生活習慣病予防健診の内容

ということは、ひょっとしたら現在の栄養士の方々が理想とする栄養指導を徹底したこと、そしてそれに真面目な久山町の住人の方々が協力したことが、糖代謝異常患者の数をうなぎ上りに上げているのではないか、そういうことが想像できます。


実際のところ、中村学園大学の先生方は糖尿病や糖代謝異常の方々に対してどのような食事療法を進めていくのが正しいとお考えなのでしょうか?

それも調べてみました、すると、2006年に中村学園の先生が講演された記録の中に以下のような具体的な食事指導の内容の文章を見つけました。


「図17に食事バランスガイドを入れておりますが、10項目の食生活指針を行動次元に移すため、学識経験者の方達が集まって日本栄養士会の会長の中村丁次さんも加わって検討されたものです。
次が、実際に久山町のおばあさんに教える1600kcalの食事なのですが、まず、朝ご飯は、麦ご飯、卵入りかぼちゃの味噌汁、小松菜のソテー、みかんとなっております。これで444kcalです。
これを食事バランスガイドで見ますと、主食の黄色が、1サービング。味噌汁に卵が入っていますので主菜の赤色が1。小松菜のソテーで副菜の緑が1。みかんで果物の青が1、ということになります。
次に昼食では、ご飯で主食の黄色が1サービング。鰺の開きで主菜の赤が1。きのこサラダと間食に食べたサツマイモのモンブランで副菜の緑が2。間食の際に飲んだ牛乳で牛乳・乳製品の紫が1、となります。
最後に、夕食では赤米を使った小豆ご飯と、豚肉の味噌炒めレタス巻き、アサリと切り干し大根の煮物、豆腐の吸い物、柿となっております。全てで、主食が2サービング、副菜が1.5、主菜が2、果物が1となります。
このように朝昼夕で1600kcalのバランスということになります。」


主食としてお米中心に考えてあります。

日本糖尿病学会の推奨する、きわめて標準的な糖質60%の日本食であることがうかがえますね。

さらに、その前には、こういう文章もあります。


「厚生労働省では、大雑把にこういうような栄養の取り方をしたら、適正な食事ということにしております。
例えばエネルギー摂取量では、適切な量のプラス・マイナス30%摂取している人も良しとしております。これからいきますと、図11にありますように、エネルギー摂取量が適正な人は久山町で68.1%(2405人)、国民栄養調査では71.5%でした。
脂肪の摂取量については、1000kcal当たり33g未満だったら適正となっておりますが、久山町では81.2%、国民栄養調査では73.6%の人が条件をクリアしておりました。
6つの条件全てをクリアした人は久山町では27.7%(979人)と、大雑把に見ても、適正な食事を摂っている人は1/4しかいない結果となりました。
しかし、国民栄養調査では15.1%しかいないのですから、まだちゃんとしているなというのが伺えます。」


(以上の文章は以下の資料より抜粋させていただきました。
 基調講演 「日本の食文化と大豆」. 中村学園大学短期大学部食物栄養科教授. 城田 知子氏 )



・・・さて、おわかりでしょうか、中村学園大学の先生が理想とするいえ、厚生労働省が理想とする食事スタイルを取っている人が久山町には27.7%います、全国平均の15.1%を大きく上回っています。真面目に取り組まれています。

この数字、なんだかひっかかりませんか?

久山町の男性糖尿病有病率は23.6%であり、日本人全体の男性糖尿病有病率は15.6%ですよね。。。



九州大学や中村学園大学の先生方が、そして久山町の住民の皆さんがまじめに健康のことを考えて努力しておられるのは疑いようのない事実です。

ですが、糖代謝異常と肥満の方の増え方に関しては、成功どころか全国平均よりもはるかに悪化している結果となっていること、これもまた明らかな事実です。

関係性はないのでしょうか?

