妊娠糖尿病の妊婦さんの食事でも糖質は必要不可欠な栄養素ですと?
妊娠中の糖尿病と診断される妊婦さんが最近、激増しています。
その主な理由は診断基準が厳しくなったからです(笑)。
ですが、実際に妊娠中に血糖値が高くなりがちの方が多いのは事実です。
そして、妊娠中ということもあり、みなさん大いに悩まれますよね。
その時に頼れる味方がお医者さんと栄養士さん。
ですが、ほとんどの病院やクリニックでは、日本糖尿病学会の推奨する食事指導が書いてあるパンフレットを渡すだけです。
それがどんなものかといえば、
1.糖質を60%ほどきっちり摂取させる。
2.きびしくカロリー制限させる。
3.運動させる。
というもので、いつもの糖尿病の生活指導ですね。
この指導を推進する先生方が特に目の敵にしているのがケトン体です。
「妊娠中のケトン体高値は危険である。」
「だから妊婦さんは毎日たっぷりの炭水化物を食べなきゃダメ、糖質制限なんてもってのほか!」
それが転じて、
「適量なら砂糖を使ったスイーツを食べるのも赤ちゃんのためにもちろんOK!」
こう主張する先生方までいらっしゃいます。
彼らの主張の根拠になっているのが1991年に世界最高の権威をもつ医学雑誌New England Journal of Medicineに掲載されたこの論文です。
Rizzo T, Metzger BE, Burns WJ, Burns KC: Correlations between antepartum maternal metabolism and child intelligence. N Engl J Med 325: 911-16, 1991.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1881416
NEJMが無料で公開しているので以下のリンク先で読めます。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM199109263251303
どんな論文かといえば、
対象は健康な人は全体の15%しか含まない、ほとんどが糖尿病の患者さんの観察結果です。
もともと糖尿病の妊婦さん89人、妊娠糖尿病と診断された妊婦さん99人、糖の問題が指摘されなかった妊婦さん35人。
彼女たちの妊娠第三期の血液を採取し、血糖値、脂質の値などをいろいろ調べておいて、生まれた子供が2歳になった時の知能指数と比較してみたというものです。
すると、「子供の知能指数が低いという傾向と相関があったのが、妊娠中の母親の血液内のケトン体高値であった。」という論文です。
ケトン体高値といっても、数値的にはごくわずかに高いだけの差でした。
糖尿病と診断されて、厳密に血糖管理されているであろう人々での、管理しきれなかったケトン体の高値。
普通に考えれば、その当時の医学で管理しきれなかった結果なのかなと思っちゃいます。
だから、ケトン体が高いと言っても、その背景にはどんな問題が横たわっているのかわからないですよね。。。
さて、この「観察結果は事実」として、解釈がいろいろ独り歩きしています。
この論文が、アンチ糖質制限派の先生たちからはこう解釈されています。
「妊娠中のケトン体が高いと子供の脳の発達が悪くなる。」
⇒「糖質を摂取しない絶食時には脳はケトン体を栄養素として利用することがある。」
⇒「だから妊婦さんには糖質を食べ続けなきゃ危険、糖質摂取を切らしてはだめ、糖質制限もってのほか!」
⇒「低血糖になることのある妊娠糖尿病の妊婦さんこそ、絶対に低血糖を招かないように糖質をきっちり食べさせなきゃダメ!」
・・・ハア(*´Д`)
こういう先生方、毎日糖質をたっぷり食べさせて、
妊娠糖尿病の妊婦さんの高血糖が抑えきれなくなったらどうするのかといえば、
「適量のインスリンを打つことでコントロールできます。」
とくるわけです。
お腹に赤ちゃんがいる人に、ほいほいインスリン製剤を打ちますですか。。。
ともかく妊娠中は糖質を毎日たっぷり食べないとダメだと思い込んでらっしゃいます。
そう思い込まされている女医さんもその指導を受けたことを大喜びで書いてたりして
⇒ リンク貼ったけど・・・自粛して削除しときます、数年前にすごく話題になった本を書いている先生だから営業妨害って怒られそう(笑)
ともかく、自分の頭で考えてよ、って、すごく思うんですよね。
記事は続く ⇒ 胎児や胎盤のケトン体濃度はものすごく高い
私の体験です。
次男を妊娠中、極力体重を増やさないように「従来の高糖質低カロリー食」で頑張っていたにもかかわらず、妊娠8か月の半ばから胎児がぐんぐん大きくなり始め、検査の結果ヘモグロビンa1c6.8もあり、妊娠糖尿病と言われました。
しかし産婦人科医はインスリンどころか「食事に気を付けなさい」としか言わず。
当時は脂質の摂取量を極力減らすぐらいしかできず、これ以上は無理と言うぐらい努力しましたが、胎児の体重はどんどん増えてしまい、帝王切開で産まれた次男は巨大児、RDSで1か月間のNICU入院を余儀なくされてしまいました。
従来の食事制限では、少なくとも妊娠糖尿病を改善できませんでした。
>みさこさん
わたしも全くえらそうなことは言えません。
自分が糖質制限を始める以前には糖尿病学会の指針に従って「高糖質低カロリー食」糖尿病の患者さんに対処していました。
自分自身がメタボ予備軍であったにもかかわらず、その考え方でいましたから、改善しませんでした。
2004年以前にはほとんどの医師は糖尿病に関して大学で講義を受けて、そのまま大学病院で研修していました。
内科以外の科にかかる患者さんが糖尿病の場合、大学病院だとほぼ必ず内科を受診してもらってその指示に従うことになります。
何も考えてません(すみません)。
大学病院を離れてからも、その時に内科の医師に出された指示に従って対処します。
新しい知見は学会誌や薬屋さんの持ってくる資料などを見て、ということになりますが、まめに見ている人は珍しいでしょう。
自分の頭でメカニズムを考えて日夜勉強・確認している、という人は少ないでしょうね。
忙しすぎるのもありますけどね。
産婦人科だと平均睡眠4~5時間くらい(しかも細切れを全部足して)って人が多いですし。
と、なんとなく弁解してみる(;^ω^)。
いずれにせよ、もう「糖質制限を知らなかった」で済まされる時代ではなくなってきたと思います。
宗田先生のようなところが増えてきてくれるといいなと。