世界で最も長寿の国のひとつである日本の寿命を延ばしたのは肉食です。
日本は世界一の長寿国のひとつです。
長寿を支えている要因の一つは高度に発達した医療と、それを国民皆保険で低価格で受けることのできる社会制度です。
これは日本に住んでいると実感がわかないと思いますが、海外に長期滞在したことのある人ならしばしば実感することです。
(大学のころ、先輩医師が、留学してすぐに急性腹症で手術をしたために留学費用としてためていた数百万円を3日で使い果たして、継続をあきらめて帰国した、なんて話聞かされました。)
でも、日本人の寿命を延ばした最大の貢献者は、実は「動物性たんぱく」、主に「肉」なのです。
日本の平均寿命というのは、かつて、世界的に見てひじょうに短かったのです。
明治時代は37歳、大正時代は40歳前後でした、週戦後間もない昭和22年でもようやく、女性53.9歳、男性50.0歳でした。
たった55年前まで、信長の好きな「敦盛」の歌詞がそのままぴったりな平均寿命しか持っていなかったのが日本人だったのです。
ですが、戦後の60年間で寿命は30年も伸びて、現在では女性86.39歳、男性79.64歳です。(2010年調べ)
日本の医療水準が第二次大戦後にどんどん高くなり、現在は世界最高水準にあること、皆保険制度が戦後に成立したこと、それらは確かに平均寿命を高くする重要な要因の一つです。
でも、それだけで30年伸びたとは考えにくいです。
というのも、アメリカ、フランス、オランダなどの欧米諸国の平均寿命は1950年の時点ですでに70歳前後にあり、そこから60年間の医療の進歩で10年ほどしか伸びていません。
以前の記事でも書きましたが、1980年代に農林省、厚生省は日本人の栄養摂取バランスがようやく欧米諸国に追いついたと判定しました。
(これ自体は糖質60%がいいのだという勘違いを含んでいたのですが)
日本人が日常的に牛肉、豚肉や鶏肉などから動物性の脂肪とタンパク質を摂取するようになりました。
大正時代の一日3gの動物性たんぱく摂取から1980年には39gへと激増しています。
つまり、毎日一定量の動物性たんぱくを摂取するのは「人間本来の食生活」に合致したものであり、そのおかげで健康で長生きできるようになったと考えられるのです。
ところが、ここで、1980年前後に、世界中が日本食に対して「勘違い」してしまいます。
動物性たんぱく質の摂取量が増えて健康で長寿になった日本人はその時点でもまだ「先祖古来の主食である米」を主食とする生活を続けていました。
それをみた肉食中心の欧米諸国が、「日本人の食生活が炭水化物中心にあることが長寿の秘訣なのではないか?」という判断をしてしまいます。
有名なものは1977年のマクガバンレポート、それに端を発して1984年のNCEPのコレステロール制限につながるまで、世界中の栄養学は間違った道を転げ落ちていきます。
そしてそれを盲信的にありがたがって信用したのが日本です。
「日本で肥満や糖尿病が増えたのは欧米型の食生活がいけないのだ、肉の摂取量を減らしてお米中心の日本古来のライフスタイルに戻らねば!」
なんて唱えられ始めたわけです。
平均寿命の経緯をよく見れば、それがとんでもない勘違いであること、よくわかります。
先祖古来のお米中心で肉食を避ける食生活がもたらす平均寿命は40歳(大正時代)だったり37才(明治時代)だったりするんです。
軽んじていた栄養学をもう一度見直して、何が良くて何が悪いのか、われわれ医者はいい加減、きちんと認識すべき時に来ています。
糖質制限ダイエット ブログランキングへ
今回の記事内容はこの本の106~111ページを参考にいたしました。
一生太らない体をつくる 噛むだけダイエット
時間をかけて読み直してみると、やっぱりいいです、この本。
噛めば噛むほど味が出ます(笑)。
スポンサードリンク 2012年10月 4日 11:36 スポンサードリンク
はじめまして、いつも大変興味深く拝見しております。
私もつい最近まで肉食が悪であると思い込んでいました。
そしてまた、お米は主食、このお米をより美味しく食べるためにおかずがあるとも思い込んでおりました。
