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アメリカの肥満率を押し上げたNIHの国家的プログラムNCEP


1984年1月にLipid Research Clinics Coronary Primary Prevention Trialという大規模な臨床調査の結果報告がなされました。

長期間の追跡調査で、血清コレステロール値を下げることで冠状動脈系の心臓疾患(狭心症や心筋梗塞)の発症率が下がるというものです。

高コレステロール状態は冠状動脈の心血管疾患の発生率を下げるだけでなく、様々な点で健康的にメリットがある、しかもそれは食事と薬で下げることができるというのですね。

⇒ The Lipid Research Clinics Coronary Primary Prevention Trial ResultsI. Reduction in Incidence of Coronary Heart Disease JAMA. 1984;251(3):351-364.


この時に臨床研究に出現した薬がスタチン(statin)類です。
(これについてはまた別記事で書きます。)

それまで、血清コレステロール値を安全に下げることのできる薬は存在しなかったところに、この薬が出現したのは革命的なことでした。

これを使ってコレステロール値の高い、でも病気を発症していない「未病」の人を治療しましょうというアイデアが提唱されたのです。


そして、その1984年までの調査結果で得られたコンセンサスを下に、アメリカ国民の血清コレステロール値を下げようという運動が開始されます。

食事療法に関しては、「コレステロールは油脂の仲間なのだから、これを下げるためには脂質摂取を下げれば良い。特にコレステロールと飽和脂肪酸の摂取を下げるのが良かろう。」

そういう発想のもとに「Low Fat」政策が発動し、実際に強力に推し進めたのが、アメリカでNIHが主導して作成された National Cholesterol Education Program (NCEP)です。

For more information on the NCEP, contact:
National Cholesterol Education Program
NHLBI Health Information Network
P.O. Box 30105
Bethesda, Maryland 20824-0105
(301) 592-8573 phone
(301) 592-8563 fax
http://www.nhlbi.nih.gov


さて、このプログラムでは

「コレステロールこそ悪である、そしてそれを含む脂質食品も(たぶん)悪である」

という概念のもとに、アメリカ国民への食教育がなされます。


非常に不幸なことに、このころに、日本型食生活が健康に一番良い、という勘違いした考え方が世界中に広まっていました。

実際、1980年代前半であれば、日本人の動脈硬化疾患や、糖尿病を含めた生活習慣病の発症率は世界的に非常に低いものでした。

ですから、「糖質60%の伝統的な日本型食事が理想的なものである」という誤解は世界中に蔓延してしまっていたのです。


事実、摂取カロリーを下げて、おいしく食事を楽しむ上では日本型食生活は優れていますからね。

現在でも、「摂取カロリー」だけに注目して、「摂取した栄養分が血糖値にどう作用するか」を無視すれば和食は非常に優れたものに見えます。


1985年に発動したこの食教育プログラム「NCEP」に従って、日本食に近い、「糖質を主体として脂質を減らした推奨食」がアメリカで普及します。

さらに、「Low Fat」なら太らないんだな、と、脂肪を抜いて、その分、砂糖やでんぷんで調味した食べ物を山ほど食べる人もたくさんいました。

(1980年代後半から1990年代にアメリカにしばらく滞在したことのある人なら、スーパーマーケットに山のように「Low Fat」食材が積み上げられていて、それを肥満した人たちが貪り食っていたのを覚えていると思います。)


身体に良かれと思って進めたNCEPのおかげで、アメリカ国民の肥満度は激増したのです!

1985年からのアメリカの肥満率の劇的な増加は前の記事で詳しくお見せしました。

NIHが国民の健康のためにと意図したのとはまったく逆の結果が出ているのです。



にもかかわらず、このプログラムは未だ生き続けています。

⇒ National Cholesterol Education Program
http://www.nhlbi.nih.gov/about/ncep/ncep_pd.htm

NCEPで発行している栄養指導のPDFでは相変わらず、脂肪摂取を下げて炭水化物摂取を上げることを推奨しています。

炭水化物の摂取過剰が問題ではないかというエビデンスが増えてきた最近でも、

「炭水化物の摂取を増やしたのが悪いのではなくて、炭水化物の種類が悪かったのだ、精製された小麦粉や白米や砂糖を避けて、全粒粉や玄米や黒砂糖を使えば良い。」

などとのたまっておられます。・・・(-_-;)


そろそろ過ちを認めて、コレステロールを下げるためには適切な資質を十分に摂取し、糖質摂取を制限するべきである、というプログラムに変更した方がいいんじゃないかな。。。

血液の中に過剰な脂質が存在する状態は身体に悪いのかもしれませんが、摂取する食物に入っている脂質量がそのまま血清中の脂質量を反映しているわけではないのです。

むしろ、それを増やしているのは、「消費エネルギーに比べて過剰に摂取する糖質」なのです。


04-TIMES campagne.png

これは1984年のTIMES誌の表紙です、コレステロールが、脂質が悪者であるとするNIHによる音頭取りに従って、ベーコンだけでなく卵も悪者であると決め付けられたその時に、それにしたがって組まれた特集号の表紙です。

心筋梗塞などを引き起こす原因はコレステロール高値である。

だから脂質摂取を減らしてその代わりに(日本人のように)糖質摂取を上げなさい、そうすることで摂取カロリー数が減ってコレステロール摂取も減るからヘルシー(なはず)ですよと。