ぜひ、ここで、「糖質60%の日本型食事」が本当に糖代謝異常の増加を止める食事として適切であったのかどうか、検討していただけたらなと思います。

「食後高血糖が糖代謝異常を悪化させる」、「食後血糖に影響を与えるのはほとんど糖質摂取だけである。」、この二点について考え直していただきたい。

本当に、心から、そう願います。




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2012年8月12日 23:42

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コメント(32)

読売新聞「医療ルネサンス」『久山町から』で5回連続の掲載がありました。
1.脳卒中と血圧の関係解明
2.認知症「全国400万人以上」
3.糖尿病は万病のもと
4.「和食+牛乳」で認知症予防
5.仲間との運動も効果的

*久山町は日本の縮図。研究当初多かった脳卒中を激減させた。
*認知症は高齢化の進む日本の大きな問題。九大教授の清原裕氏曰く「国の推計はまだ甘い、久山町のデータから計算するとすでに400万人を超えている」
国の推計では65歳以上での認知症の患者は9.9%、久山町では
1985年で6.7%だったのだ2005年には12.5%に増えている。
*食生活の欧米化などで久山町でも肥満(BMI25以上)が増えている。男性40歳以上1961年7%→2007年31%女性13%→22%
さらに深刻なのが糖尿病。予備軍まで含めると男性12%→43%
女性5%→27% 糖尿病蔓延が認知症の急増を招いている。
久山町開業医曰く「高血圧治療が進み脳卒中が大幅に減ったことで、認知症や糖尿病の問題が注目されてきた。今すぐ対処しなければ、手遅れになる」と危機感を抱く。
認知症や糖尿病を防ぐにはどうすればよいのか。久山町研究で見えてきたヒントがある。
*久山町で一人暮らしをする82歳のおばあちゃん。畑で育てた季節の野菜を主に、良質のたんぱく質を含む大豆や卵、肉をとる。最近血糖値が高くなってきたので朝のヨーグルトにマーマレードをやめきな粉にした。→中村学園大教授城田氏曰く「理想的な食事」である。
海外ではたっぷりのオリーブオイルを使った季節の野菜、ナッツ、魚介類が豊富な「地中海食」が認知症を予防することが知られている。しかし慣れ親しんだ食事を切り替えるのは難しい
清原教授曰く「日本人には『和食+牛乳』の組み合わせが良い」
1988年健康診断を受けた住民(60歳以上)17年間調べ、その結果,「大豆製品と豆腐」「緑黄色野菜」「淡色野菜」「藻類」「牛乳・乳製品」を多く食べる「和食+牛乳」の人は認知症の発症率が4割近く低いことが分かった。
*40、50歳代から予防の意識を持って運動、日常生活で体を動かすことが大切。

とまあこんな感じですが・・・。
2の「和食+牛乳」にはオイオイと突っ込みたくなりました。
だって九大の小澤未央先生が1月の学会で発表されてます。
   [久山町研究]‘ 認知症リスクの低い食事パターン’

1回の食事において「大豆製品と豆腐」「緑黄色野菜」「淡色野菜」「藻類」「牛乳・乳製品」の摂取量が多く,「米」の摂取量が少ない食事パターンは,認知症発症のリスクを有意に低下させることが示されました。本研究結果から,1回の食事において米の摂取量を減らした分,大豆,野菜,および乳製品で作られた食品を多く摂取する食事,つまり野菜類の摂取を心がけた食生活は,認知症の発症を予防する可能性があると考えられます。

清原先生てば米の摂取量について全く触れてないんですよね。
米の摂取量を少なくすることが肝なのにこれを飛ばしてどうするの。

これじゃ肥満も糖尿病も認知症も減少なんて夢のまた夢ですよね。

久山町関連のお話なのでこちらに書かせてもらいました。
ながながとすみません^^;

記事ネタに使っていただけるなんて光栄です(^^)v
最近とみに「糖質制限はずし」が気になることが多くて(-_-)

