影浦式食事療法の補足2: 実はマイルドな糖質制限食だった
私、うっかりしていました。
影浦式実践例で、毎日230~270gの糖質負荷をかけるとして紹介されていましたが、これ、「炊き上がりのご飯の重さ」でした。
通常、炊き上がりのご飯には水分がたくさん含まれていますので、100gあたりの糖質料は37.1gです。
ということは、影浦式食事法で「ご飯」からかける糖質負荷量は、毎日85.3gから100.2gです。
あの文献を書いた楠木繁男先生の記述によると、「厳重食」という名の糖質制限食の糖質含有量は30g程度です。
影浦式では、ご飯以外は厳重食を食べさせていたとのことですから、影浦式食事療法の糖質負荷量は、一日辺り、115gから130gです。
つまり糖質として摂取するカロリーは一日当たり460kcalから520kcalということです。
仮に、治療を受けている糖尿病患者さんが1200kcalから1600kcalのカロリー制限を受けていたとしても、糖質摂取比率は28.75%~43.3%です。
これって、みごとに糖質制限食ではありませんか。
江部先生が糖尿病患者に推薦される糖質摂取比率12~20%のスーパー糖質制限食に比べればまだまだ多いものの、日本糖尿病学会の推薦する55~60%よりも確実に低い数値です。
去年の6月に門脇先生が読売新聞のインタビューに答えておっしゃった「40%を切るような厳しい糖質制限」と判断してよいでしょう。
ということは、影浦式で入院治療を受けて、毎日、ご飯から85.3gから100.2gの糖質負荷をかけるように指導された患者さん達。
退院後も厳密におかずは糖質制限食ということを守っていたとしたら、マイルドな糖質制限食をずっと続けていたはずです。
糖質負荷55~60%の食事を指導されてい、るかわいそうな現代の糖尿病患者さんに比べれば、糖尿病の進行はずっと緩やかだったでしょうね、少し安心しました。
ちなみに、当時の「厳重食」というのが本当に一日当たりの糖質が本当に30gにコントロールされていたとすれば、糖質から得るカロリーは120kcalですから、1200~1600kcalのカロリー制限を受けていたとしても、摂取糖質比率は7.5~10.0%ですから、こちらは釜池先生や荒木先生の指導に近いスーパー糖質制限ですね。
まあ、でも、たきあがりのご飯の量をそのまま「摂取糖質量」として「一日尿糖量」と比較していた時代の話ですから、怪しいもんです。
・・・ここでさらに、あることに気付かれましたか?
しつこく読んでくださった方々はお気づきと思いますが、影浦式のあのグラフ、変ですよね、数値の概念が。
摂取糖質量の正しい値は炊き上がりのご飯の量に0.371を乗じる必要があるので、摂取糖質量のグラフはもっと低い直線になります。
具体的には、糖質負荷量を以下のように上げるとした部分、
30g、60g、90g、120g、150g、180g、210g、240g、270g、300g、330g、360g、390g
正確にはこうなります。
11g、22g、33g、44g、56g、67g、78g、89g、100g、111g、122g、133g、144g
それに対しての尿糖は
0g、0g、4g、9g、14g、18g、24g、30g、42g、60g、92g、138g、225g
ですから、収支差は
11g、22g、29g、35g、42g、49g、54g、59g、58g、51g、30g、-5g、-81g
つまり、360g以上のお米を負荷した時点ですでに、尿糖の方が摂取糖質量を上回ってくるわけです。
影浦式のミソである「収支差」というののピークも240gのあたりにあり、影浦式の考え方に従ったとしても、糖質量は炊き上がりごはんにして一日210gまで、糖質量にして78gにするべき、となるわけですね。
受け入れたとしても、ご飯の摂取量はもう一段低いところに置くべきでした。
そうすればどうなったでしょうか、ご飯にして170~210gの摂取が推奨されて、63~89gの糖質負荷になります。
おかずの糖質が30gならば、93~119g(372kcal~476kcal)の糖質制限となり、1200kcalから1600kcalのカロリー制限指導を受けていたとしても、23,25%~39.67%の糖質摂取となります。
すばらしい!
