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内臓脂肪とインスリン抵抗性と慢性炎症と熱ショックタンパク質に関して その1


糖質制限実践中の60歳の男性からメールで質問をいただきましたので、答えさせていただきます。

質問内容は、

「ところで質問させて頂きたいのですが、内臓脂肪がインスリン阻害物質を出しているのでインスリンの効きが悪いと聞きました。
 また熱ショックタンパクがインスリン阻害物質を阻止するような説も目にしました。
 個別にお答え頂かなくて結構ですので、内臓脂肪とインスリン、熱ショックタンパク、血糖値についてブログに書いて頂けませんでしょうか。」

というものでした。


・・・・・・・・・(^_^;)

実はこれ、正確にお答えしようとすると、かなり長くなります。

ヒートショックプロテインと炎症との関係は様々な論文が報告されていて、いまだコンセンサスを得られていないと思います。

(精製に問題があったころの話も混ざってきますし)


本来、それらの解釈は論文を原著で読む人々にゆだねられるべきですが、、、

私個人で勝手に解釈して断定的に短い総説としてお答えします。

・・・あとから嘘つき呼ばわりしないでね(^_^;)。




まず、内臓脂肪とインスリンに関して説明してみましょう。

(以前の記事にもすでに書いてありますので再掲みたいなものです)

⇒ 糖尿病と自己免疫性疾患

⇒ 糖質制限ダイエットで高血圧が治せる理由


内臓脂肪は、標準体重にあって、かつ体脂肪率が標準範囲にある人では適正な働きをしています。

適正な働きというのは、じつは様々なサイトカインを分泌して、これが身体全体をコントロールしているのです。

アディポサイトカインという言葉で検索してみてください、いろんな説明を読むことができます。


基本的な仕組みは、食欲や体調のコントロールだと考えてください。

身体に備わる内臓脂肪が適度な量になるように食欲や行動、あるいは免疫力に影響を与えます。

レプチン、アディポネクチンなどの、どちらかといえば食欲を抑えるなど、「抑制的」に働く物質を分泌したり、それらの発現をコントロールしたりします。


ところが、糖質摂取過剰などで内臓脂肪が増えてくると、内臓脂肪はこれらの役割を果たさなくなってきます。

(脂肪をため込みすぎて身動きできない、とイメージしてもらえばよいです。)


こうなった時に、脂肪細胞は「抑制的」方向に働く物質を分泌しなくなります。

一方で内臓脂肪細胞は、マクロファージと言って、体内の不要な物を食べて処理する白血球の一種を呼び寄せるケモカインというものを出して、彼らを自分の組織内に集めます。

このマクロファージがきっかけとなって、内臓脂肪の場は「炎症初期状態」へと突き進み始めます。

(不要な老廃物をマクロファージが食べてくれることが期待されての呼び寄せですが、呼び寄せられたら暴れ始めるのがマクロファージですからね。)


肥満した内臓脂肪粗時期でマクロファージが活性化されてさらにさまざまな炎症系のケモカインを出します。

すると、そこには攻撃的なTリンパ球なども集まり、TNF-αやIL-6などの炎症の時に発現するサイトカインをばんばか出し始める。

こうして、内臓脂肪がコントロールする免疫系は肥満の人においては「慢性炎症状態」に陥ってしまいます。


メカニズムの詳細は省きますが、この状態になると、インスリンがインスリン受容体に結合しても信号伝達をうまく伝えにくくなるのです。

これが「内臓脂肪肥満が生み出すインスリン抵抗性の増大」です。


つまり、肥満した内臓脂肪は「インスリンを阻害する物質を出す」のではなくて、「インスリンの効きを悪くする物質を出す」というのが現在の解釈です。

そのように、インスリンの効きが悪くなることを「インスリン抵抗性が上がる」と言います。

インスリン抵抗性が上がればインスリンの効果が不十分になりますから、食後の血糖を速やかに下げることができなくなり、糖尿病につながっていくというわけです。


逆に、糖質制限して痩せると糖尿病が改善される理由の一つがこれです。

糖質制限すると内臓脂肪が一気に落ちますから、慢性炎症によって惹起されていたインスリン抵抗性がガクンと落ちるからです。

(もちろん、食後高血糖を回避できることがHbA1cの数値を下げるし、高血糖で血管が痛めつけられて起こる合併症を防ぐというのも重要なポイントです。)



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そして次に、もうひとつの質問の熱ショックタンパクですが、これは別の記事群にしますね。

⇒ ヒートショックプロテインと免疫

⇒ 熱ショックタンパクを発現誘導するには




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2012年10月12日 11:18

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コメント(2)

質問の答えをブログで解説して下さってありがとうございます。
今まで調べた中で一番分かりやすい解説でした。
最近も血管に関する本でマクロファージが血管内にプラークを作る話を読んだばかりですが、知れば知るほど興味ある世界です。
内臓脂肪を減らせば膵臓の機能が回復すると言う単純な話では無いようですが、少しでも内臓脂肪を減らし筋力をつける努力は続けるつもりです。

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