読売のこの記事もだし、糖尿病治療関連で放送されるテレビ番組も。

夏井先生のところで話が出てた「熊本県の愚行」ブルーサークルメニューなるもの。これもむかっ腹もの(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
http://kumamoto-dmstaff.org/bcm/index.html
「美味しくてカロリーの気にならない、しかも食べると健康増進の期待できる外食メニュー」と称して高糖質低カロリーメニューを県内の飲食店やホテルから募集したようですね。
きっちり糖尿病学会ご推薦の糖質50%~60%の脂肪を極力抑えたメニューでした。

こんなもので糖尿病が防げると思ってるんですかね、これじゃ久山町と同じ道をたどるだけだと確信できます。

だって、きっちり栄養指導した結果が今の久山町なんですから。

過去の記事に対するコメント、失礼いたします。
久山町スタディからのリンクで改めて読み直してみたのですが・・・。
中村学園大学の城田知子教授の書かれている内容、???うーん、と言いたくなります。主張そのものの大豆の摂取を重視することに関しては異論はありません。大豆を食材として重視することは大賛成です。が、しかし・・・。
<日本の伝統的な食パターンというものは、2000年の歴史を持つお米のご飯が中心です。
え?!ちょっと待ってください、と言いたくなります。
以前のコメントでも、カルピンチョ先生は米が一般的に食べられるようになったのは江戸時代半ばからではないか、と推察しておられましたね。これを、歴史的資料から補足する事は可能です。
一例として高知の事例を挙げます(私は今たまたま高知在住で、以前ちょっと調べたことがありますので)。
土佐の石高は、太閤検地時には9万8000石とされていますが、山内氏入国時(1605・慶長10年)には公式に20万2600石余りとされています。これは長宗我部地検帳(天正15年(1587年)~慶長3年(1598年)作成)に基づいて算出された石高と考えられており、江戸時代初期の土佐の実質的な石高を反映しているとみなされています。
しかし、石高はこの後大幅に増加します。江戸時代を通じて、財政策として新田開発が盛んに行われ、1870・明治3年の廃藩置県当時には49万4000石余に達しています。江戸時代の300年弱の間に石高は2倍以上(30万石弱)増加しているのです。
これは、土佐藩だけに見られる現象ではありません(長州藩などは幕末には公称石高の3倍以上に達していたとも言われます)。身近な地域の地図を見ていただけば理解していただけると思います。至る所に「○○新田」という地名が存在することを。日本民俗学の創始者、柳田国男は大正元年(1912)に発表した『地名の研究』で、新田という地名がついている土地は、享保年間(1716~1736)以降に開墾された土地であろうということを、すでに指摘してます。
「青々とした水田が広がる田園風景」。日本の原風景と考えられがちな風景は、実は江戸時代後半期になって始めて出現した景観とも言えるのです。
こうした水田耕作地の増加に伴い、「商品としての米」の流通も増加します。ただ、米、ことに精製された白米が多く消費されたのは、江戸を初めとする都市部に限られたのではないかとも思われます。精白米の普及に伴って発生した脚気の蔓延が、江戸を中心とする都市部に顕著に発生し、当時、脚気は「江戸病」と称されて江戸固有の風土病とみなされていたことからも、「米のご飯を中心にする食習慣」は、江戸時代後半期でも決して一般的ではなく、都市部に限定された習慣であったと考えられるのではないでしょうか。(都市部以外で糖質摂取量が少なかった、というわけでもないでしょうが、雑穀を中心とする精製度の低い食品が中心であったために、脚気が深刻な問題とはならなかったのではないかと思われます)
米飯(白米)を中心とする食習慣が、本当に一般化するのは、大きな契機としては日清・日露戦争だったのではないか、と個人的には考えております。日清・日露戦争当時、大きな問題となったのが「兵士の脚気」でした。海軍が脚気対策として麦飯を採用して問題解決を図ったのに対し、陸軍は森鴎外を中心として脚気病原菌説を唱え、白米中心の食事を続けた結果、多くの病死者が出たことは、医療関係者の皆様のほうがよくご存知かと思います(素人の知ったかぶり、ご容赦ください)。
日清戦争時の死者の内訳の資料の一例
戦死及び傷死 1576人 病死12081人(内、脚気による死者は約4000人)
なんと戦死者数より病死者数のほうが圧倒的に多いのですね。このうち、脚気で命を落とした兵士の数には驚かされます。この、脚気で死亡した兵士達は、入隊する以前は脚気とは無縁だっただろうと思うのです(そうでなければ徴兵されなかったでしょうからね)。大多数の兵士は軍隊に入る以前には白米中心の食事はしていなかった。⇒軍隊に入ってから白米中心の食事を採るようになった。⇒結果として脚気の発症。こう考えるのが自然ではないでしょうか。
軍隊における食事が、一般民衆の食習慣に大きな影響を与えることはよく知られています。例えば、カレーライスが軍隊経験を通じて広まり、「国民食」とでも言うべき普及をとげたことは、しばしば言及されます。それに倣えば、米(白米)を中心にする食習慣自体が、軍隊経験を通じて民衆に広まった(軍に入れば毎日白い米の飯が食える、というのが、当時の庶民にとっては大きな魅力だったようですから)、その最初の契機は日清・日露戦争であったのではないか。つまり、大多数の庶民にとっては「お米のご飯が中心」の「日本の伝統的な食パターン」とは、ここせいぜい100年くらいの「伝統」しかない、と思えるのです。「ご飯中心が日本人の2000年来の伝統的な食事」というのは、少し考えていただけば、根拠のない妄想(迷信)であることは明らかだと思うのですがね。大学教授ともあろう方には(専門分野が異なれば仕方ない部分もありますが)、もう少し幅広い視野を持っていただきたいものだと思います。ほんの少し、関心の幅を広げればおかしいことに気づかれるはずなんですが。
<地方ではその県の国公立大学の医学部の教授の言葉は神のご託宣のように一切の疑いをはさむことなく崇め奉られますからね。
ドクターの仰るとおり、医学部に限らす、大学教授の言葉は疑いなく受け入れられてしまうのが現状です。権威に惑わされず、自分の頭で判断することが、本当に重要ですね。