完璧です、「40%を切るような厳しい糖質制限」の範疇に入っております(笑)。
スポンサードリンク 2013年1月11日 19:04 スポンサードリンク
『たきあがりのご飯の量をそのまま「摂取糖質量」として「一日尿糖量」と比較していた』
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先生に記事で指摘されるまで、気がつきませんでした。
ご飯は、毎食軽く茶碗に一杯(半分と少し)という感じですね。
ゆるい糖質制限ですね。
『糖質270g』というのをそのとおり読んで、多いなあと首を傾げていました・・。
これで影浦式の意味が分かりました。
ということは、私が時間があるときに、国会図書館デジタルライブラリーで過去の文献を少しずつ読んでいるのですが、こういうことに気をつけなければいけないということですね。
昔の文献はなかなか読みにくいですし、断定的に書いてあるわりには根拠がよく分からないものも多いです。何度も読んでいると、あっという間に時が経ちます。
またいつか、カルピンチョ先生の解説が出ることを楽しみにしています。すごい労力ですよね。
今日は、いい天気です。あとで散歩に行こうっと。
昨夜も同業者の集まりで糖質制限の話を少しだけしたら
簡単に一蹴されました(笑)。
短期のダイエットとしての有効性はあっても
長期続けることは危険だという見解を持つ人が
医療関係者はもとより、ましてや糖尿病専門医の間でも
まだ多数を占めているようです。
やはり・・・
この実験の仮説は、最初から・・
糖質代謝能が、糖質をある程度摂らないと落ちていくのではないか?
という、日本人の主食にとって都合のよいように
立てられているような気がします。
実は・・・
治療効果の実態は
(マイルドな)糖質制限食だった・・・
なるほど、ですね。
ところで、この記事、
ヒットしやすいようになっているのかな?
衝撃的な記事として、検索ヒット率が高まってほしいですね。
わんわんさん
こちらへひさしぶりのコメントありがとうございます。
そうなんですね、なにやら現代の概念とはいろいろとずれがあるのです。
しつこく読み直してみると、影浦式が実は現代の糖尿病学会理事長が真っ向から批判しているレベルの糖質制限食だったということで、ますますもって「糖尿病患者には55~60%糖質摂取させなければならないのだ」とする、現在の日本糖尿病学会の考え方の根本がわかりません。
他にも精神科医師Aさんに紹介された昔の文献をちらちら読んでいるのですが、さらにいろいろネタがあって。
きちんと歴史をひも解いてみることは大事ですね。
ぼちぼちアップします。
toさん
そうなんですよね、前提として、米を食べることが重要視されています。
それを肯定するためにいろんな理屈を後付で開発したようにしか見えません。
「初めに糖質60%摂取ありき、しかも米食って摂れ」って状態です。
日本の食糧供給の中心を米に据える以上、そういう方向性が歓迎されるわけです。
ましてや、古事記の時代から重要視されていた穀物、米は国民を飢えさせ貯めないための最高の農産物として国策的に大事に育ててきたわけです。
神棚に稲穂を上げるのも心の拠り所だからですし。
日本人が神格化してそれを前提にしてしまうのもまあ、仕方がないのかな。
言い換えると、糖質60%を主張される方々の考え方は科学ではなくて宗教ですね、理屈がおかしいのにそれを客観的に見ようとさえしない。
「崇米教」とでも申しましょうか(笑)。
少しずつ、関連する記事を追加していきます。
ふと思い出したのですが、かつて白砂糖が贅沢品であった時代、昭和三十~四十年ごろ書かれた料理本には調理に砂糖を使う記述はなかったそうです。また煮物のあくもとらなかったとか。さらに減塩減脂ブームのせいもあって料理に砂糖や糖分のたっぷり入ったソース、ケチャップ、ポン酢の類を入れる傾向はますます高まっており、その結果が糖尿病増加じゃないでしょうか。
糖尿病専門医の方々で自分たちの理論の間違いや違和感に気づいておられる方は多いと思います。ただ糖質制限が普及しその結果糖尿病が激減すれば自分たちの存在意義が失われると思っているのでしょう。こうなってくるとむしろうつ病や認知症、歯周病、アレルギー疾患予防のために糖質制限しましょうと呼びかけたほうが良いかも。あと寝起きも良くなりますから引きこもり防止にもいいですね。財務省も将来の税収UP&医療費削減のために協力しませんかね。
ご無沙汰しています。
今日、フェイスブックで下記の内容を拾ってきました。
詳細はよく分からないのですが、
またか。という感じがしたので、ご報告。
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減量法や糖尿病治療として、炭水化物の摂取量を減らすために用いられている糖質制限食。
第47回日本成人病(生活習慣病)学会で、長期的な効用は認められず、死亡リスクが有意に増加するとのメタアナリシスの結果が発表されました。
第47回日本成人病(生活習慣病)学会より
糖質制限食の長期的効用は認められず
メタ解析の結果、総死亡リスク増加の懸念も
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201301/528564.html
SLEEPさん
確かに、私が小さかった頃、1960年代前半ぐらいまでは贈答品として「上白糖の箱詰め」とか、「果物の缶詰」というのはポピュラーでした。
