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糖質制限食で逆に具合が悪くなった糖尿病の患者さんたち


1922年のインスリン実用化以前には、糖尿病の治療は徹底した糖質制限でした。

しかし、中には糖質制限したことで具合が悪くなった人達が一定量で含まれていたようです。

今でこそその原因はある程度推測できます。


1.肝機能が衰えていて、糖新生ができないような人

2.糖尿病腎症が進行しているためにタンパク質摂取過剰が腎不全を進めてしまう人

3.脂肪酸代謝などに先天的に異常があり、糖質から栄養を摂取しないと生命維持に問題が起こる人

4.いくつかの理由で糖質依存状態にあり、糖質制限が著しい気分障害などの変調をもたらす人

5.慢性疾患の合併や免疫不全による感染症の再燃で頻繁にシックデイ状態に陥る人


こういう方々は現代であっても糖質制限の対象外です。

1番目と2番目の方々は血液生化学検査技術が発展してきた1940年代以降にはすぐにわかるようになりましたが、1920年頃にはなかなかわかりませんでした。

3番目や4番目の方々は、マイノリティということもあり、21世紀前後になってようやくその存在がクローズアップされてきた方々で、おそらく1990年以前にはなんだか思ったように治療にレスポンスしない例外的な人がいる、としてしか認識されなかったごく少数のpopulationでしょう。


上記の方々は、糖質制限食での治療は困難で、基本的にはマイルドな糖質制限と、血糖値管理による緻密なインスリン投与療法で治療が進められるべきです。

現代でこそ可能ですが、インスリンのなかった時代には対処方法のなかった人たちです。

5番目の方々は原疾患の制御なしに血糖値変化をコントロールするのは至難の業です。

この方々は原疾患の治療を続けつつ、血糖値を厳密にチェックしながらインスリンによる補正を受けるのが望ましいと思われます。


不幸だったのは、こういう、対象とできない人たちがいることで、糖質制限食そのものを否定する考えが出てきたことです。

「糖質制限することがむしろ体に悪いんじゃないか?」

という、疑問が、具体的な科学的根拠なしに投げかけられて、糖質負荷の時代が始まります。


一日尿糖量チェックでしか糖尿病の状態が把握できなかった時代にあって、

「尿糖さえ出なければいい、そこまでの糖質負荷は許すべきだ」

という考え方がまず、当然のように出てきました。

その糖質量を「耐容量」と呼び、そこまでの糖質摂取を許可するようになる、そこまではまあ、良しとしましょう。


ですが、そこからさらにもっと糖質を摂取させてみる、という食事療法トライアルが始まります。

様々な糖質負荷食事療法によって尿糖が出るような食事を食べさせられ始めた患者さんたち。

自らデータを操作してはまり込んだ、勘違いといえる解釈がどんどん出てきます。

新しい学説を出して論文で認められたい医者達、研究者たちの功名心がかなり後押ししていたと考えられます。




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詳しくはこちらの記事をご覧ください。


世界と日本における糖尿病食事療法の変遷

(この記事は上記のリンク先の記事の補足として作成しました。)


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2013年1月23日 21:22

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コメント(6)

先生 こんにちは。いつも勉強させて頂いております。ありがとうございます。
先日、糖質制限をしている人から聞いた話なのですが・・・あるクリニックで、糖質制限治療食やっているとサイトに書いてあったから行ってみたら、その医師本人が糖質制限をやって精神的疾患を発症したから、糖質制限はいいけれど長期間続けるのは危険でお勧めしない と言われてがっかりして帰ってきたそうです。その医師も、記事内の3・4・5あたりに該当したのでは?なんて思いました。精神的疾患になったからって糖質制限食の所為にしないでほしいと思いませんか。

 うーん。残念ですね。
歴史の限界というのでしょうか。

 推測ですが、おそらく、糖質制限をした患者さん達で、当時の食糧事情でカロリー不足になった人たちがいたのでしょう。
「軽微な尿糖」を良しとし、患者の元気を優先したのでしょう。
 また、様々な状態の患者の科学的な分析が出来なかったのですね・・。

*******************

 現代の日本は、糖質制限をするのに食糧事情が整っているように思います。肉・魚・野菜などが手に入りますし、エリスリトールなどの甘味や大豆粉などの代用品もあります。
 21世紀にふさわしい食事療法の確立をと思います。

 政治はなかなか良くなりませんが、せめて科学の分野で、医療の転換・発展を願いたいです。
 糖尿病の合併症を防ぐために、真剣に食事療法に取り組むことを、医療関係者にも患者にも望みたいです。
 カルピンチョ先生。歴史のひも解き、ありがとうございます。

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