ブログのテーマとは弱冠ずれた妄想を書き連ねました。ご容赦ください。こんなコメントでもよろしければ、また書きこまさせていただきます。

お役に立てたようで、何よりでございます。
実のところ、私は江戸時代史や経済史は専門外で、その方面の専門家の皆様から見れば、結構穴だらけの内容かもしれません。でも、大筋ではさほど外れてはいないのではないかと思っております。
あるいは、このような反論が寄せられるかもしれません。「江戸時代後期、あるいは日清戦争当時の庶民の食事内容を具体的に示す史料はあるのか、その当時の糖質・蛋白・脂肪の具体的な摂取比率を示し、米が食事の中心ではなかったことを証明してみろ」と。こう問われれば、「解かりません」と答えざるを得ません。
資料(史料)から過去の実態を知ろうとするとき、問題と思われるのは、多くは「特別な出来事」が中心に記述され、日常生活はほとんど記録されない、という点です。古くから上層階級の『日記』という独特の文学的伝統もありますが、おおむね「今日はこんな珍しいこと・面白いことがあった」ということが主として記録され、日常生活の記述、例えば普段の食事の内容などは記述されることはほとんどありません。
記録から食事内容を知りえるのは、特別なイベントのメニューですね。例えば、明智光秀が信長に命じられて用意した宴会の内容とか。また、大半の史料は権力者サイドから記されたものであり、一般の民衆の日常生活を知るのは困難です。
しかし、逆に言えば、「糖質60パーセント、米を中心にしバランスよく副食を配した食習慣」が、いつの時代にか事実存在し、それが庶民階級にも一般的なものだったか、を証明する具体的史料もないわけです(あったら見せていただきたい・笑)。
結局、状況証拠から蓋然性の高い結論を導くしかないわけですが、米食推進派?の方々が何かと口にする「伝統」だの「2000年の歴史」といった謳い文句はきわめて根拠に乏しいことは確認できると思われます。