カステラやお菓子の詰め合わせに変わったのが1960年代後半からですかね。
(といっても貧乏な九州の田舎の感覚ですから、都会では1950年代の感覚だったかもしれませんが。)
日本人は塩分取りすぎだと騒がれだしたのが1970年代、コレステロールが悪い、ということが大々的に言われだしたのは1980年代前半ですかね。
時代は「糖尿病のリスク」にとってはどんどん間違った方向に転げ落ちていったのですね。
SLEEPさんがおっしゃるように、絡め手から攻める方向、特にアレルギー疾患の対策として、シャンプーレス、石鹸レスと絡めて勧めていけば効果的なのではないかと思われます。
良い方向に転がりもどるように、ささやかながら、努力したいです。
ミリエさん
情報ありがとうございます、読んできました、一部抜粋します。
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メタアナリシスの対象として選択された論文は全9件で、対象者は27万2216人(女性66%、追跡期間5~26年)。総死亡数は1万5981人だった。
総カロリーに占める糖質の割合をスコア化し(low-carbohydrate score;LCスコア)、糖質の割合が低い(30~40%)群と高い(60~70%)群を比較した結果、総死亡リスクは低糖質群で31%、有意に増加した(調整リスク比の95%信頼区間は1.07-1.59、図1)。「低糖質・高蛋白質」群と「高糖質・低蛋白質」群を比較した結果(LC/HPスコア)でも、前者で総死亡リスクは22%、有意に増加(同1.02-1.46)。糖質制限食による長期的な効用は認めなかった。
心血管疾患死については低糖質群で10%増加したが、有意差は認めなかった(同0.98-1.24)。また、心血管疾患発症リスクはLCスコアでの検討では有意差はなく、LC/HPスコアで検討していた1文献では有意差を認めていた。
結果について能登氏は、「糖質制限食をし好する人は、脂肪や動物性蛋白質の摂取量が高値となる傾向にあり、総死亡の増加への関与が想定される」と話した。ただし、「今回の検討では糖質の特徴や蛋白質源などの影響は加味されていない。これらの解析を含む長期介入研究が必要だ」とした。
今回検討した論文は、いずれも一般人や医療者を対象にした試験であり、糖尿病患者への影響は不明だ。糖尿病患者の中には医師に告げずに糖質制限食を実践し、血糖コントロールに影響を及ぼしているケースもある。能登氏は「今回の検討結果から糖質制限食に対して賛成・反対は言い切れない。しかし、薬物治療を行っている患者では低血糖リスクも鑑み、バランスよく食事を摂取することの大切さを伝える必要があるのではないか」と話している。
***
30~40%というマイルドな糖質制限実践者と60~70%という日本糖尿病学会推薦の糖質摂取量をさらに超える方々との比較ですね。
30~40%というマイルドな糖質制限では食後高血糖の影響が十分に抑え込めているわけではないので、スーパー糖質制限実践者に当てはめるわけには行かない、という江部先生の意見を思い出します。
くり返しこのようなメタアナリシスが出ますが、対象としている論文に例のBMJのアレが含まれているのではないかと考えると、眉に唾つけて聞いておいたほうが良い感じはしますね。
能登氏は「今回の検討結果から糖質制限食に対して賛成・反対は言い切れない。しかし、薬物治療を行っている患者では低血糖リスクも鑑み、バランスよく食事を摂取することの大切さを伝える必要があるのではないか」と話している。
記事の見出しは
「第47回日本成人病(生活習慣病)学会より
糖質制限食の長期的効用は認められず。メタ解析の結果、総死亡リスク増加の懸念も」
見出しと、記事の内容で落差を感じますね。
いろいろな記事を読んで、(よくない意味で)慣れてきたのですが、能登氏が言いたいのは
『糖質制限には疑問な点がある。薬物療法を行っている患者は、低血糖にならないように糖質を摂りましょう』ということですかね。
考え方が逆ですね。血糖をコントロールするために糖質を制限する。食事療法により十分に血糖値が下がるようなら、薬物をやめる。
能登氏は、「糖質をいっぱい食べて、血糖降下剤も飲みましょう」と言っているようにしか思えません。
カルピンチョ先生の言うように、眉唾ですね。
わんわんさん
おっしゃるとおりですね、見出しと中身のトーンが違います。
あとは、何故、メタ解析の対象をその9編の論文に絞ったのかの理由を書いて欲しかったです。
MTProに掲載された資料から見て、少なくとも1つはFungの論文のようで、どういう代物かは2011年6月に江部先生が書かれている記事で確認できます。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1716.html
能登氏が主張している内容と同じような内容を主張している論文です。
低糖質食としている食事内容の糖質摂取量はカロリー費にして30~40%のものを指し示しており、山川式や影浦式と同程度のマイルドな糖質制限量ですね。
さらに指摘しますと、Lagiou 2007 という論文が採用されていますが、これは正しく昨年の6月にBMJに掲載されたあの悪名高い論文のトップネームの方ですし、Trichopoulou 2006というのもその共著者の方です。
つまり、能登氏が集めてきてメタ解析したという論文の少なくとも半数は「糖質制限が危険だ」と主張されている研究者の論文なわけです。
笑っちゃいます。