しかし皮肉なことに、このプログラムが発動してからアメリカ国民に何が起こったのかは、前の記事に挙げられた画像から明らかですよね、肥満率が激増して、糖尿病患者も激増しています。

アメリカだけではない、ヨーロッパでも、日本でも、最近では中国やインドでも。これと同じことが世界中で発生しています。


卵とベーコンが泣いているTIMESの表紙の画像、実は、NCEPの大いなる勘違いに向けられたコレステロールたちの悲しみを表していたのかもしれません。



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2012年8月20日 20:30

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コメント(9)

おじゃまします。

アメリカの肥満分布図、わかりやすいですね。
1980年代は、大統領がレーガン・父ブッシュで保守化がすすみ、格差が拡大し貧困層が増えていった時代ですね。

(1980年代後半から1990年代にアメリカにしばらく滞在したことのある人なら、スーパーマーケットに山のように「Low Fat」食材が積み上げられていて、それを肥満した人たちが貪り食っていたのを覚えていると思います。)

 コーラのボトルが巨大化したのはいつでしたかね?

「Low Fat」政策の犠牲になったのは、低所得層ではないでしょうか・・・

アメリカ食生活指針 2010年

◯1日のナトリウム摂取量について、基本的には2.3グラム とするが、51歳以上の男女全員、アフリカ系アメリカ人、 高血圧や糖尿病、腎臓疾患を患っている人は1.5グラムと する。
◯食事の半分は果物や野菜にすること。そして全粒穀類を多 く食べること。
◯脂肪分の少ない肉、鶏肉、豆類、ナッツ類、種子類を食べ ること。
◯無脂肪、あるいは1%の低脂肪牛乳を使うこと。
◯砂糖の添加食品、精製穀物類、固形脂肪を避けること。
◯缶詰のスープや冷凍食品は塩分を比較する。そして塩分量 が一番少ないものを選ぶ。
◯コレステロールの摂取量は1日300ミリグラム未満にするこ と。
◯トランス脂肪酸の摂取は避けること。
◯サプリメントなどの栄養補助食品を食べる代わりに、栄養 価の高い食品から栄養分を摂取すること。
◯アルコールはほどほどに。女性は1日1杯以下、男性は2杯 以下。
◯砂糖入りのソーダ水や飲料水の代わりに、水を飲むこと。


日本の「米などの穀類をしっかりとること」よりはいいですかね。


OECD国別糖尿病患者 グラフ
http://uskeizai.com/article/269506699.html

1位メキシコ  2位アメリカ
日本は、10年後に患者数が1.5位になりそうですね。
中国などはこれから増えそう。イギリスが意外と少ない。
 あれこれ考えながら・・・。

 カルビンチョ先生
午前3時は、少し遅いですね。
無理しないで下さいね。
 私は、夜11時には寝ています。

訂正です。
「日本は、10年後に患者数が1.5位になりそうですね。」
          (正)1.5倍位に

各国の食事・労働等を考えると、疾病の予想が少し出来そう
ですね。

知人が教えてくれた面白い記事の紹介です。

危険なリンクではなく、大新聞社のリンクなので踏んでもまず安全だと思います。

http://www.washingtonpost.com/national/in-rural-tennessee-a-new-way-to-help-hungry-children-a-bus-turned-bread-truck/2013/07/06/c93c5eec-e292-11e2-aef3-339619eab080_story.html

英語なのでさっぱり分かりませんが、恐ろしい、戦慄を覚える写真ですね、これって。

びんぼうな人たちが、自腹でジャンクフードにはまるのはまだ分かる。しかし、「善意で」もらえる食事も実は糖質だらけだった……。

きっとやってる人たちは、良い事をしているつもりだと思うんです。けど、キロ500円でまともな肉のブロックがいくらでも買えるアメリカですらこうなんです……。

パック入りのレーションを配給するより、冷蔵車を横付けして、スネ肉のブロックを丸ごと置いていったほうがよっぽどいいのに……。

欧米はどの部位の肉でも美味しく食べる技術が発達していた国だったんですけどねぇ……。

この手の救援物資(おおもとは軍隊の携行食)のせいで、えらい目にあった第一号は、ネイティブの人たちです。

彼らは、居留地に居る限り、アメリカ政府から、賠償の一環として、賞味期限切れのレーションが支給されていたそうです。そして狩猟できる環境なのに、3食すべてレーションを食べるようになり、いくつく先は糖尿病の大発生。

ただ、この写真の人たちはみたところ、みんな白人で、アメリカですから、貧困層でも住居は割合広く、トレーラーハウスですらオーブンがついてたりします。

本格的なキッチンがあって、調理する文化を持っていた人たちなのに、食べやすい物があるとそちらに手が伸びてしまう。もっとも仕事が不規則で、調理する時間がとれないという事情もあると思うのですが。

「保存が利いて、いつでも食べられる食品は危ない。なぜなら、人間はすぐに食べられる物を常食化しやすい習性があるからだ」というのは言い過ぎでしょうか?

などと言いつつ、480円の赤ワインとあじフライを深夜に食べちゃう私が居るわけですが。

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そういうところでいちいち、しかし、例外はあります、とか言って全ての人に配慮した注釈を付けると、読む側もメッセージがなんなのかわからなくなります。

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