糖質制限や、それに関連する情報を知りえたことで、いろいろと触発されたこともあります。先のコメントもその一つだったのですが、ほかにもいくつか抱えているネタがありますので、そのうちまた投稿させていただきます。多少なりともお役に立てれば幸いです。

白米食は、江戸時代後期からというのは、
歴史的検証ではなく、いわゆる妄想ですよね。
なんか変な宗教みたいですね。
ところで日本の庶民は何をたべてたんでしょう
麦、稗、粟、雑穀あたりでしょう。
結局、炭水化物ですよね。

ほほォ~

『なんか変な宗教みたい』ときましたか。←大人気ないリアクション(笑)。
「日本人は米を食え」という主張の方が、よほど「宗教」じみているように思えるのですがね(この「宗教」というのは、比喩的な意味ではなく、実質的な宗教の意味です)。なぜそれが宗教なのかについては、こちらにも書かせてもらっています。
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/cat12/post_178.html#comment-1107
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/cat12/post_178.html#comment-1143


問題とすべき点は、穀類を食べていたにせよ、現在のような白米を中心とする、精製された穀物由来の糖質を多量に摂る(伝統的な食生活と錯覚されている)ような食事は、近代以前には決してポピュラーなものではなかったであろう、ということです。
ちなみに、大正期(20世紀初頭)における食生活を分析した研究にこのようなものがあります。

上 原 里 美
大正期はじめにおける農村地域の食事調査の分析について
『地域政策研究』(高崎経済大学地域政策学会) 第 15 巻 第3号 2013年2月 67頁〜 78頁
http://www1.tcue.ac.jp/home1/c-gakkai/kikanshi/ronbun15-3/09uehara.pdf

この時期でも、「米の飯が中心」の食事は、全国的には普及していなかったらしいことが伺えます。


それと、たがしゅう先生のブログで「相撲の発祥と米文化」という記事があります。
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-75.html
江戸中期における米食普及について考える、非常に示唆に富む考察だと思います。


ともかく。人文系の研究領域は、実験結果や統計値できっちり結果が出るようなものではないので、「科学的ではない」という批判を受けることもありますが(そういえば、「歴史は科学ではない」などと、とんでもない戯言をほざいた大馬鹿者共がいましたっけ(-_-;)、と、これはここでいうべきことではなかったな・・・(^-^;)
それでも、「科学」に値するものにするために、それなりの努力はしているつもりです。「変な宗教」とおしゃるのであれば、どこが変なのか具体的に指摘していただきたいものです。(ほとんど迷惑コメントになっちゃいましたね。すみませんm(_)m)

例えば、練馬区に『ふるさと歴史文化館』という施設がありますが、「人々のくらしの展示」をみると、民衆が精製された白米を食べるようになったのは、第二次大戦後で、戦前までは、あわ・ひえ・よくて玄米を食べていたのが分かります。【砂糖】も高価で貴重なものだたので、一般庶民はほとんど口にすることはありませんでした。

 近くの郷土資料館や資料を読めば、日本人は昔から白米を食べてはいなかったことが分かります。

 日露戦争の時に「脚気論争」があり、陸軍が「兵隊にはお国のために戦うのだから、白米を食べさせなければ・・」といって、脚気のために何万人も死亡した事実を 人々は知るべきでしょうね。

