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カロリー制限と糖質制限は糖尿病の異なる食事療法 混ぜるな危険!




糖尿病の食事療法には大きく二つあります。


1.日本糖尿病学会が唯一認めている

糖質を55~60%摂取しての厳密なカロリー制限

(適度な運動は必須)


2.日本以外の先進国のほとんどが1.と共に認めている

糖質摂取を毎食20~40g程度かそれ以下にする糖質制限

(カロリーは標準量+αまでOK、運動は必須ではない)


この二つです。

(このブログでは、2番目の糖質制限という食事方法について説明しています。)


注意していただきたいのは、

この二つは発想が全く異なる食事療法であり、両立しない

ということです。




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1番目の、日本糖尿病学会が推奨するカロリー制限は、一日三回、ご飯やパンや麺やイモなどの糖質(でんぷんや砂糖など)を摂取することが前提であるということです。

糖質を食べると血糖値が急上昇するので、糖尿病の人にとっては危険です。

ですから、摂取量を減らして、基礎代謝量よりちょっと多いぐらいにして、食後の血糖が上がるのを少なくしようという取り組みです。

運動を組み合わせるのは、摂取カロリー制限だけでは急上昇した食後高血糖を下げきれないので、運動することで筋肉に血糖を吸収させようということです。


血糖値が上がる食べ物である炭水化物をどうしても食べたい人向け、

いわばマッチポンプの食事方法です。

血糖の乱高下ときびしいカロリー制限と食後の運動のために、いつもお腹がすいてます。

求道者の修行みたいな生活態度ですね。



2番目の、アメリカ糖尿病学会などが認める糖質制限は、血糖値を上げる原因である糖質(炭水化物)を極力食べないようにしようという食事療法です。

三大栄養素などといわれて、炭水化物は毎日ある程度、というか、脂肪やたんぱく質よりもずっとたくさん食べないといけないように言われています。

ですが、糖新生と言って、我々の体はたんぱく質や脂肪からブドウ糖を作り出すことができるので、糖質をまったく食べなくても問題なく生きていけるのです。


それなら、食後高血糖を避けるために糖質(でんぷんや砂糖など)の摂取を控えましょう。

そういうコンセプトのもとに、主なカロリーは脂肪とタンパク質で摂取する食事療法です。

血糖が上がらない程度の糖質しか摂取しないので、食後の急激な血糖上昇は原則としては起こりません。


マッチポンプではなくて最初から危険な食後高血糖にチャレンジしない方法です。

こちらは厳しいカロリー制限は不要ですし、食後高血糖が起こらないので、運動も不要です。

(個人差はありますが、標準カロリー(その人の理想のBMI×25~35)の20%増し程度まで食べても、ほぼ問題ありません。健康のためには、運動はしないよりはした方がずっといいです。)

お腹がすくことはありません、自然体で過ごせます。




・・・困ったことに

この二つの方法、自分で勝手に組み合わせる人が、ときどきいらっしゃいます。


日本糖尿病学会の教える厳しいカロリー制限の食事内容から、さらに糖質を抜く方。

それは自殺行為です、絶対にやめてください。


日本糖尿病学会の教えに従うなら、守り続けてください、そこからさらに糖質制限しちゃダメです。

そこから糖質抜いたら、基礎代謝量以下のカロリーしか摂取しないことになります。

遠からず栄養失調でぶっ倒れます。



もしも糖質制限に切り替えるなら、日本糖尿病学会の指導する食事療法から、以下の二つの点で離れてください。


1.カロリー制限をやめて標準カロリーを摂取する(普通の体格の人が普通に食べてる量を食べる)。

2.血糖を上げる糖質が何に含まれているかを理解して、それらの食材を避けた上で、上に書いた標準カロリーを摂取する(当然、脂肪とタンパク質が主体になります)。


この二つは必ず守ってください。

カロリー制限している食事内容から糖質をさらに抜く

という行為だけはやめてくださいね。



このブログを書き始めてしばらくしてから、そういう人がいるというのをNHKのクローズアップ現代で見てここでも警鐘を鳴らしたのですが、そういう方々が後を絶ちません。

糖尿病だと診断された直後の方が多いですね。

とてもまじめな方が多いです。

しばしばメールや伏せコメントで相談をいただき、その方の勘違いであることを説明し、理解されたところで愕然とされます。

なんで糖尿病専門医のいる病院に行ったのにそのことが説明されなかったのだと私に食って掛かる人もいます。

でも、糖質制限のことを日本糖尿病学会は否定してますから、私に言われても・・・。



大事なことなのでもう一度書いておきます。


日本糖尿病学会の教える厳しいカロリー制限の食事内容から、さらに糖質を抜く。

それは自殺行為です、絶対にやめてください。


糖尿病の食事療法は、

求道者のごとく、厳しいカロリー制限に徹するか

自然体でできることの多い糖質制限に鞍替えするか

どちらか一つを選んでくださいね。

2015年5月27日 16:57

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コメント(13)

 スーグラを服用しています。 もう一年になります。体重減、A1C、腎症や肝臓も含めて改善が進んでます。
 スーグラを服用する前は。いわゆるゆるい糖質制限食をしていましたが(カーボンで1日150g)、耐え切れず今は200g以上食べています。当初は200gで設定していましたが、現在は250gです。
 糖質制限を主張され医師の方々は、SGLT2阻害薬は糖質制限をすれば不要という論で、この薬を飲んでいる人の食事療法については詳細を語りません。
 過去基礎インスリンやインクレチンの処方もありカーボカウントについては理解しております。
 その上で具体的に日々どのくらいのカーボ量を摂取するのがよいのかそういった議論を聞きたいと思います。
 普段の運動量は基礎代謝も含めておおよそ平均2200kal位です。(腕に付ける心拍計&活動量計の数値)BMIは25位で筋肉質の+0歳位の男の場合どのようにお考えになりますか?
 私としてはスーグラを飲むことを前提として、最適なカーボ量を摂取したいと考えています。