そんな私が糖質制限について知ったのは今年の7月です。
6月に受けた定期健康診断で中性脂肪が172で高脂血症と診断されました。
身長175で体重88㌔と確かに肥満体でしたし、血圧も自宅で測っても135前後、85前後と際どい状態でした。
このままではいけないなと思い始めた時に、たまたま糖質制限ダイエットの存在を知り、実践してみることにしました。
空腹時血糖値は92と正常値でしたが、糖質制限を始めた時点でのHbA1cを知っておこうと検査に行き、5.4(国際基準)と正常値でした。
その後3ヶ月で、体重は12㌔減、血圧も110,70未満と正常値になり、中性脂肪は62と激減し、大変喜んでいます。
糖質制限が高血圧にも有効だというコメントをあまり目にすることがなかったのですが、先生のブログに高血圧についてのコメントがあったので、やはりそうだったのか得心したところです。
ところが、3ヶ月ぶりにHbA1cを検査したところ、何故か0.3ポイント悪化していたんです。
体重も減り、血圧も下がり、中性脂肪の値も改善されたのですから、当然糖質制限のおかげのはずです。
ですから、当然4%台から5%前半の数値となると期待していたのですが、かえって上昇する…
解せないなぁというのが今の気持ちです。
先生はこのような話を聞いたことがありますか?
糖尿病学会のガイドラインでは正常値の範囲内ですが、メタボ検診(?)では要注意の数値となるようで、看護師に糖質を控えるように注意されました。
私はその時3ヶ月全く米、麺類を食べてないことは内緒にして、黙って「気をつけます」と言って帰ってきましたが。
コメントいただければ幸いです。
ゆうさん
3か月で12kg減、血圧正常化、中性脂肪も激減。
糖質制限の見本みたいな変化ですね!
素晴らしいです、おめでとうございます。
正常値の範囲内でのHbA1cの増減はあまり気にしないでいいですよ。
糖質制限していても、その人その人の「糖新生」の能力次第でHbA1cの正常範囲内での増減は起こり得ます。
糖質制限に体が完全対応するのには半年から一年かかると思います。
3か月という期間で考えるのではなくて1年ぐらい見てみてください。
HbA1cも上がり下がりしながら緩やかに下がっていくと思います。
どうしても気になるようであれば自己血糖測定してみてください。
HbA1cが高くなる一か月ほど前は朝はけっこう高めかもしれません。
そうなれば「このころは糖新生能力が高め」だったのだと気付くことができると思いますし。
こんばんは。
早速ご返答いただき、ありがとうございます。
私も素人ながら糖新生の問題かと考えていましたので、先生にアドバイスいただき、ホッといたしました。ありがとうございます。
今後も糖質制限を続けて、より健康になりたいと思います。
先生のブログはとても分かり易く、とても勉強になります。
今後も素晴らしいブログを楽しみにしております。
ゆうさん
ありがとうございます。
でも、いろんな意見がありますので、私の妄想に惑わされないように(笑)、どうぞご自身でもこれまで通りに考えて、自己責任でご判断ください。
なにはともあれ、低糖質食に一年スパンで取り組んでみてください。
わたしもできる限り長く取り組んでみます。
かなり時々ですが、のぞかせてもらっております。
私の家庭は「ベジ~」だったのですが、長年の継続で体力の衰えが激しく、嫁と相談して命からがら徐々に「糖質制限」に変更しました。
健康について調べているとき、見つけた他サイト「20代の大腸がん闘病記」の「大腸がんの食事療法」のところにも平均寿命や久山町に関する記事があります。
こういうのを読むと、わかっている人はわかっているんだなぁ、と思います。
一般には植物性(穀物)は健康、みたいなイメージが多くて困りますよね。(嫁もなかなかこの呪縛から離れられなかった)
栄養成分も不足しないようにして、今はだいぶ健康状態は良くなりました。
糖質制限はなかなか一般には理解されにくいように思いますが、少しずつ考え方が広がってほしいですよね。(それとともに現代社会の矛盾も大量に噴出するのが怖くもありますが)
先ほどのコメントですが、紹介したサイトは久山町について触れていません。勘違いでした、ごめんなさい。
