Top >> 糖尿病と糖質制限 >>  1型糖尿病の患者さんがタンパク質を食べても血糖値が上昇する理由

1型糖尿病の患者さんがタンパク質を食べても血糖値が上昇する理由


江部先生のブログの記事で、1型糖尿病の人はタンパク質を食べても血糖値が上昇するという話が書いてありました。

⇒ 1型糖尿病とタンパク質、血糖値を上げる?上げない?


これは、自分自身が1型糖尿病であったバーンスタイン医師が、著書「Diabetes Solution」の中で書いていることだそうです。

「1型糖尿病では1gの糖質が約0.94mg血糖値を上昇させる」

との記述があるとのことで、読みたくなったので楽天ブックスで注文しちゃいました。


【送料無料】バーンスタイン医師の糖尿病の解決第3版 [ リチャード・K.バーンスタイン ]



でも、アメリカ糖尿病学会ADAの記述の中では、「食後血糖値に影響を及ぼすのは糖質だけであり、タンパク質や脂質を食べても食後血糖の上昇はない」ということになっています。

この矛盾がどうして生じるのでしょうか?


・・・実は、考えてみれば簡単なことでした。

成人した1型糖尿病の患者さんではインスリン分泌量はゼロです。

インスリンは、糖の取り込みを促進するだけでなく、糖新生を抑制します。


ということは、インスリンレベルがゼロだと、「通常の人での基礎分泌量のインスリンが抑え込んでいる糖新生」が抑え込めなくなっているわけです。

糖新生は亢進している状態になるのです(実際、進行した糖尿病患者さんで糖新生が亢進しているのはよく知られている事実です)。


糖新生亢進状態で、糖新生の原材料になる糖原性アミノ酸を含むタンパク質を食べると、それを材料に肝臓で糖新生が始まって、血糖値が上がるというわけです。

食べ物から糖質が吸収されて上がるのではなくて、食べ物からアミノ酸が吸収されて、糖新生が起こって、という二段階を踏んで、血糖値が上がっていたのです。


実際、上の記事のコメントに1型糖尿病の方がタンパク質を食べた後に血糖値が上昇する事を報告されていますが、その場合は3~4時間後からとのことです。

糖新生が原因だと考えれば、血糖上昇が食べてからしばらく後に起こるということとも符合しますよね。

以上、あくまでも私の推測ですが。


ということで、1型糖尿病の方のように、インスリン分泌が完全になくなってしまうと、糖質制限してもタンパク質と脂質の摂取だけで血糖値の上昇が起こりうるようです。

食後高血糖のコントロールは食事に合わせてインスリン製剤を投与することで可能ですが、基礎分泌量の維持はまた別の方法が必要ですし、適切な制御は難しいです。

(理論的には、持続型血糖測定器と持続型インスリン注入器を装着することで細かな調整は可能になりますね。)



糖質制限ダイエット ブログランキングへ


2型糖尿病であっても、高糖質食を続けて膵臓が疲弊しきってインスリン分泌が完全にゼロになったり、肥満が止められなくてインスリン抵抗性がどんどん上昇すれば、1型糖尿病の患者さんたち同様に、タンパク質を摂取しても血糖値が上昇することが起こりうるでしょう。

糖質制限して膵臓機能を守って行くこと、糖質制限で肥満を解消してインスリン抵抗性を下げること。

これは我々の人生にとって、とても重要なことだと改めて思いました。


スポンサードリンク
2012年9月13日 20:13

スポンサードリンク

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://xn--oqqx32i2ck.com/mtos/mt-tb.cgi/160

コメントする

(お気軽にコメントして下さい☆丁寧にお答えします。コメントは承認されるまでは表示れませんが今しばらくお待ち下さい。)