 ごていねいなアドバイスをいただきありがとうございます。
自宅にて蓄尿はむずかしいと思いますので、この薬の服用を前提として、カーボ量を指導していただける教育入院を探してみたいと思います。
 私の個人的な感覚として、糖質の摂取量が糖質制限食実践中ととSGLT2阻害薬服用中の場合と、仮に同量だったとしても違いはあるのではないかと感じています。
 何がどう違うのか?そこが知りたいところです。
 また、この薬で血圧降下、初期腎症の改善等の可能性(糖尿病リソースガイド)等を読むと、私自身に効果があったと感じています。
 登山等筋力を使う有酸素運動が私の人生の最大の喜びです。糖尿病治療、食事療法、トレーニング計画を日々考え、実践いくため、今後もこのブログを参考にさせていただきます。
 ありがとうございました。

久方ぶりです。
私は糖尿病では無くて、
単なるダイエッターなので、
糖尿病の方にはお耳触りな事を書いてしまうかもしれません。

カロリー制限の糖尿病食から糖質を抜くのは危険。
そのとおりだと思います。

ただ、私は、単なるダイエッターなので、
ダイエットという観点からだけ見ると、
そのときに応じて、
1)糖質制限可能なときは糖質制限する。
2)糖質制限不可能なとき(おつきあいなど)は、
カロリー制限をする。 

そういう併用はありかな? と感じています。

とは言うものの。
糖質制限でタンパク質おかずを
満足するまで食べる癖がついていると、
糖質を摂ったときについつい同じ調子で食べて、
カロリーオーバーになりがちなので、
そこの処はかなり気を遣う必要があります。
また、糖質をとってしまうと、
2時間位して猛烈にお腹が空くので、
そこでぐぐぐぐっと我慢するのも辛いところです。
総じてカロリー制限の場合が気を遣うし、
お腹も常に空いていますね..............

日本糖尿病学会(山口)が終わりましたね。
順天堂の先生が、低糖質ダイエットと、低カロリーダイエットを比較研究していらっしゃいました。クロスオーバースタディーにしたらもっと面白かったと思うのですが。
対象患者さんは、決して糖尿病と診断されたばかりではなく、以前も食事指導をされて、守れなくて、内服やインスリン投与もされていても状況があまり良くない、という方だったようで、よく考えて選んだな、と思います。
低糖質ダイエット(かなりゆるゆるの低糖質。一日120g)の方で、6か月の期間内に、明らかな副作用がなかった、これが一番の収穫ですかね。当然、値の改善や、体重の減少は、低糖質の方がよく。ただし、実際の食事内容では、やや、低糖質低カロリーになっている(記述ベースだから、バイアスはかかってるが)様子もあり、この記事の意図、 混ぜるな危険、 は大事ですね。栄養失調は、糖尿病以上に怖い病気です、ハイ。

はじめまして、5月末頃感電事故にあい救急搬送された病院での血液検査で糖尿病が見つかりました。自覚症状も無く、退職後、検診も受けていなかったのですが、四年前に股関節人工関節置換術の手術を受けた時の血液検査は正常値だったのに、今回かなりの高血糖で、救急搬送された病院での治療も、電撃よりも高血糖の方がDr.方が必死⁈熱心⁈で、二週間の入院期間中も、一般的な糖尿病学会式の食事指導などを学ばせられ短期救急病院だから!と、退院させられました。
転院先の病院が満床でしたので、ネットで調べた低糖質食の献立を実践し、退院時のインスリン注射を打ちつつ、血糖値測定も行って居ました。入院時とさほど変わらない血糖値でしたので、低糖質の献立は、良かったのだろう、と、思って居ますが、退院から二週間経ち、転院先に入院となりました
が、今の病院も糖尿病学会式の食事指導で、血糖値が乱高下して居ます。
内科、糖尿病担当医がインスリンの量を半分にし、本日からメトグルコ250mg1日三回 ジャヌピア50mgと成りました。
インスリン量も投薬も変わるので、退院したら、又、低糖質な献立に戻って大丈夫でしょうか?
とても不安で、ご相談致します

だいぶ以前の記事のコメントで申し訳ありません。
最近バースタイン博士の「糖尿病の解決」を再読して色々考えることがあります。
 2型糖尿病で20年以上経過してます。
 フリースタイルリブレで血糖値の経過をこの4ヶ月ほど観察して、食後血糖値の低下をどうすべきか?200以下の目標値をなかなか達成できません。
 インスリン、SGLT2阻害薬、インクレチンを処方されています。
 新版「糖尿病の解決」にある第1相インスリン分泌の記述を読みました。SGLT阻害薬は血糖値を下げるが、第1相インスリン分泌が不足しているので、食後直後の糖質による血糖上昇は防げないのかなと思いました。
 そこで緩ユルの糖質制限(1食50g)から、きっちり糖質制限(20g目標)を1週間ほど試しています。今のところ食後血糖値が大幅に下がったこと、想定していませんでしたが低血糖がないのです。70代に血糖値が入ると以前なら、トントンと下がって捕食していたのですが、捕食をしなくても糖新生だと思うのですが、上昇に転じます。
 糖質制限の有効性を実感しているところです。

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糖尿病と糖質制限

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そういうところでいちいち、しかし、例外はあります、とか言って全ての人に配慮した注釈を付けると、読む側もメッセージがなんなのかわからなくなります。

したがって、読まれた方の立場次第では、その記事では自分の存在を無視されているように感じる、配慮が足りないと感じられる記載内容があり得ます。
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