>こんにちは さん
コメントありがとうございます。
> 一般には植物性(穀物)は健康、みたいなイメージが多くて困りますよね。
・・・そうなんですよね、科学的根拠はほとんどなかったりするのですが、それをやって(自分は)すこぶる健康だという人が教祖様になって、という感じの食事方法が多くて。
野菜しか食べなくても健康な人もいると思いますが、逆につらい人もいると思います。
いろいろやってみて、自分の体に一番合う方法を選んでいけたらいいですね。
現代人の初期設定は肉食中心だと思いますけどね。(現在、徐々に徐々に糖質摂取をメインにできるように人類が変化しているところだと思います。あと数万年で変わるかもしれませんね。)
Carpincho先生、はじめまして。
この7月から本格的に糖質制限食を始めました(その頃から先生のブログを拝見しております)。
当方、50歳男性です。糖尿病患者ではなく、人生も折り返し点を過ぎましたので(もしかしたら明日死ぬかもしれませんが・笑)、体質改善に努めようと思っております。
さて、「動物性タンパク質が日本人の寿命を延ばした」という記載には興味を持ちました。
とすると、同じタンパク質を補給するのも、豆腐や納豆といったものよりも牛・豚・鶏等のお肉を食べていった方が栄養的にはいいということになりましょうか(アミノ酸源として)? 肉食が盛んになる以前にも、豆腐や納豆は日常的に食べていたはずですよね?
ただ、納豆などは発酵食品としてアミノ酸以外の栄養分補給には良さそうです。
>ひっとべさん
コメントありがとうございます。
動物性脂肪も大事だと思いますし、おっしゃるようにアミノ酸比率も違います。
大豆製品を食べていたとしても、たくさんではなかったはずです。
戦前の日本人は「いかにして少ないおかずでコメをたくさん食べるか?」ということに執念を燃やしていたはずで、肉であろうと大豆であろうと、戦後の摂取量に比べればそもそも少なかったはずです。
また、普通に大豆製品を食べていて肉を食べて得られるだけの脂肪やアミノ酸を摂取しようとすればけっこうな量を食べなきゃ、ってことになります。
何丁もの高野豆腐に菜種油どばどばかけて食べる、とかやらないと無理だったでしょうからね。
ちなみにこの記事は、けっして大豆製品の価値を否定するつもりのものでありません。
お肉を食べると早死にします、とか、血が汚れます、とかいう方々へ向けた部分はありますが。
Carpincho先生
ご説明ありがとうございます。了解しました。
ちょっと考えたのですが、魚介類も昔から日本人は食していたのですが、不足していた面があるのでしょうね。
栄養面がよくわかりませんが、畜肉と比較して絶対量の問題もあったのかもしれませんね。
なお、先生と同じように大豆製品(また魚介類)の価値を否定するわけでは私もありません。
(糖質を除いて)バランスのいい、おいしく楽しい食生活を心がけます。
先生、ありがとうございました。
>ひっ飛べさん
そうですね、農家の例で言うと、雑穀と玄米、野辺の野草、みそ、少量の魚の干物というのが野良仕事の合間のお昼ごはんだったようで、今と違って冷蔵庫がなくて、魚介類の保存が難しい時代には海辺の漁師町ででもない限り、魚介類を毎日十分に食べることも難しかったのではないかと思います。
第二次大戦後に肉食が増えた理由の一つには、冷蔵庫の普及が非常に大きかったとも言えますね。
ありがたい時代ですから、おっしゃるように楽しく、でもよく考えていろんな食材を楽しみたいです。
お米や小麦粉も、糖質にして10~20g程度食べるのであれば全然問題ないものだと私は思っています。(血糖が上がりやすいかどうかの個人差はありますので、各自で落としどころを探さなくてはなりませんが)
先生、ありがとうございます。
先生も、たまにはラーメンを食されるとのこと。
私も、郷里、鹿児島帰省の際にはラーメン屋のハシゴです(年に1回ですが)。
東京ではあまりうまいとはあまり思えないので、がまんできます(反感を買うコメントですみません・詫)。
鹿児島で学会等ありましたら、ご紹介します(笑)。
鹿児島ラーメン!\(^o^)/
そのときはよろしくです