Top >> 糖尿病と糖質制限 >>  インスリン初期導入療法は画期的な新しい概念などではない

インスリン初期導入療法は画期的な新しい概念などではない


先日から、20世紀前半の日本の糖尿病食事療法について、具体的には、影浦式食事療法山川式食事療法について紹介してきました。

「糖質負荷が糖代謝能を改善する」

とする主張に基づく食事療法が影浦式や山川式食事療法の理論ですが、その実態は以下のとおりでした。

「短期間のスーパー糖質制限療法とそれに引き続くマイルドな糖質制限療法」(影浦式)

「厳しいカロリー制限とマイルドな糖質制限」(山川式)

さらに、どちらも食事療法でコントロールできない症例に関しては速やかにインスリン治療を開始しています。


現代の糖尿病治療では、

1.食事療法+運動療法

2.経口血糖降下剤の内服

3.インスリン治療の開始

というスリーステップを踏むことが当然視されています。

糖尿病の患者さんは3番目の段階に入ったら最終段階だ、何とかしてここに入らないように頑張ろう!と、インスリン治療を必死で避けています。


ところが、最近になって、少し概念が変わりつつあります。

2番目のプロセスをすっとばして3番目のインスリン治療に直接入ることで、むしろ良い結果が得られるという概念ですね。

インスリン初期導入」と称して画期的な治療方法であるかのように言い始めています。


具体的には、2012年8月30日のNHKのクローズアップ現代で、日本糖尿病学会の伊藤理事が画期的な概念であるとしてインスリン初期導入について紹介されていました。

すい臓を休ませてインスリン分泌能を回復させるという観点から推奨できると。

これは世界糖尿病学会でも取り上げられて新しい概念であるかのようにディスカッションされています。


ですが、影浦先生や山川先生がしのぎを削っていた1930年代から1950年代にかけては当たり前の治療方法だったというわけで、焼き直しです。

古くから知られている、実践例から効果が確実だと知られている治療方法に後付けで理屈をつけただけの話です。

影浦式食事療法 症例報告編


もちろん、良い治療方法だと思えるので、SU剤ですい臓機能をボロボロにするまで引っ張ることなく、インスリンをとっとと使っていただくのは歓迎です。

でも、歴史の繰り返しって時間の無駄ですよね、糖質制限(厳重食)だって昔からやっていたことなわけです。

無駄な歴史の繰り返しに振り回されることなく、理論的な裏付けを持って効率良く医療が施行されることを望みたいものです。


スポンサードリンク
2013年1月18日 14:33

スポンサードリンク

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://xn--oqqx32i2ck.com/mtos/mt-tb.cgi/246

コメントする

(お気軽にコメントして下さい☆丁寧にお答えします。コメントは承認されるまでは表示れませんが今しばらくお待ち下さい。)

糖尿病と糖質制限

関連エントリー

糖質が文明を育み、維持してきたのにどうして今敵視されるのか
カロリー制限と糖質制限は糖尿病の異なる食事療法 混ぜるな危険!
毎日糖質を摂取しないと脳の発育が悪くなるほど人間は弱い生き物なのか?
健康な胎盤も胎児も 成人より高いケトン体値の中で育まれるという事実
妊娠糖尿病の妊婦さんの食事でも糖質は必要不可欠な栄養素ですと?
ベイスンによる食後高血糖低下の効果が弱くなってきたんですが?
夏休みに始めてみたらどうでしょう?
2型糖尿病を指摘された人を待ち受けているトラップ
1型糖尿病の人が糖質制限する意義
1型糖尿病患者さんの糖質制限の成功率は?
マイルドな糖質制限とプチ糖質制限食、スタンダード糖質制限食
糖尿病の食事療法 脂質食療法と飢餓療法
糖質制限食で逆に具合が悪くなった糖尿病の患者さんたち
食品交換表の誕生 1963年に始まった現代の糖尿病食
世界と日本における糖尿病食事療法の変遷
インスリン初期導入療法は画期的な新しい概念などではない
山川式食事療法 これもまたマイルドな糖質制限食なのです。
影浦式食事療法の補足2: 実はマイルドな糖質制限食だった
影浦式食事法の補足1: 糖質制限と糖代謝能
糖質摂取しないと糖質代謝能が落ちるという理屈 症例報告編 
糖質摂取しないと糖質代謝能が落ちるという理屈 理論編
正月のお雑煮 都道府県によって糖質量がすっごく違う(^_^;)
インスリンを糖尿病初期から使うことの是非
内臓脂肪とインスリン抵抗性と慢性炎症と熱ショックタンパク質に関して その1
1型糖尿病の患者さんがタンパク質を食べても血糖値が上昇する理由
クローズアップ現代で放送された糖質制限について
クローズアップ現代で紹介された糖質制限で悪影響が出たケースは栄養失調
糖質制限の長期的効果を調べる研究にお金を出してくれそうなところは?
糖質制限の長期的影響を追跡するにはどうしたらいいのか?
インスリンがなかった時代の糖尿病食はどのようなものか?


プロフィール

carpincho3

50代の男性医師です。低糖質ダイエットを実践してその効果に驚き、このサイトを作りました。

連絡先はこちら↓
carpincho3blanco3@gmail.com 
(全角の@を半角の@に変えてください。)

私のブログをまったく読まずに一方的に質問を投げかけるのはおやめください。 いただく質問の答えは、ブログ内の記事、あるいはコメントでのやり取りに記載されている場合が多いと思います。 量が多くて読むの大変だから、ということであれば、知恵袋などの質問サイトをご利用なさってはいかがでしょうか。 また、コメントへの返信やメールへの返信は「無償の善意の第三者」としてやり取りさせていただいているつもりです。 自分の家臣に問いただす殿様みたいな非常識な投げかけは、ときに無視しますので、あしからずです。 コメントやメールには医学的に間違いないようにお答えしたいと思いますし、急に忙しくなって対応できないこともありますので時間がかかる場合があります、ご了承ください。


サイト内検索

当サイト内の記事を検索が出来ます。

記事総数: 295
コメント総数: 3376
スポンサードリンク
最近のコメント
糖質制限関連おすすめ書籍
ウェブページ
リンク
読者の皆様へ

糖質制限がうまくいかない人は明らかに一定数存在しますし、その方々の存在を否定するつもりなど毛頭ありません。
人はそれぞれ遺伝子が違い、環境が違い、そのアプローチに挑むときの年齢や健康状態も違うのですから、同じことをしても同じ反応が出ないのは当然のことだと思います。 私も、そのことについては頻繁に言及しています。

しかし一方で、記事一つ一つは、異なる人へ向けての異なるメッセージです。
すなわち、個別記事というものは、どういう人々に何を伝えるか、ターゲットを明快にして書くものだと私は考えています。
そういうところでいちいち、しかし、例外はあります、とか言って全ての人に配慮した注釈を付けると、読む側もメッセージがなんなのかわからなくなります。

したがって、読まれた方の立場次第では、その記事では自分の存在を無視されているように感じる、配慮が足りないと感じられる記載内容があり得ます。
その場合、その記事はほかの人に向けられた記事であると、スルーしていただけたらありがたいです。

よろしくお願いします。

ぽっちゃりも糖質も菊芋におまかせ ↑宣伝ヽ(´▽`)/
スポンサードリンク