初めまして、糖尿病初心者です。いろいろ読みあさっていて、こちらのブログに
巡り会いました。
身長160㌢の44㌔、肥満の方が多いなか、私の場合は標準体重に不足しています。4月末、眼科の手術を受けるにあたり高血糖Hba1c7.9、高コレステロール274の指摘をうけました。ついでに卵巣膿腫も発見。当然ながら手始めに教育入院をして血糖値コントロール=160キロカロリー&投薬=その後眼科手術を無事終了する事ができました。婦人科の手術は体力回復したところで再入院します。教育入院中に高血糖の恐ろしさを受講し、退院後は食事制限と毎日2㌔歩行運動をまもって1.5ヶ月が過ぎましたが、問題は体重が確実に2㌔減少したことです。入院中にも低体重の解決方法を提起しましたが答えは頂けませんでした。私の場合、これ以上体重を落としたくないのです。体力も落ちるし、表情もやつれて見えます。痩せている糖尿病患者は、他にもいらっしゃるのではないかと思います。ヒントを頂ければ幸いです。ノンネッタ

砂糖と自殺の関係?

秋田の自殺率が気になる
http://d.hatena.ne.jp/goro358/20090522

久山町民の糖尿病罹患率の増加について(九州大学の清原裕教授が説明されているなかから抜粋して説明します。)久山町で糖尿病の有病率が高いのは、受診率が高いこと(約80%)と
75g経口糖負荷試験(OGTT)を使って調査していることによります。すべての疾患の有病率は調査の精度が高いほど高くなります。我が国の疫学調査の受診率は30%を超えません。厚労省の調査は、アンケートとヘモクロビンA1cだけの大まかな調査です。詳しい資料については女子栄養大学出版部
「栄養と料理」2013年11月号P110~115をお読みになってください。久山町民の糖尿病増加と中村学園大学とのの因果関係はないと言うことです。

2015年3月27日19:35返信について、私も全く同感です。先生の解釈は正解です。

久山町の件については、夏井先生が「近所に巨大モールができたのも要因の1つでは?」とHPでおっしゃっています。そして中にコストコが入っている事までしっかり指摘されている。

米国のコストコやウォルマートよりも日本のほうが「なぜか」売上が取れるアイテムがあります。

ずばり「麦関係の加工食品」です。

巨大ボックス入りシリアルとかゴミ袋サイズのでっかい袋に入ったロールパンがありますよね?あれが日本では飛ぶように売れている。

私らの業界では、黒船巨大小売業が襲来した際、にくの売上を根こそぎもっていかれると騒ぎました、要らぬ心配でした。黒船は、キロ88円で豚肉ブロックを年中売ってますが、日本では見向きもされない。でも彼らは助かりますよね。チルド不要で検疫無しで輸入できる物が売れ筋なんてウハウハですよ。

あちらのマネージャーと話すと「やはり日本は特殊だ」と必ず言いますね。

「タンクコーラとか冷凍食品が好きなのが低所得者というのは20年前。今はCBOTの良いお客さんがロワーミドルだろうね」と言う一方で「日本だと、ダンナ様がキャノンとかメガバンクにお勤めの人が、なんでああいうものを買うの?」と聞かれた事があります(きっちり属性まで取っているのはさすが)。

私もつい最近まで「そのデータ本当?」と思っていたのですが、かるぴんちょ先生の同業者で手打ちパスタの粉をコストコで買っている人がいそうです。

久山町のモールの店舗を眺めていると、コストコで巨大袋入りの糖類をまとめ買いして、タリーズでシロップいっぱいのかき氷みたいなドリンクを飲んで、ポテチ食いながら映画見るんだろうな、と思ってしまいます。んでもって移動はもちろん車。