糖尿病と糖質制限

関連エントリー

カロリー制限と糖質制限は糖尿病の異なる食事療法 混ぜるな危険!
毎日糖質を摂取しないと脳の発育が悪くなるほど人間は弱い生き物なのか?
健康な胎盤も胎児も 成人より高いケトン体値の中で育まれるという事実
妊娠糖尿病の妊婦さんの食事でも糖質は必要不可欠な栄養素ですと?
ベイスンによる食後高血糖低下の効果が弱くなってきたんですが?
夏休みに始めてみたらどうでしょう?
2型糖尿病を指摘された人を待ち受けているトラップ
1型糖尿病の人が糖質制限する意義
1型糖尿病患者さんの糖質制限の成功率は?
マイルドな糖質制限とプチ糖質制限食、スタンダード糖質制限食
糖尿病の食事療法 脂質食療法と飢餓療法
糖質制限食で逆に具合が悪くなった糖尿病の患者さんたち
食品交換表の誕生 1963年に始まった現代の糖尿病食
世界と日本における糖尿病食事療法の変遷
インスリン初期導入療法は画期的な新しい概念などではない
山川式食事療法 これもまたマイルドな糖質制限食なのです。
影浦式食事療法の補足2: 実はマイルドな糖質制限食だった
影浦式食事法の補足1: 糖質制限と糖代謝能
糖質摂取しないと糖質代謝能が落ちるという理屈 症例報告編 
糖質摂取しないと糖質代謝能が落ちるという理屈 理論編
正月のお雑煮 都道府県によって糖質量がすっごく違う(^_^;)
インスリンを糖尿病初期から使うことの是非
内臓脂肪とインスリン抵抗性と慢性炎症と熱ショックタンパク質に関して その1
1型糖尿病の患者さんがタンパク質を食べても血糖値が上昇する理由
クローズアップ現代で放送された糖質制限について
クローズアップ現代で紹介された糖質制限で悪影響が出たケースは栄養失調
糖質制限の長期的効果を調べる研究にお金を出してくれそうなところは?
糖質制限の長期的影響を追跡するにはどうしたらいいのか?
インスリンがなかった時代の糖尿病食はどのようなものか?


プロフィール

carpincho3

50代の男性医師です。低糖質ダイエットを実践してその効果に驚き、このサイトを作りました。

連絡先はこちら↓
carpincho3blanco3@gmail.com 
(全角の@を半角の@に変えてください。)

私のブログをまったく読まずに一方的に質問を投げかけるのはおやめください。 いただく質問の答えは、ブログ内の記事、あるいはコメントでのやり取りに記載されている場合が多いと思います。 量が多くて読むの大変だから、ということであれば、知恵袋などの質問サイトをご利用なさってはいかがでしょうか。 また、コメントへの返信やメールへの返信は「無償の善意の第三者」としてやり取りさせていただいているつもりです。 自分の家臣に問いただす殿様みたいな非常識な投げかけは、ときに無視しますので、あしからずです。 コメントやメールには医学的に間違いないようにお答えしたいと思いますし、急に忙しくなって対応できないこともありますので時間がかかる場合があります、ご了承ください。


サイト内検索

当サイト内の記事を検索が出来ます。

記事総数: 283
コメント総数: 2822
スポンサードリンク
最近のコメント
糖質制限関連おすすめ書籍
ウェブページ
リンク
読者の皆様へ

糖質制限がうまくいかない人は明らかに一定数存在しますし、その方々の存在を否定するつもりなど毛頭ありません。
人はそれぞれ遺伝子が違い、環境が違い、そのアプローチに挑むときの年齢や健康状態も違うのですから、同じことをしても同じ反応が出ないのは当然のことだと思います。 私も、そのことについては頻繁に言及しています。

しかし一方で、記事一つ一つは、異なる人へ向けての異なるメッセージです。
すなわち、個別記事というものは、どういう人々に何を伝えるか、ターゲットを明快にして書くものだと私は考えています。
そういうところでいちいち、しかし、例外はあります、とか言って全ての人に配慮した注釈を付けると、読む側もメッセージがなんなのかわからなくなります。

したがって、読まれた方の立場次第では、その記事では自分の存在を無視されているように感じる、配慮が足りないと感じられる記載内容があり得ます。
その場合、その記事はほかの人に向けられた記事であると、スルーしていただけたらありがたいです。

よろしくお願いします。

ぽっちゃりも糖質も菊芋におまかせ ↑宣伝ヽ(´▽`)/
スポンサードリンク