糖尿病にならないほうがおかしいですよね、これでは。

3人の女子がいました。早死する順に並べてください。

A「私、酒飲み!1人飲みでもフルボトルでしょ」
B「私、たばこ止められない!メンソール1日1箱」
C「私、パン大好き女子!ハード系が特に好き」

という調査をネットでやってみたいですね。

でも、ネタばらしで「科学としてはAが一番マシ」なんて結果をオープンにしたら、総叩きされるんだろうなぁ。


>糖質ハイの快感

2種類の快感が味わえるのがアルコールやタバコとの違いだと思うんですよ。

ぐっと血糖値が上がったときの快感と、その反動でインシュリンが出てぐっと血糖値が下がったときの快感。

メロンパン1個で「やるぞ~!」という気分になれて、そのすぐ後に「おなかいっぱいになって気分が落ち着いた~(でも眠くもなる)」という気分になれる。しかも舌も満足。アルコールやタバコと違って体に悪い事をした罪悪感も残りませんしね。

んでもって、それを繰りかえすうちに「耐糖能がついた」という専門家のお墨付きがもらえるおまけ付き。ついでにそのうち空腹時血糖値が上昇するという隠れたおまけ付き。

ミスドみたいにドーナッツ+砂糖無しのコーヒーなら、血糖値下降時の底山が深くなるだろうから、ますます快感アップ。

上昇時のカーブが一番きつく取れるのは何でしょうね?経験上、砂糖かチョコレートがたくさん入った菓子パン(メロンパン・ドーナッツ)が最強かな。逆にバターを使いまくったクロワッサンはあまり興奮しない。あとは安いまんじゅうとか。

という訳で、こういう危険行為につながる物はドラッグなので課税するとなれば最高なんだけどなぁ。20年単位で見ると社会保障費が2割は減るかもしんない。

>砂糖たっぷりカフェオレをドーナツと同時にがーっといった方が、山の尖りも谷の深みもきつくないですか? 

むふふそこもちゃんと考えてあります。コーヒーに手をつけずドーナツ食って、10分ぐらいしてから砂糖なしコーヒーを飲むんです。コーヒー効果で、ドーナツ単体よりも血糖値が急カーブで下がります。立ち上がる気力がなくなるくらい。んで店を出る際トレー返却を忘れる。

カフェオレ+砂糖は牛乳のせいでしょうか、尖りピークのy値は高くなるのですが、カーブを微分するとややなめらかで時間がかかる。特に尖る際、ひとやま来て次にもうひとやまみたいな感じになりました。んで「フー食った」という感じで帰路につく。

などというロクでもない話で終わるのはあんましなので、尖りと底を急にしない組合わせは、ミートパイと紅茶だと思います。何層にもなってるやつは概して多少はマシかと。中に具が入っているとカーブがやや緩やかになるようです。

あ、ワタシへのコメントはテキトーに不要ですから。元ネタがバカ話ばっかりですし。かるぴんちょ先生のように社会的使命のある方は有効な事にお時間を使われるべきです。

で、ややマジメな話ですが、食後の「あ~くつろぐ感」とは低血糖状態の事なのかも。やる気がしなくなりますでしょ?ランチが2時間とれる国なら、そこから平常値にゆっくり回復してお仕事となるんだけど、日本だとそうはいかないから昼食は血糖値のカーブを起こさないスタイルが一番実務的なのかもしれません。ややトホホなんですけど。

知合いの開業医の先生で「午前中は12:30まで診療・午後は15:00スタート」という先生がいらっしゃいますが、がっつり昼飯を食いつつ午後、山のように来るお客さんを観るには30分で弁当食って(イモ天とか)90分ぐらいゆっくりしないと眠くて仕事にならないんだそうです。これはこれでウラヤマシイ。

>そういう先生方はみなさんジャヌビアを服用

ドンピシャリです。近所の老人大先生の名言集。

「いーか、病院づとめだった頃はな、
 流しそうめんの早食いの如く飯を食ったものだ」

「その昔はな、コウセン柔道というのがあってだな
 しゃけ1ぴきでコメが何合食えるか競ったものだ」

んでもって息子サンもこの手の食習慣を受継いで
いるようで、あさ6時ぐらいに歩いておられるのを
よく見かけます。

だったらデニーズでメキシカンピラフを食うのを
やめればいいのに。

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